調達・購買の効率化に 求められる視点とは
作成者:SAP編集部 投稿日:2014年12月11日
10月7日に開催された「SAP All Cloud Connect 業務部門がリードする経営改革フォーラム」。購買調達部門向けトラックのパネルディスカッションでは、間接商材の通販企業と企業の調達担当者、両者をつなぐソフトウェア企業が調達・購買の効率化について語り合いました。
仕事を「個別最適」から「全体最適」へ改めるパンチアウト
モデレーターを務めた日本サプライマネジメント協会の上原修氏は、「経営者のなかには『パンチアウトの費用対効果が高くないのでは?』と考える人もいます。新システム導入について、社内ユーザーの説得も必要です。これらを効果的に行なうにはどうすればいいでしょうか」と疑問を投げかけます。
宇部興産株式会社の藤本秀夫氏は、「べんりねっと」導入による自社の購買・調達効率化の取り組みを例に、「商材が納入された後に購買請求するという旧来の商習慣は不正の温床になりかねず、内部統制やコンプライアンスの観点から問題があります。パンチアウトすることで、自分さえよければいいという『個別最適』の仕事を、企業単位で向上させる『全体最適』へ改めることができました」と付言。社内ユーザーを説得するにあたっては「先に値段を決めて注文することで保守予算が下がる点を強調するとともに、これまでの商習慣が最適だとの思い込みやシステム導入に伴う煩わしさの解消を丹念に行なうことが重要」だと強調しました。
サプライヤーの「おもてなし」に潜む見えざるコスト
とはいえ、長年の取引形態を変えることは企業にとって簡単なことではありません。気心知れた取引業者を本当に変える必要があるのでしょうか。株式会社MonotaROの柴垣香平氏は、サプライヤーの「おもてなし」に潜む見えざるコストを指摘します。「現在、お付き合いのある業者のなかには、10時に注文すれば12時に届けてくれるところもあるでしょう。在庫がある限られた商品ならば可能ですが、仮に注文品が1年間に1回出るかどうかの低頻度商品だとしたらどうでしょうか。もしも在庫がなければ競合相手から横もちして渡すなど、そこには見えないコストが加算されるはず」と、便利さの裏側にあるデメリットを挙げます。調達・購買の効率化には、バイヤー自身が戦略的に選択できる購買の選択肢が欠かせないのです。
宇部興産は効率化の過程でMonotaROを導入しました。藤本氏は、「MonotaROは一物一価を基本に、納期は固定です。既存顧客130万口座の需要が集約されており、低頻度の商品でも通常品と同様のデリバリーを可能にしています。積極展開するプライベートブランドによるコスト削減効果も高く、べんりねっとで取引可能な同業他社の発注実績が伸び悩むなか、右肩上がりの実績です。また、用途やブランド、メーカーなどがシステム化されており、間接資材特有の検索が簡単にできる点も実績増の要因」と評価します。一方、柴垣氏はシステム導入による購買プロセスの改善が作業時間を短縮させ、本来、注力すべき高額品の査定やサプライヤー交渉、データ分析など購買業務の付加価値を向上させると説明します。
クラウドを活用し、ERPを調達・購買業務に拡張する
こうした社内プロセスの効率化に欠かせないERP(統合型業務ソフトウェアパッケージ)だが、上原氏は拡張性のある調達・購買領域において、ERPが機能していないのではないかと問題を提起しました。
これに対してSAPの渋谷隆行は、社外とのコミュニケーションが非常に多い調達・購買領域を企業の中で閉じたシステムであるERPで対応することは難しいとしたうえで、「サプライヤーの『ビジネスネットワーク』とERPをクラウドコンピューティングでつなげることで外部へのゲートウェイとし、マスターデータやトランザクションデータを共有すれば、ERPがそのまま調達・購買業務に拡張できる」と説明します。バイヤー企業とサプライヤー企業をさまざまな形でつなぐことで両社にメリットが提供でき、互いの業務の効率化やコスト削減、最適化、キャッシュフローの改善などが期待できると解説しました。
間接材にもコスト削減の大きな宝の山がある
そうはいっても、経営陣の注目は原価に直結する直接材料に集まり、間接材への注目は薄いと上原氏は指摘します。「修理やサービス購買、マーケティング、人材派遣会社の選定など、これまで購買部が関わってこなかった間接材にもコスト削減に関する大きな宝の山がある」と強調し、改革を求めました。
「たとえば、人材派遣のケースでは、日本の会社は部署ごとに選択購買されていることも少なくありません。旅費や経費の分野では、人事部や経理担当部署など購買・調達部門が担当している業務的な管掌とは別に、購買・調達部門が一元的に可視化できるようにすることが求められます」(渋谷)
「間接材の購入・調達の労力を極力減らすことができれば、企業の主要戦略である直接材の投資に注力することが可能です。これには購買部門が間接材の購入を一元管理し、コンプライアンスやガバナンスを効かせなければなりません。直接材投資を実現するうえで、アウトソーシングの活用やシステムの導入がその一助となるはずです」と、上原氏はパネルディスカッションを締めくくりました。
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