予測保全サービスのトレンド――製造業における戦略的データ活用


こんにちは、SAPジャパンの安藤です。現在、製造業は変革の時です。新しいコンセプトであるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、インダストリアル・インターネット、インダストリー4.0(Industrie 4.0)が提唱され、製造の仕組みを大きく変えようとする動きが加速しています。これらの新しいコンセプトにおいて、共通して重要な要素として定義されているものに、ビッグデータの活用があります。

この背景としては、各種センサー、デバイスのコストが4年前と比較して1/5に低下し、生産設備、機器に多くのセンサー、高機能デバイスが搭載されており、2020年には500億セットにまで到達すると推定されています。これらのセンサー、デバイスを利用して、生産関連データだけでなく、環境情報、位置情報などの膨大な情報が収集されると同時に、高度な処理が可能となり、同時に設備相互に連携し、生産の最適化などを行うことが可能となってきています。

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この収集された膨大でリアルタイムなデータがビッグデータであり、この活用がこれからの製造において大きな課題と言えます。現状では、ビッグデータが充分に活用され、ビジネス価値を高めることに繋がっているかと言うと、まだ不十分であると考えられます。このビッグデータを活用するための重要なテクノロジーとして予測分析が大きな注目を集めています。

予測分析を実現する3つの段階

予測分析とは、過去の情報だけでなく今この瞬間に発生する情報を元に、次に発生する事象を推定・予測し、その予測に対して必要な処理を行うアプリケーションです。この予測分析をうまく活用することで、情報のビジネス価値を高めることを目的としています。

予測分析には、3つの段階があると考えられています。

第一段階は、Descriptive Analyticsと言われ、過去のデータを元に将来の状況を分析するもので、対象とするデータは構造化されたデータです。これは従来の経営分析、生産計画などの領域として考えられます。

第二段階は、Predictable Analyticsと言われるものです。これが一般的に言われるビッグデータを利用した予測分析とされるもので、対象とするデータも構造化されたものに加えて、非構造化データも加えた幅広い情報をもとにデータをモデル化し、将来を予測して、その結果を利用しようとするものです。

第三段階としては、Prescriptive Analyticsと言われる段階で、これは予測分析から導き出された分析モデルを、実際のビジネスプロセスと連携させ、ビジネスプロセスに直接予測効果を反映させて、付加価値を高めることを可能とする段階となります。

予測保全サービスの市場

予測分析は色々な分野に適用が可能です。一般的には、消費者市場におけるマーケット動向の分析、また製造業においても品質管理への適用が知られています。SAPはこの予測分析を、アフターマーケットサービスの分野へ適用を進めています。

その背景として、生産設備などの保守サービス市場の規模は現在4470億USドルに達しており、大きなポテンシャルを秘めています。予測分析を利用することで、障害発生後に対処する従来の方法と比較して、対処に関わるより多くのコスト削減効果を出し、保守サービス市場における利益率の向上につながると考えられるからです。同時に、複雑化する生産設備などに対する保守の高度化が、競合との差別化の大きな要素になると考えられ、それらのサービスの提供に予測分析が役立つと考えられているからです。

SAPの予測分析サービスは、先に定義された第三段階(Prescriptive Analytics)を、製品のアフターサービス分野において実現するもので、お客様と協力してシステムの開発とビジネスモデルの確立をしようと言う提案です。

SAPの予測分析サービスの概要

SAPはビッグデータに対応するプラットフォームとしてSAP HANAを提供しています。そして、SAP HANAにはビッグデータを活用するツールとしてPAL(Predictive Algorithm Language)、Rなどの統計分析ツールも提供しています。

この統計分析ツールを利用し、第二段階の予測分析(Predictable Analytics)を実現するためには、収集されたデータの集約プロセスが重要となります。製造業のお客様においては、M2Mの導入により、すでに設備・機器の稼働情報などを収集し利用されている企業もあります。ただし、この利用はまだ「限定的」である、と言うのが現状です。というのも、単に予測分析を行っただけではビジネス価値が充分に把握できず、ビジネスにどう活用するかといったシナリオが定まっていないケースがほとんどだからです。

これは第三段階であるPrescriptive Analyticsの考え方が、充分に浸透していないことが背景にあると考えられます。SAPの予測分析サービスは、アフターマーケットに焦点を合わせて、予測分析に必要なデータの集約、分析モデル、アルゴリズムの構築を支援します。また、お客様とともにPrescriptive Analyticsを行うにあたって、その目的やKPIを設定し、システムの仕様を検討。その結果として求められる予測分析と、その分析モデルのビジネスプロセスとの連携を含めて、経験豊富なSAPの技術者がお客様に代わりソフトウェアとして開発、提供させていただくという包括的なプログラムとなっています。データ集約、分析アルゴリズムの選定などにおいては、経験豊富なSAPのデータサイエンティストがプロジェクトに参加し、ご支援させていただくこともあります。

予測分析モデルの検証

開発された分析モデルが実際のビジネスにおいて対応しうるか、事前に把握する必要がある場合、プロトタイプを開発し、本番システムの開発前に分析モデルについて充分な検証を行うこともあります。具体的には、下記の3つのステップを通して行います。

第一ステップとして、デザインワークショップを開催します。現在お客様が保持しているデータ、システム構築におけるビジネス目標、KPIをお客様とSAPのエキスパートとのあいだで明確にします。お客様における関係者の共通理解の促進と、マネージメントにおける予測保全サービスのビジネス価値についての理解を得ることを目的とします。

第二ステップとしては、予測保全サービスの実現を目指して、詳細な仕様の検討、予測分析に必要なデータの確認、非定型データを含むデータの集約プロセスおよびデータモデルの確認、相互関連性、決定アルゴリズムに必要な分析アルゴリズムの検討をSAPのエキスパートとともに行います。また、予測分析結果を連携させるビジネスプロセスの確認、UIの検討もこのワークショップで行います。想定される期間は、2~3週間程度です。

また、必要に応じてプロトタイプ開発も行い、分析モデルがお客様の期待する結果を得られるかを検討します。プロトタイプ開発を行った場合には、評価などを含めてさらなる期間が必要となります。

第三ステップでは、先のワークショップで評価されたモデルに従いシステムの開発を行います。ここでは、SAPのカスタムディベロップメントチームがSAP HANAに関する知識とSAPの各アプリケーションに関する豊富な知識を駆使して、もっとも効率的なアプリケーションをお客様に代わって開発・提供します。

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事例:グローバル製造業における予測保全サービス

Machine Health Centerは、顧客の設備・機器の稼働状況をリモートで監視し、稼働状況と合わせて設備の各種データ(温度、振動、回転数、稼働時間、電力消費量など)を収集し、その設備・機器が正常な稼働範囲にあるかをリアルタイムで診断します。顧客はこのサービスを通じて、故障の可能性を早い段階で検知し、設備が停止してしまう前に対処できるため、故障によるダウンタイムを最小限にすることができ、サービスレベルアグリーメント(稼働率保障など)のような高度な保障を提供することができるようになります。これにより同社の顧客は、サービス売上の増大、また故障などへの緊急対応を最小限にすることによるサービスコスト低減につなげることができます。

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まとめ

多くの製造業においてサービスビジネスの拡大は、重要な経営課題として認識されており、関連する事業部門の担当者は、その施策の策定を求められています。SAPがご提案する予測分析サービスソリューションは、そのような事業部門のビジネス責任者の方に一つの方向性を示すと共に、実現するプロセスも合わせてすでにご提案が可能なサービスです。

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