オムニチャネルの実践化と ITを活用した次世代マーケティングのあり方


10月7日に開催された「SAP All Cloud Connect 業務部門がリードする経営改革フォーラム」。マーケティング部門トラックの最後は、弊社のSRMソリューション部マネージャー阿部を進行役に、ネスレネスプレッソ株式会社の市川貴幸氏とハイブリスジャパン株式会社の堀裕氏によるパネルディスカッションで締めくくりました。「オムニチャネルの実践化」や「次世代マーケティングやIT」をテーマに行われたその様子をお届けしたいと思います。

チャネルを越えた消費者目線のコンセプト

_A8A0254はじめに、弊社の阿部はネスレネスプレッソ株式会社の市川貴幸氏に、ネスプレッソのコンセプトについて聞きました。「ネスプレッソの『お客さまに究極のコーヒー体験を提供する』といった顧客体験に重きを置いたコンセプトは、どのような背景で生まれたのですか。こうしたメッセージは、販売チャネルごとに変えているのでしょうか」(阿部)

質問に対し市川氏は、まず自分のような消費者にとって、いかに手軽においしいコーヒーが飲める方法を提供できるかというコンセプトが根本にあると説明します。「実店舗やオンライン、コールセンターなど、複数の販売・流通チャネルを顧客ごとに提供できるオムニチャネルが広がりつつあります。ただ、あくまで1人の消費者に対しどのようにネスプレッソの体験価値を伝えていくか。チャネルを越えた消費者目線のコンセプトをつくることが、事業のコンシューマー戦略を立てるうえの根幹になると考えています」(市川氏)

「味覚やサービスといった、かたちに見えないような顧客体験をオムニチャネルで成功させたのがネスプレッソですね」と阿部。ほかに身近でオムニチャネルを生かした例はどのようなものがあるか、ハイブリスジャパン株式会社の堀裕氏に尋ねました。

堀氏は、フランスの老舗百貨店ギャラリー・ラファイエットを例に挙げます。実店舗をはじめ、WEBやモバイルなどのチャネル間でメッセージやブランドのトーンを統一。デバイスに依らず、全店舗の在庫確認など情報を一元管理できるだけでなく、顧客がモバイルで見ている商品や店舗の情報を店員が同じビジュアルで把握でき、モバイルの操作方法を含め案内することが可能といいます。「もうひとつは、アップルストアでしょう。修理などの予約から店舗での接客、支払いまですべてのサービスをデバイスに依存せず完結します。今後は、市川さんの言うように顧客を一元的に捉えたサービスの提供が求められていると思います」(堀氏)

日本企業の「組織の壁」がオムニチャネル普及の妨げに

今でこそ普及しはじめているオムニチャネル。まだ言葉が一般的でない時期から、ネスレネスプレッソがオムニチャネルに着目していた経緯について市川氏に聞きました。

「オムニチャネルという言葉自体が、本来は売り手側の言葉なのではないでしょうか」と市川氏はいいます。ネスレネスプレッソが長きにわたりコンシューマーマーケティングに注力してきたなかで、コンシューマーセントリック(顧客中心)という考えが強く根付いていました。「わたしたちの商品が消費者目線でどのように映っているか。消費者が何を求めているのかを追求した結果、オムニチャネルにたどり着き、ひとつのマーケティング戦略として確立しました」(市川氏)

現在、日本企業と比較し欧米企業の方がオムニチャネルは広く普及し優位にあります。一見、もてなしの文化が強い日本こそ大きく発展していてもおかしくないはずと、堀氏に投げかけました。

これに対し堀氏は、「たしかに、商品のラッピングや即日発送など顧客サービスやインフラ面のクオリティは日本企業がずば抜けているといえます。一方で、オムニチャネルを社内で提案する際、部門ごとに組織の壁があり横断的な企業戦略を立てづらい会社が多いのが現状です」と分析します。

ただ、本来BtoCのしくみであるオムニチャネルを、BtoBに転用する流れが世界的にあり、日本企業でも進んできていると堀氏は続けます。たとえば、ハイブリスジャパンの日本の顧客であるスポーツメーカーでは、売上の7割近くが海外であることからオンライン強化は必須ですが、日本の地方過疎化に対応できるチャネルも提供しています。都市圏の人口集中により各地の過疎化が進み、街の商店街にある家族経営などの小さなスポーツショップは閉店の危機に立たされています。従来は顧客に配布するタブレットをこうした店舗にも配ることで、迅速に商品がオーダーできる体制を整えます。そのほか電話やファックスによる伝票の起票ミス防止、メーカー側からの商品のプロモーションをワンストップでスポーツショップの店員に共有できるなど、有用性は高いといいます。「しかし、こうしたアイデアも担当セクションが異なるという理由から企業内で企画が通りづらいのが課題」と堀氏は指摘しました。

コンセプトやメッセージの統一・徹底が重要

堀氏の話を踏まえ、「ネスレ従来の卸売・小売りを経由するビジネスモデルから、ネスプレッソのようなオムニチャネルのビジネスモデルに改変するにあたって社内で合意に至るまでにも困難はあったのでしょうか」と市川氏に問います。

ネスプレッソは約25年前に事業開始。イノベーションを重視するネスレ社内の合意に障害はなかったものの、当時はここまで拡大したマーケティングになると期待されていませんでしたと市川氏。「立ち上げ時には日本をはじめ、スイス、イタリアの3カ国でテストマーケティングを行いました。日本がテスト国として選ばれたのはやはりホスピタリティの高さからで、日本で成功すれば他国にアダプトできるという考えがあったからでしょう」と続けました。

ネスレではイノベーションが受け入れられた一方、将来的に海外進出を目指す日本企業にとってビジネスモデルチェンジをうまく進めていく秘訣や勘どころについて堀氏に伺いました。

堀氏は「他社が真似していないようなマーケティングをしたいという一方、他社事例はないのかという声を聞きます」と、前例のない新たな価値を生み出す提案を進めることは非常に難しいと語ります。加えて、起案する役員クラスには年配の方が多く、いかにして今のデジタル化の流れを取り込めるかも課題のひとつです。「おもしろい提案をしようと思う反面、目の前の困難や制約事項などを並べられてしまうとなかなか一歩を踏み出せない。マーケティングのしくみを変えないことが無難となりがちなところで、バランス感覚を持ってイノベーティブなアイデアを提案できるといいですね」(堀氏)

堀氏の話を受け、「オムニチャネルが成功したネスプレッソですが、同じようなチャネル間の課題はあったのでしょうか」と市川氏につなぎます。「どの企業でもいえることですが、チャネルごとに分かれた状態から横串組織をつくるのには苦労しました。その中で、基本的なコンセプトやメッセージをどのチャネルでも統一し徹底させることはとても大切です」(市川氏)

顧客情報の分析でニーズに適したプロモーション

従来から存在する実店舗やWEB、電話など、さまざまなチャネルがここ数年で急速的にオムニチャネルとして注目されている要因について、「近年のネットワークとデジタルデバイスの発展がインフラ整備を後押しし、オムニチャネルの普及に貢献している」と堀氏は力を込めます。「次のステップでは、顧客の世代や傾向、特徴といった顧客情報を分析・回析することで、的確なプロモーションができる体制を整える必要があるでしょう」(堀氏)

パネルディスカッションの前に行われた市川氏の事例講演の中で、複数のチャネルをまたぐチャネルミックスによって獲得した顧客はリピーターになる可能性が高いという分析がありました。阿部は、「反対に、リピーターとなるようないわゆるアクティブな顧客だからこそ、いろいろなチャネルでネスプレッソを調べているのではという見方もできます」と投げかけました。

「データの捉え方によって見方が異なりますが、わたしたちはチャネルを問わずネスプレッソのブランドを体験していただけるようなマーケティングを行っています。この考えが、リピーター率の高さにつながっているのではないでしょうか。今後もさまざまなチャネルの活用で新規ユーザーを増やすことに力を入れていきます」と市川氏は前を見据えました。

最後の質問では、堀氏に次世代や現代型マーケティングとITの関係は今後どのように連携していくべきかを聞きました。

堀氏は「オンラインショッピングが多い若年層と、実店舗に足を運ぶ40代以降の方など、同じ目的でも人それぞれチャネルの使い方は異なります。先ほども話したように、在庫管理、商品の売れ行き、顧客情報などを一元管理することで、顧客ごとにマッチしたチャネルに対し顧客のニーズに適したプロモーションの展開や、タブレットやモバイルの活用により接客の効率化が図れるようになる。こうした全体を網羅できる一貫したシステムインフラの提供が求められているでしょう」と締めくくりました。

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【SAP All Cloud Connect レポート】最高の顧客体験を実現するオムニチャネル戦略

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