会計業務をグローバルにシンプル化する~次世代会計基盤SAP Simple Finance
作成者:SAP編集部 投稿日:2014年12月10日
10月7日に開催された「SAP All Cloud Connect 業務部門がリードする経営改革フォーラム」 経理財務部門向けトラックでは「グローバル化で待ったなし。次世代の会計基盤」と題して、「ビッグデータ」「クラウド」をテーマにSAPジャパンから3名の社員が講演を行いました。今回は弊社の中野浩志による「会計業務をグローバルにシンプル化する~次世代会計基盤SAP Simple Finance」の内容についてレポートしたいと思います。
ITの進化と共にイノベーションが求められる企業の財務会計
SAPはこれまで、さまざまな企業の業務課題解決の支援を行ってきました。1979年のメインフレーム「R/2」のリリースに始まり、1992年にはクライアントサーバーモデルの「R3」と、ITの進化とともにお客様のビジネスに最適なソリューションをリリースしてきました。ITにおける変化は目まぐるしく、クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータといった新しいテクノロジーが次々と生み出されています。
「ITイノベーションが進むなか、財務会計領域にも非常に大きな変化が起きている」と弊社の中野も話すように、ITとともに財務会計にも進化が求められています。新たに生み出されたテクノロジーをいかに効率的に導入し活用できるかが、今後のビジネスの成功と収益の確保につながっているのです。
新プラットフォーム「SAP HANA Platform」と「SAP Simple Finance」
新たなテクノロジーの潮流が、企業がイノベーションを起こすための潜在的なチャンスとなるなか、SAPは「R/2」「R/3」に続く第3のプラットフォーム「SAP HANA Platform」(以下、SAP HANA)に最適化した次世代のSAP会計ソリューション「SAP Simple Finance」をリリースしました。
SAP HANAはインメモリーデータベースのプラットフォームです。大きな特長はこれまで独立していた会計や販売購買などの取引を管理する基幹システムと取引データなどを収集・蓄積してレポート・分析を行う情報系のシステムを、SAP HANAというひとつのプラットフォーム上で動かすことができる点です。
これまでは基幹システムから情報系システムへ取引データをバッチ処理で転送し、情報系システムで集約・レポーティング・分析を行う必要がありました。それが同一プラットフォーム上で単一データソースを共有することで、データ転送によるタイムラグやデータ不整合、データの二重持ちが回避されるだけでなく、鮮度の高い取引明細データをオンデマンドで集計・レポーティング・分析できるようになります。
SAP Simple Finance は豊富な実績を持つSAP ERP の会計ソリューションが、インメモリー技術 SAP HANA の活用により大幅に進化した、次世代のSAP会計ソリューションです。
予算/予測/計画管理と財務分析、経理/決算業務管理、財務資金/財務リスク管理、シェアードサービス管理、全社リスク/コンプライアンス管理などCFOがカバーする幅広い業務領域をカバーします。
また、SAP Simple Finance では、従来のIT技術では必要だった集計データが不要となったことに加え、新しく直感的なユーザー画面が提供されたことにより、以前よりも自由な情報活用が可能になりました。またSAP Simple Financeは、SAP ERPから短期間での移行が可能なだけでなく、SAPの提供するクラウドサービス上での利用も可能となり、システム利用形態もシンプルにすることが可能です。
さらに、既存会計機能(SoH FI,CO)のデータ構造をシンプル化するSAP Accountingの他、グループ資金管理・統合財務計画などの新機能が新しいユーザーインターフェースを通して提供され、柔軟性や拡張性が向上しています。
「SAP Simple Finance」が実現させる3つのシンプル化
「SAP Simple Finance」は、ランドスケープ、アプリケーション、ユーザーエクスペリエンスの3つの観点で、会計業務をシンプルにします。
まずランドスケープですが、先ほど少し触れたように、取引・分析・レポーティングと別々のシステムで扱っていたデータをSAP HANA上で一元管理することができるようになりました。
これにより、複数のシステムで同じデータを所持するようなデータの二重持ちが解消され、データボリュームの削減とデータ整合性/適時性の確保が期待できます。システム自体の設計やデータ構成もシンプル化されるので、これまで以上に会計業務をスムーズに行えます。
続いてアプリケーションについて、SAP Simple Finance では、従来のIT技術では必要だった集計データが不要になります。事前集計せずに常に明細データからレポートを実施するため、常に最新の分析・集計軸でレポートができるだけでなく、データ量の大幅な削減や組織・事業再編への柔軟な対応が可能になります。SAPグループの場合、従来7日要した組織変更処理プロセスがSAP Simple Finance導入後は1日で済むようになっています。
また、財務会計と管理会計のデータを一元的に管理・利用することが可能になることで照合作業が不要になりました。月末等にバッチ処理されていた業務を不要にする、または月中にリアルタイム処理することで、決算早期化に寄与するだけでなく、正しい情報をいち早く把握して対処する事が可能になります。
最後のユーザーエクスペリエンスは、業務を行う画面・ユーザーインターフェースが見やすく、シンプルで使いやすく一新されました。iPadやスマートフォンなどのモバイル端末でもパソコンで画面を見るときと同一の見せ方ができるのは便利なところです。今後は買い掛け担当、売り掛け担当、支払い担当と現場の担当者別の専用画面やCFO専用画面などを順次リリースしていく予定です。
集計・分析・レポーティング等の業務プロセスが変わる
SAPでも段階的にシステムをすべてSAP HANA上で管理できるよう移行している最中です。講演では実際に「SAP Simple Finance」を導入して、具体的になにが変わったかの実例が紹介されました。代表的なものを3つ挙げていきたいと思います。
1つ目は決算の早期化です。
SAPでは12月31日に締めて1月に決算情報を開示しています。2012年は1月24日に決算発表を行いましたが2013年は1月10日に決算発表を行うことができました。単体決算および連結決算前のバッチ処理の解消、期末処理を期中リアルタイム処理にシフトすることによる平準化・効率化、SAPグループ1300名が関与する決算処理プロセスをイベントトリガーの自動処理化することで手待ち時間の無駄を無くし、処理順序間違い防止に繋げるなど、SAP Simple Financeを活用して業務効率を飛躍的に向上させることで決算早期化を実現しています。
2つ目は収益の把握がリアルタイムで行えるようになったことです。
SAPグループは地域・事業の軸で収益を管理しますが、セグメント単位での収益把握は月末の配賦処理を待たないと把握できないケースもありました。それが「SAP Simple Finance」導入後はレポート実行時に配賦処理がつど実行されるため、「現時点での収益」がいつでもオンデマンドで確認できるようになりました。月末に結果を早く知るだけでなく、月中に収益状況を把握し、目標を作り込むためのアクションが早期に取れるようになり、ビジネスにも大きく貢献しています。
3つ目は滞留債権の管理です。
SAPではグローバルに3カ所あるシェアードサービスセンターが月末処理として営業部門と連携して行っていた業務でしたが、業務プロセス全体が煩雑で、支払いが遅延している理由を知るのにも時間がかかるものでした。現在は、滞留債権がある一定の閾値を超えると営業担当者にモバイル端末を介してアラートが届くようになっています。
営業担当者はモバイル端末から直接請求明細書や支払履歴、与信情報を確認。営業が顧客に確認した支払い遅延の理由や新しい支払約束日は、営業のエクセルファイルではなくERPの売掛金伝票明細として紐付管理できるようになり、シェアドサービスセンター側では営業担当者に問い合わせなくても遅延理由および新しい約束日に対する入金状況を継続モニタリングできるようになりました。こうした取組みによりDSOを10%改善するなどの業務プロセス効率化に繋げています。
導入アプローチ例
SAP Simple Financeの導入には大きく2つのアプローチがあります。1つは既存ERPをSAP Business Suite powered by SAP HANA化する際、財務経理面でビジネスバリューを創出するためにSAP Simple Financeをアタッチするアプローチ。もう1つが既存ERPシステムが事業、地域等に複数存在しており、一気呵成にワンインスタンス化できないもののグルーバル横串で財務会計/管理会計データを管理するグローバルプラットフォーム整備が必要な企業向けのグループ統合大福帳アプローチです。
グループ統合大福帳アプローチは、既存ERPシステムには触れないで新たにSAP Business Suite powered by SAP HANA / SAP Simple Financeプラットフォームを設置して既存ERPで生成された会計仕訳明細データをリアルタイムに連携・蓄積し、グループ横串で財務会計/管理会計明細データをオンデマンドで分析・各種意思決定に活かす導入アプローチです。蓄積された明細データを活用して決算早期化やグループ運転資金効率化、海外拠点の不正管理、統合財務計画・予算予測実績管理など各企業の課題に応じたソリューションを段階的に導入・拡張していくことができます。
グローバルワンカンパニーを目指しつつ、まずはグループ統合大福帳としてグローバル共通プラットフォーム整備をし、M&Aや各地域・事業の既存ERPアップグレードのタイミングで徐々にグローバル共通プラットフォームに置き換えていくなど、一気呵成に変革を推進するのが難しい日本企業向けのアプローチということもできます。
保存版PDFレポートはこちら:
【SAP All Cloud Connect レポート】グローバル化で待ったなし。次世代の会計基盤
関連記事
ご質問はチャットやWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)