保険業界はBtoBtoCへと生まれ変われるか?――第2回:顧客志向・現場志向になるために


A young married couple using Digital tablet in theSAPジャパンの宮田です。「保険業界はBtoBtoCへと生まれ変われるか?」と題してお届けしている連載の2回目です。前回は、日本の保険業界を取り巻く環境と動向について整理しました。端的に言うと、保険業界の危機を招く原因としては、提供しているものと最終顧客や現場営業が求めているもののギャップを放置してきたことと、そもそも業務を支える仕組みが旧態依然としたもので効率が低いことにあります。一方で、銀行窓販、ネット専業、保険ショップ、外資系企業などの新規参入業者は、このような課題を解決する形で、想像以上に売上を伸ばしています。

つまり現在の流れは、課題に対して真摯に取り組むだけで、保険業界が大きく活性化する余地があることを意味しています。方向性としては、最終顧客の視点と現場の視点を持ってマーケティングを刷新することと、それを支える管理の仕組みの刷新にあります。これまでの保険業界は、“保険商品のための保険”という、言わば「BtoB」的なアプローチをとってきました。しかし、これから業界を刷新していくためには、最終顧客を意識する「BtoBtoC」的なアプローチが不可欠になります。ここでの「BtoBtoC」とは具体的に、お客様(最終顧客)の満足度向上と、現場従業員のパフォーマンス向上を意図します。この方向性は、大手企業だけでなく新興勢力についても同様です。

ではそのために、具体的にどのようなアプローチを取ればいいのか、以下で見ていきたいと思います。

現場の情報武装・マーケット分析

年齢・性別・職業などの属性、家族構成の変化などお客様のデータに基づき、契約変更や新規契約を提案するといったことは、これまで保険業界でも実践されてきました。ただ、日本の保険業界では、情報武装は、主に経営企画部門、IT部門、営業統括部門など本社で行われ、それを現場へ伝達するという方法が主流でした。データ分析を行い、示唆にとんだ結果を導き出すのは、専門家(データアナリストなど)の仕事だったのです。

しかしながら現在、「データは現場で活用してこそ生きる」、「現場で企画立案した方がマーケットへの即応性、実効性が高い」という考え方にシフトしてきています。海外の保険会社ではすでに、データが重要な資産であることに気づいており、現場で有効に活用できる方法を模索しています。その際のポイントはデータの可視化ツールです。前線の営業担当者や事務担当者にとって使いやすいものでなければならないのです。

つまり、現場をどう「情報武装」させ、それを使わせ切るかに焦点が移ってきています。SAPではこのような課題に応えるソリューションとして、「SAP InfiniteInsight」をご提案しています。これにより、データモデリング自動化、シナリオ自動化、直感的にわかりやすいグラフや図表の自動作成などが可能になります。それゆえ、本来はデータアナリストや特別な知識を有するエンジニアが行うような、ターゲット顧客の分析や訴求すべきセグメントの抽出などの作業を簡素化し、前線の営業担当者に情報武装させることが容易にできるようになります。これは、BtoBtoCの実践に際して、多大な効用をもたらすものと考えています。

セールスパーソンの育成改革

保険会社の営業職員、代理店のセールスパーソンなどへの教育は中長期で見ると、残念ながらまだ十分とは言えません。つまり、大量採用、大量脱落、休眠化の状況は現在も続いているのです。

これは、教育・育成に要するコストの適正化を妨げ、企業利益の低減、最終的には、顧客に提供する保険料の高止まりにつながります。では、この対策にはどのようなものが考えられるでしょうか。現在では、セールスパーソンの若返りが進み、スマホ世代が大半を占めるようになってきています。したがって、従来の集合的で定期開催のアナログな研修から、個別的で不定期のデジタルを利用した研修に変えることは検討に値します。また、カリキュラムの内容を、電子媒体(動画・音声・スライドなど)を活用してより理解しやすいものにし、資格試験のトレーニングにも利用できるインフラも望まれるところです。昨今では、対面によるコンサルティング営業の重要性が認識され、ファイナンシャルプランナー(FP)などの資格取得も奨励されているので、こうした教育インフラへのニーズは今後も高まることと思います。

SAPでは「SuccessFactors」というタレントマネージメントソリューションを擁しており、この一つの機能として、さまざまな教材をいつでもどこでも提供することが可能です。先進的な海外保険会社はこういったツールを活用し、営業員の教育効率化とコスト削減を両立させているのです。

「事業費」をいかに抑えるか

日本の保険料は、欧米の保険会社の保険料に比べて高いと言われています。正確な比較は、商品体系や付帯事項が異なるのでできませんが、海外にいる私の友人によれば、「感覚的なものではあるが、2倍から4倍高いのでは」とのこと。一体、何が違うのでしょうか?

保険料の構成要素は、業界の方には言わずもがなですが、将来の保険金の支払いに充当される「純保険料」部分(予定危険率と予定利率によって計算される)と、「付加保険料」部分から成り立っています。「付加保険料」とは、契約から保険料の収納、契約の維持・保全、保険金の支払いに至るまでに必要な事業費を賄うものです。「純保険料」部分は会社の経営努力以外の要素が多いので、保険料を低減させるには、この「事業費」を必要最小限に抑えることがカギとなります。

ここで気をつけなければならない点があります。事業費支出の効率化を図るということは、単に当該事業年度の予算枠を圧縮し、支出を抑制すればこと足りるということではありません。状況に応じた積極的な投資も必要になってくるのです。そのためには、単年度だけでなく中長期的な観点から事業費の動向を見極め、必要なコントロールをしていかねばならないのです。

さて、日本の保険料が海外に比べて高いということが仮に事実とするならば、海外の保険会社は日本以上に事業費削減の努力を行っていると言えそうです。では、事業費のどの部分が特に違っているのでしょうか。残念ながらセールスパーソンの給与に関しての海外保険会社との比較資料はありませんが、セールスパーソンの給与はおおむね売上高と連動しているので、海外保険会社と大きな差があるとは考えにくいです。そうしますと、欧米保険会社との差は、主に新契約から支払までの契約ライフサイクルの業務処理におけるITコスト、および内勤職員(セールスパーソン以外)の給与の差であるとの仮説が成り立つのではないでしょうか。

ちなみに、ITコストは単年度で収入保険料の3.6%使われています(Gartner IT Key Metrics Data, January 2012)。これらの予算の大半が欧米の場合、新たなシステム開発に使われるのに反して、日本の保険会社の場合は、大半が運用保守費として使われている点です。つまり、日本の場合、コスト高なIT運用をしていることになり、この点にメスを入れていかなければ、保険契約者への負担軽減は叶わないのです。レガシーシステムからの移行が求められている所以です。

もう一つの事業費押上げ要因と思われる内勤職員給与ですが、この点においては、各社とも派遣社員の活用やビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)を推進し、一定の効果をあげているものと思われます。しかしながら、この努力もほぼ限界値に近づいています。さらなる効率化を行うためには、業務プロセスを刷新することで、内勤職員の最適化を図る必要があります。たとえばそれは、業務の簡素化であり自動化です。そのためには文書のデジタル化や自動処理化が必要となります。これはすなわち業務プロセスのIT化であり、上述のレガシーシステムからの移行に他なりません。

SAPはこれまで、海外の保険事業者に基幹系システムを含む契約管理維持ソリューション、コアインシュアランスなどを提供して、コスト削減に貢献してきた実績があります。ぜひ、ご参考にしていただければと思います。

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顧客に選ばれる会社を目指して

以上、日本の保険業界の刷新に向け、重要だと考えられるポイントについてお話ししてきました。最終顧客を見据えた現場での対応を重視し、それを支える経営基盤を効率化させていくことが必要であることがおわかりいただけたかと思います。

SAPでも従来、保険会社に対して、いわゆるBtoB的提案を行ってまいりました。しかし、究極的には、その企業の成功は顧客満足を実現したかどうかにより決定されます。最終顧客である保険契約者の価値を向上させることが企業価値向上につながり、BtoBtoC的な発想に立つことで、世の中に貢献できるのです。それが競争優位性をもたらし、最終的には顧客に選ばれる会社となることに資するものと信じています。

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