データ分析を現場のユーザーに解放するデータビジュアル化ツールSAP Lumira
作成者:瀬尾 直仁 投稿日:2014年12月2日
SAPジャパンの瀬尾です。最近では企業のマネージメントの皆様から「ビッグデータを使って○○したい」といったご相談をいただくことも珍しくなくなりました。企業活動に使えるデータの種類が増え、それに伴い企業が活用するデータの整備も整ってきています。しかしながら、せっかく入手した「宝の山」とも言える膨大なデータが、手つかずのまま放置されているケースも少なくありません。その有効活用には、データ分析のノウハウと、分析結果を活用し次のアクションにスムーズにつなげていくための工夫が必要です。その手段の一つが「ビジュアル化」です。
データ分析やビジュアル化をすでに実施している場合でも、IT部門や外部専門家に頼ることが多かったのではないでしょうか。その際、現場の意向や感覚に合致しなかったり、時間がかかるといったケースも見受けられたかと思います。一方、IT部門の方も現場により近いデータ活用を志向しつつも、データガバナンスの観点から画一的な管理をせざるを得ない、といった事情があったのではないでしょうか。SAPジャパンではこのような課題に応えようと、データ取得から加工・成形、ビジュアル化、クラウド共有までを直感的かつセキュリティ面でも安心な形で行えるツールSAP Lumira(ルミーラ)を提供しています。本ブログではこのSAP Lumiraの機能や活用事例についてお伝えしていきたいと思います。
“宝の山”を発掘する——いま「データディスカバリー」がホットな理由
冒頭で述べたように、昨今、ビッグデータ時代と言われるようになり、データを上手く活用することで、ビジネスの成長や改善を実現する企業が現れてきました。市場や顧客の情報を感覚的に捉えるよりも、視覚化されたデータに基づき理論的に捉えたほうが、再現性があって論理的修正も可能です。説得力があるため、組織的対応も容易になります。
しかしながら、いざデータ分析を行おうとすると、データモデリングなどの専門知識が必要となる上、大量データを処理するためにはデータベース言語や処理方法などに精通していなければなりません。そして分析された結果を加工、処理するノウハウも必要となり、当然ながら、現場にいる営業部隊やマーケティング担当者が自ら扱える範囲を超えてきます。結果として、専門知識をもつIT部門や外部専門家に頼ることになります。
また、社内のあらゆる必要データにアクセスする必要もありますが、個人情報や知的財産権など外部流出が厳禁でアクセス権限付与により保護すべきものが複雑に混在し、現場の裁量だけに任せられないという現状もあります。いずれにせよ、多くの場合、このような制約条件の中でのデータ活用ということになり、それが理由で十分な結果が出せなかったというケースも少なくないでしょう。
しかし、結論を出すのはまだ早いのです。このような課題に応えるべく、企業の現場での活用を目的とした新たなツールが市場投入されています。それが「データディスカバリー」と呼ばれる、データ活用のためのビジュアル化ツールです。これにより、現場サイドで自らデータを起こして可視化を行うことができます。こうしたデータディスカバリー市場の伸びは向こう5年間で年平均30%以上の成長率が予測されています。このことからも、今やデータディスカバリーがビッグデータ活用のカギとなっていることがわかります。
見えにくいデータを可視化するSAP Lumira
SAPでは、SAP LumiraというデータディスカバリーのデクストップUI(ユーザーインターフェース)ツールを提供しています。SAP Lumiraの基本的な利用ステップは以下となります。
- 膨大かつ詳細な企業や個人のデータソースからオリジナルデータを取得
- デスクトップでデータ加工やフィルタリング、ビジュアライゼーションなどを行い、分析を迅速に実施(発見をビジュアル化=「データディスカバリー」)。結果をストーリーボードと呼ばれる簡易ダッシュボード形式で表示することにより、直感的な理解や洞察、意思決定をスピードアップ
- クラウド経由で関係者とビジュアルな分析結果を共有。タブレットでの閲覧も可能
なお、データ取得や分析時には、スクリプトや定義済クエリー、レポートなどは一切不要で、ドラッグ&ドロップで直感的に操作できます。さながら、写真のデジタル加工に似た手続きで、データのいろいろな視覚効果をその場で確認しつつ、意図に合致したわかりやすいビジュアルを選択していく形です。表計算ソフトでの資料作成時のストレスから開放されるだけでなく、生産性向上に寄与すること間違いなしです。
実際の操作イメージは以下の動画をご覧下さい。
ビジュアルを強化するストーリーテリング機能とは?
すでにお伝えした通り、データディスカバリー市場は現在、たいへんな活況を迎えていますが、それは、複数のベンダーによりツールが提供されているからでもあります。その中において、SAP Luminaが特にご好評いただいている点は、以下の4点となります。
① 優れたビジュアル
優れたビジュアルを見て、文字通り「一目でわかる」経験をしたという方も多いでしょう。ビジュアル化は判断スピードを速くしますので、ビジネスの現場に不可欠です。SAP Lumiraによる典型的なビジュアル化の例は、先の動画でもご紹介したような、グラフを用いた表現ですが、応用型としては少し凝ったものもあります。たとえば、機械のCADデータ上に故障率をマッピングし、その3次元画像に故障率が高い部分を表示することが可能になります。これにより、フィールドサポートの業務効率を高めることができます。
② ストーリーテリング機能
プレゼンテーションで人を説得するときには、個々のビジュアルが重要であることは言うまでもありませんが、もうひとつ、「どういうストーリーで伝えるか」がカギとなります。特にビジネスの現場では、データの一部だけ投げ出しても、意図と違う読み取り方をされてしまう恐れがありますが、ストーリーの中にデータを配置すれば、正しく意図を伝えることができます。
SAP Lumiraでは、ビジュアル化された分析結果を羅列するのではなく、分析結果から一連のストーリーを容易に作り出すことができる、「コンポーズ」という機能があります。これにより、目的に合致した分析結果の抽出とストーリー化が可能になります。ストーリー化のイメージをつかんでいただくために、ストーリーボードの例を一つ掲載いたします。画像をクリックするとストーリーボード全体を確認できます。
③ 予測分析との融合
予測分析ソフトウェア「SAP InfiniteInsight」との連携により、予測分析結果をデータとして読み込むことにより、そのビジュアル化も簡単に実施することができます。詳しくは、後述するSAP Lumira活用例②をご覧ください。
④ データガバナンス
データディスカバリーツールの導入スタイルとして良くあるのが、現場の方が気に入り、数名のユーザー向けに試しに導入、気に入れば広く展開、というパターンです。ここで問題が2つあります。1つ目は、お試しで導入するツールはたいていデスクトップツールであり、デスクトップ上にデータサイロが新しく生まれるため、データガバナンス上理想とは言えない状況が生まれる点。次に、将来の展開時におけるスケーラビリティという点です。しかしながら、SAP Lumiraにおいては、BIにおけるスタンダードであるSAP BusinessObjects Business Intelligence Platformのユーザー管理やアクセス管理、セキュリティ管理機能を通じてデスクトップ上のSAP Lumiraを管理・連携することで、ユーザビリティを損なうことなく、安心・安全・スケーラブルなデータディスカバリー環境を実現することができます。
このように、SAP Lumiraでは、拡張性と信頼性を備えていることが大きな強みとなっています。
SAP Lumira活用例①:ビジュアル化データをクラウド経由で共有しディーラーを支援 ダイムラー・トラック・ノースアメリカ
最後に、SAP Lumiraを活用して成果を上げている事例を3つご紹介します。まず1つ目は、北米最大の中大型商用車メーカーであるダイムラー・トラック・ノースアメリカ社です。同社では、SAP Lumiraを活用してディーラーの担当地域(Area of Responsibility:AOR)における売り上げとポテンシャル分析を行い、その分析結果やレポートをSAP Lumira Cloudを通じてディーラーと共有し、ディーラー各社が効果的な営業やマーケティングを実施できるように支援しています。
2014年6月現在ではすでに21ディーラーへ展開済みで、2014年末までにさらに45社への展開を目指します。ディーラーの1つであるWaco Dealership社の部品マネージャー、David Guidry氏からは「この支援ツールは、最近15年で最も優れたものである」と、非常に高い評価をいただくことができました。
SAP Lumira活用例② 医療機器の予防保守を効率化 バリアン・メディカル・システムズ
2つ目は、売上高30億ドル、従業員数6500人を有する放射線医療機器メーカー、バリアン・メディカル・システムズ社です。同社の主力製品である「TrueBeam」の契約では、稼働率保証をしているため、機器の故障が利益率の悪化に直結します。したがって、どのパーツが故障するかを予測し、壊れる前に修理することが必要であることと、そのための作業をフィールドサービス組織内で標準化することが課題でした。そこで、SAP HANAをプラットフォームとしてSAP Lumiraと、3Dデータをビジュアル化するSAP Visual Enterprise、マシンログと故障の相関を見つける予測分析ツールSAP InfiniteInsightを導入しました。結果として、予測なしの場合に比べ、メンテナンス効率が圧倒的に向上し、予防保全率も大幅に向上したということです。
SAP Lumira活用例③ 現場のデータ活用とデータガバナンスの共存を実現 イーライ・リリー
3つ目は、米国の医薬品製造会社であるイーライ・リリー社です。同社では、早くからSAP BusinessObjectsを導入して、1万人を超えるユーザーがビジネスインテリジェンス(BI)のレポート作成及びモバイルでの利用を行っていました。しかしながら、現場サイドではよりクイックに、そしてローカルデータとコーポレートデータをマッシュアップした分析を行いたいという新しい要望があり、それによるユーザーの適切なデータアクセスなど、新たな対応に迫られていました。そこで同社はSAP Lumiraを導入。結果として、適切なデータガバナンスを確立しつつも、現場での迅速なデータアクセス及び意思決定が行える仕組みを構築することに成功しました。
SAP Lumiraの無償体験を皆様に
以上お伝えしましたように、SAP Lumiraを早期に導入されたお客様は、データディスカバリーの威力を実感されています。皆様にその使い勝手を確かめていただく目的で、SAPでは現在、無償版のSAP Lumira(データソース制限有り)とSAP Lumira Cloud(1GBまで無償)を提供しています。まずは実際に使っていただいて、ぜひUIを確かめていただきたいと思います。下記の手順書から、SAP Lumira無償版のインストールからデータの取り込み、分析までの一連の流れをご確認いただけます。
SAP Lumiraハンズオン手順書はこちら(無償版)
https://www.sapjp.com/blog/archives/resource/lumira_hands-on
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