保険業界はBtoBtoCへと生まれ変われるか?――第1回:業界を揺るがす5つの大変化


Mother Using Computer Holding BabySAPジャパンの宮田です。今、日本の保険業界は激変のど真ん中にあります。その激変の背景には、少子高齢化やグローバル化、技術革新など、さまざまな時代の変化があります。そうしたなか、それぞれの企業が今後どの方向に舵を取るかが明暗を分けると言ってもいいでしょう。

実は変化の兆しは昨日今日現れたものではなく、長きにわたりじわじわとやってきたものです。そのことに気づかないまま軌道修正をしなければ、突然消滅する企業が出現する可能性すら否定できない、と我々は感じています。

本ブログでは、2回シリーズで日本の保険業界に対し、競争優位確保に向けた取り組みの提案を行っていきたいと思います。まずは業界激変の動向について俯瞰し、その上で何をすべきかお伝えしていく予定です。1回目の今回は「業界を揺るがす5つの大変化」というタイトルでお届けします。

保険業界を取り巻く5つの変化

最初に、日本の保険業界を取り巻く環境の変化について整理してみましょう。若干の重複はあるでしょうが、大きく以下のような5つのトレンドで見てみると、特徴を捉えやすいと思います。

  1. 人口減少に伴う契約高の減少
    周知のように、日本は少子高齢化と、それに伴う人口減少が進みつつあります。これにより、保険の契約高が減少しています。とりわけ従来、生命保険会社が注力していた若年世代の人口が減少しているため、新規契約が少なくなっています。
  2. 2025年問題
    一方で高齢者は増加していますが、2025年には独居老人が300万人を超えるという「2025年問題」が取り沙汰されています。介護を含め高齢者向けの保険商品の充実が、今後の課題です。
  3. 「死亡保障」から「生存保障」へ
    従来の世帯主を対象とした保険は、世帯主が死亡した時に残された家族が経済的に困ることなく生活できることを狙いとした「死亡保障」でした。しかしながら昨今では、上記のような人口動態を背景に、医療・介護・ガン保険に年金などを組み合わせた「生存保障」型の商品へと軸足が移っています。
  4. グローバル化
    人口減少による市場規模の縮小を補うために、従来の保険会社は海外進出を試みています。欧米では中堅クラスの保険会社を買収することにより規模の維持を、アジアなどの新興市場では現地企業との合弁会社を設立して市場確保を進めています。一方、日本国内への外資企業の参入も増加しています。アクサ生命、メットライフアリコ、アフラックなどが健闘し、日本の保険市場に新風を吹き込んでいます。
  5. 新業態の台頭(銀行窓販、ネット専業、保険ショップなど)
    2001年に金融ビッグバンの一環として一部の保険商品の銀行窓口販売(銀行窓販)が開始され、2007年にはあらゆる種類の保険が銀行窓販可能となりました。全保険に占める販売件数は必ずしも大きいものではありませんが、2006年に107万件、2007年に91万件だったものが、2008年には112万件、2009年に140万件、2010年には163万件と、着実に伸びています(出所:金融庁「銀行等による保険募集に関するモニタリング結果」)。また、ネット専業の保険販売業者も出現し、とくに若い人々を中心に支持され、成長しています。成長の主たる理由は、保険料の安さにありますが、若い人の場合、対面販売やしつこい営業を疎ましく思っていたり、必要な商品を自ら選びたいという人が多かったりすることもあり、ネットでの保険販売が若者のニーズにマッチしているのでしょう。そして、その両者を包含した「保険ショップ」も成長しています。店舗とネットを活用することで、幅広い顧客層に支持されています。
    ここで重要なポイントは、対面を好まない若い世代を中心に非対面のネット販売が広がる一方で、対面にこだわる窓販や店舗系でも新規参入組の健闘が目立っていることです。一説では、対面販売はコストがかかり非効率という声もありましたが、実際には保険加入などに際して顧客からのコンサルティングニーズは高く、重要チャネルとして再認識されています。

このようなトレンドの中、従来と変わらない営業を行っている保険会社は間違いなく苦境に立たされています。一方、顧客の需要にマッチした商品や売り方を行う事業者においては、取り扱い件数や売上が伸びています。つまり、最終顧客(受益者)である保険加入者と、それを販売するチャネル(現場)がマッチすれば、まだまだ成長の余地があるということです。保険業界を取り巻く環境は、一見ピンチのようにも見えますが、実はチャンスも多いことがおわかりいただけたかと思います。

30年前からなかなか変われない保険業界

グローバル化や新規参入などの動きはありますが、業界内で圧倒的なシェアを誇るのは、今のところは従来の保険会社群です。そして、これらの保険会社群は30年前とほとんど変わっていない、と言っても過言ではありません。変わっていない点として、以下の2つがあります。

  1. 変わらない「保険料」
    一説によると欧米に比べ2倍程度の保険料に高止まりしているということです。なぜ高いのでしょうか。それは、保険会社の営業や維持管理に関する経費を負担する付加保険料が高いからです。これはひとえに、非効率な営業体制と非効率な事務管理に起因します。
  2. 変わらない「営業職員」
    これは、営業職員の定着率の低さを意味しています。大手保険会社ではいまだに大量採用を実施していますが、3年もするとそのほとんどが退職してしまうという状況を繰り返しているのです。つまり教育コストが大幅に無駄になっているということです。

変わるための視点

これまで見てきましたように、市場は明らかに変化しています。しかしながら、旧来の保険会社は、保険業界および保険システムの滞りない安定稼働を第一義に、抜本的改革を避けてきました。結果、市場の変化に対応できないばかりか、効率性まで犠牲にしているのです。

では、変革の方向はいかなるものでしょうか。新規参入企業の動向を見ればわかるように、それにはまず、「最終顧客」の視点に立つことが重要です。最終顧客が求める保険商品とは何か、どのような提供を望んでいるのかを知る必要があります。そして、最終顧客と向き合う「現場」では、どのように対応すべきなのかについて、考えなければなりません。従来の発想は商品ありきで、さながら保険会社が代理店に卸すだけの「BtoB」的発想でしたが、これからは代理店の先にいる受益者、すなわち最終顧客の視点に立った「BtoBtoC」的発想で対処することが必要になるのです。次回は、このような問題意識に基づき、「顧客志向・現場志向になるために」というテーマでお伝えしたいと思います。

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