Experience Everywhere ネスプレッソのマーケティング戦略


10月7日に開催された「SAP All Cloud Connect 業務部門がリードする経営改革フォーラム」。今回は、マーケティングトラックから、ネスレネスプレッソ株式会社のマーケティング&PRディレクター、市川貴幸氏によるご講演「Experience Everywhereネスプレッソのマーケティング戦略」の内容をレポートします。

全世界で共通の製品・サービスを提供

_A8A0121エスプレッソカプセルコーヒーやエスプレッソマシンの輸入販売を主な事業内容とするネスレネスプレッソ株式会社。ネスプレッソ事業は2000年以降、毎年10%以上の売上成長率を達成しており、世界的な食品・飲料会社として知られるネスレグループにおいて最も成長ペースの早いブランドの1つとなっています。本講演では、このような高成長の背景にある独自のマーケティング戦略を市川氏にご紹介いただきました。

「ネスプレッソ事業は、『誰でも、どこでも、簡単に一流のバリスタが淹れるような本格的なコーヒーを楽しめるようにする』というシンプルな発想の下で生まれました」と市川氏。バリスタには非常に熟練した技術が求められると同時にそれぞれの特徴があり、お店によってコーヒーの味わいがまったく異なります。ネスレの商品開発担当者が、イタリアのあるカフェで飲んだコーヒーを自分でも簡単にいつでもつくれるようにしたいと考えたことが、ネスプレッソ事業のそもそもの始まりだそうです。

そのようなコンセプトを反映し、ネスレネスプレッソは他のネスレグループとは異なるビジネスモデルを持つと市川氏は話します。「たとえばネスカフェなどは各国の消費者の嗜好に合わせてコーヒーのブレンドを変えていますが、ネスプレッソは全世界で共通の製品・サービスを提供しています。直営店をどこに出店するかといった意思決定を含め、グローバルでビジネスを一括管理している点がネスレネスプレッソの特徴といえます」(市川氏)

「究極のコーヒー体験」を提供するために、生産から販売までの全過程を自社で管理

「私たちの使命は、 『究極のコーヒー体験』を消費者の皆様に提供すること」と市川氏は力を込めます。

カプセルコーヒーは世界のコーヒー生産量の10%にも満たない「グルメ・コーヒー」を使用しており、その中でもネスプレッソの基準を満たすものは10~20%しかないそうです。つまり、世界の生産量のわずか1~2%というこだわりようです。

さらに市川氏は、「究極のコーヒー体験をお届けすると申し上げている以上、顧客サービスも重視しています」と強調します。会員からの受注や問い合わせには24時間体制で対応し、16時までに注文すれば翌日にはカプセルコーヒーを配送してくれます。コーヒーメーカーの故障時には、引き取りや納品、代替マシンの貸し出しをすべて無料でしてもらえるのも嬉しいサービスです。

「これらの生産から流通、マーケティング、そして販売までのバリューチェーンはすべて自社で管理しています。本当に美味しいコーヒー体験をお届けするために、“From Cherry to Cap”のコンセプトの下、コーヒー豆の調達から1杯のカップに至る全過程をコントロールしていることがネスレネスプレッソの強みとなっています」(市川氏)

潜在需要の高い日本市場で認知度の向上を目指す

続いて市川氏は、日本市場における展開について紹介しました。日本ではいわゆる「消費の二極化」が進み、金額に見合う価値がその商品にあるかどうか、消費者の目は以前に増して厳しくなっています。その点について市川氏は、「ネスプレッソは安いものではありませんが、付加価値を評価いただける商品と自負しています」と話し、今日の社会動向に沿うビジネスモデルであるとしました。

その一方で、日本でのビジネス拡大に向けて解決しなければならない課題もあると同氏はいいます。「最も大きな課題は、認知度がまだまだ不十分という点です。そもそもカプセル式コーヒーとは何か。インスタントコーヒーやフィルターコーヒーとどのように違うのか。他のカプセル式コーヒーと比べて、ネスプレッソはどこが優れているのか。そういった点で、まだまだ市場の理解を得ることができていないと感じています」(市川氏)

戦略構築では「差別化」と「情緒的な結びつき」を考慮

この課題を解決するにあたり、ネスレネスプレッソは次の2点を考慮して戦略を構築しています。

1つは、日本は世界でも類を見ないほどコーヒー商品の種類が多い市場という点。「たとえば、実は冷たい缶コーヒーを自動販売機で扱っている国はほとんどありません。多種多様なコーヒー商品が『洪水』のようにあふれ、それらのすべてがナンバーワンを謳って広告を展開しているわけです。その中でまったく新しいものを浸透させるためには、既存の商品との差別化を図り、これまでにない手法を採用する必要があります」と市川氏。

もう1つは、商品の機能面だけでなく、消費者と情緒的な結びつきを持つことの重要性です。市川氏は、「ネスレグループのキットカットは、『きっと勝つ』という意味を込めた受験生のお守りとして、いわゆるチョコレートとしての機能面に加えて、願いが叶うという情緒的な結びつきを消費者とつくることに成功した例といえます。同様に、ドンペリニヨンは高品質のシャンパンという機能面に加え、成功者の証といったイメージが定着し、非常に強いブランド力を確立しています」と話し、市場をリードする商品であるためには、機能面と情緒面の双方の要素を備えることが重要と説明しました。

ブランド体験をマーケティング戦略の柱に据える

この2点を考慮し、ネスレネスプレッソがマーケティング戦略の柱に据えるのが「ブランド体験」です。「いくら世界で1~2%しかない貴重なコーヒーを使っていることをアピールしても、実際に体験して納得してもらうプロセスがない限り、本当の意味で商品のよさを理解していただくことは困難です」と市川氏。

市川氏は、以前勤めていたお酒の会社で消費者調査を行った際に、体験がいかに大切かということを思い知ったそうです。「ウイスキーのとあるブランドが好きな方にインタビューをすると、ほぼ100%の方が最初にとてもよい体験をしていました。たとえば、プロジェクトが成功して上司の方に初めて高級なバーに連れていってもらい、そのブランドで一緒に祝ったといった具合です。その体験が心に強く残り、その後のブランド選択に影響するケースが非常に多かったのです」(市川氏)

新規ユーザーを獲得する戦略として、ネスレネスプレッソはいかによいコーヒー体験を最初にしてもらうかということを重視しました。その体験の場として導入したのが、「ブティック」と呼ばれる直営店です。日本の表参道をはじめとして全世界に327店舗を展開しています。「2000年過ぎにブティックコンセプトを導入し、これまでカプセル式のコーヒーシステムになじみのなかった方に体験の機会を提供できるようになったことで、ビジネスが飛躍的に成長しました」と市川氏は手ごたえを感じています。

オム二チャネルの浸透がユーザー定着のカギ

獲得した新規ユーザーを離さずアクティブな状態に保つための戦略も欠かせません。ネスレネスプレッソは、ブティックやインターネット、コールセンターといった販売チャネルを自由に選択できるオムニチャネルを採用しています。複数の販売チャネルを利用する「ミックス」の顧客は消費量が断トツに多く、逆に非アクティブになってしまう率では最も低くなっています。つまり、複数のチャネルを活用するユーザーはアクティブユーザーとしてとどまる可能性が高いということを意味しています。

omniチャネルの重要性「いかにしてオムニチャネルを体験してもらえるかがユーザーを維持するために重要な戦略となります。そこで私たちは、『オンライン』と『オフライン』、『体験』と『購入』を常に循環させるような提案をプログラム化しています」と市川氏は話し、ブティックでのセミナー開催やネット上での限定フレーバーコーヒーの選挙実施、日本人の嗜好に合わせたアイスコーヒーキャンペーンなどのさまざまな活動を紹介しました。

「オンライン、オフラインを問わず、ロイヤルティを築くうえでブランド体験が大切であり、それこそが他の商品との差別化に結びつくと考えています。このマーケティング戦略の柱が、ネスプレッソの成長に極めて大きな役割を果たしています」――。最後に、市川氏は体験の重要性を再び強調し、講演を締めくくりました。

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【SAP All Cloud Connect レポート】最高の顧客体験を実現するオムニチャネル戦略

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