【JSUG Leaders Exchange Interview】 「ゴルフ好き」を知り尽くした“センス”が問われるクラスター分析


42-59638718「JSUG Leaders Exchange」(以下、JSUG LEX)の参加企業の皆様から、所属企業におけるデータ活用についてお聞きする連載企画。前回に引き続き、ゴルフ関連の総合ポータルを運営する株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)の矢口未知彦氏に、ECビジネスを支えるIT部門のミッション、具体的な分析手法などについてお話をうかがいます。(聞き手:SAPジャパン 濱本 秋紀)。

データは「見えている」だけではダメ。分析軸を試行錯誤すべし

GDOさんは、「リテールビジネス(EC)」「ゴルフ場予約ビジネス」「メディアビジネス」という軸で事業運営されており、ここで蓄積されるデータをSAP IQによるDWHに蓄積しています。これらのデータを活用するための分析軸の設定や分析手法は、各部門に任されているのでしょうか。

矢口 基本的にはそうですね。彼らも自分たちの事業を「こう展開していきたい」といった目標を定めているでしょうから、こちらから特別な指示をすることはなく、各部門が独自に指標を設定するのが原則です。たとえばECサイトなら、ゴルフのクラブ・ギア、ウェア、アクセサリー、ボールといったように複数の商品軸があり、それぞれの商品軸で戦略と指標を立てています。ただし、現場ではどのようなお客様がどの商品を買っているかまで深く掘り下げる時間がありません。ですから、そうした現場で手が回らない分析軸に関しては、私たちでフォローしなければならないと思っています。

─現場では、ギア担当者が担当外のアパレル軸でのWeb閲覧や販売履歴などを見ることはできるのですか。

矢口 見ることはできます。ただし、忙しい業務の中で、ギア担当者がアパレル軸でサイト訪問回数や頻度などの分析までは手が回りません。もちろん、用意している分析メニューを使って、顧客属性、商品属性、売上などをクロス集計することは可能です。

─それでも250万人もの会員がいて、膨大なデータ が日々発生する中で、顧客属性や購買属性まで現場が確認するのは難しい気がします。

矢口 そうですね。ビジネスとしては、お客様がなぜこの商品を買ったのかまで把握することができれば、マーケティングの施策を打つことができるだろうという思いもあります。そこで、行動分析チームでくわしくデータを見たり、お客様のプロファイルを使ったりと、試行錯誤を重ねながら検討している段階です。

センスが問われるビッグデータのクラスター分析

─セグメントを切り分けながら横断的に分析を行うのは、個別のビジネスユニットの担当者というより、矢口さんの所属する情報活用推進部がメインとなっているということですか。

矢口 今のところは私たちがやっていますが、仕組みが完成したらビジネスユニットの担当者に渡してきたいと思っています。今は、踏み込んだ分析までは彼ら自身で対応ができませんので、私たちが試行錯誤しながらサポートしています。

─試行錯誤とおっしゃいましたが、現状の課題としてはどのようなことが挙げられますか。

矢口 B2Bのビジネスはビッグデータに馴染まないという声はよく耳にしますが、逆にネット企業であるGDOにはデータしかないので、ビッグデータが命です。ただし、お客様と直接対面できない分、お客様の姿を想像するのが非常に難しいです。お客様がサイトをいつ訪問し、どのページを見て、何を買ったかまではわかったとしても「最終的にこの商品をどういう理由で買ったのか」までは、購買データやアクセスログデータから追うことはできません。

ところが、リアルに店舗を持っているなど、エンドユーザーと接することができる企業は、どのようなお客様がどのような理由で何を望み、実際に何を購入したといったことが肌感覚でつかむことができます。あるいは、B2Bの企業なら営業担当者がお客様と相対して、ニーズや課題を直接聞くことも可能です。GDOの場合そうした情報を、データでしか追えないところに難しさがあります。

─日本企業ではデータに意味を持たせたがる傾向が多いと聞きますお客様と話すと肌感覚がわかるので、データがそれと合致すれば「やはりそうか」となりますし、合致しなかったら「データの前提が間違いだった」と考えてしまうリスクが潜んでいるように見えます。こうした点について、GDOさんではいかがでしょうか。

矢口 データから仮説を立てるのは、非常に難しい作業です。GDO社員には多くのゴルフファンが集まっているので、ゴルファーの心理はよく理解しているつもりです。しかし、ゴルフ専門の会社だけに「ゴルフ好き」というバイアスがかかってしまうことからは逃れられません。実際のユーザーには、ライトなゴルフファンもいれば、プロ並みのプレーヤーもいます。そのお客様にきめ細かなサービスを提供するとなると、どのような人たちが、どのようなニーズを持ち、どのようなサービスを望んでいるかといった仮説を立てなければなりません。私たちも日々考えてはいますが、データから仮説を立てる作業は相当難しいと実感しています。

─ビッグデータに関連して「データサイエンティスト」という言葉もよく耳にしますが、データサイエンティストがいれば仮説の立案やモデル作りも解決されると思いますか。

矢口 データサイエンティストの役割の範囲にもよるのでしょうね。マーケターの要素やスキルを持った人がデータサイエンティストなら、仮説を立てられるかもしれません。GDOでもクラスター分析を行って、顧客属性の把握に努めていますが、ゴルフを楽しむスタンスまではわからない。たとえば「春夏ゴルファー」とか「休みだけゴルファー」など、分析で出てきたクラスターにわかりやすいキャッチコピーを付けるようなセンスがあれば、皆でイメージが共有できるでしょう。

─実際にクラスター分析でGDOのユーザーをいくつかに分類しているのですか。

矢口 複数の軸で分析して、ユーザーを分類する方向で動いてはいるものの、まだ改善の余地はあります。ただし、仮説はたくさん出てくるので、これからは情報活用推進部と各ビジネスユニットが協力しながらデータを検証して施策を打つといった、PDCAサイクルを回すことをやっていくべきではないかと思っています。

─ありがとうございました。DWHに蓄積したデータ分析については理解できました。次回はERPのデータ活用についてお話をお聞かせください。

■略歴
矢口未知彦(やぐち・みちひこ)氏
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
情報活用推進部
DB開発・行動分析チーム

download_20141114_1032572002年大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社。経営管理(財務会計・管理会計)、原価管理、生産管理、営業改革等のプロジェクトを実施。2011年に株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン入社後、情報活用推進部にてSAP ERP及びBPCの導入・運用を手掛け、現在は同部署にてKPI設計、データ分析、行動マーケティングに従事。

 

 

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)