【JSUG Leaders Exchange Interview】 鮮度管理など、膨大なデータを扱う食品業界のデータ活用の課題


Woman selecting produce at supermarket, Perth, Australiaいまやビジネスにおける主要なIT課題の1つとなりつつある「ビッグデータ活用」ですが、実際にはそれ以前の「データの見える化」の段階で課題を抱えている企業が少なくありません。この連載企画では、IT部門のリーダー層が経営の価値を高めるITについて話し合う「JSUG Leaders Exchange」(以下、JSUG LEX)の参加企業の皆様から、「データ活用」に関するお話をお聞きしてきました。6回目となる今回は、野菜ジュースや調味料などの加工食品で消費者に親しまれるカゴメ株式会社 情報システム部の明心秀親氏に、食品業界ならではのデータ活用についてお話をうかがいます(聞き手:SAPジャパン 濱本 秋紀)。

食品業界ならではの膨大なデータを集約

─本題であるデータ活用についてお話をうかがう前に、カゴメは名古屋と東京の2カ所に本社があり、情報システム部も両方に置かれています。それぞれで役割の違いはあるのですか?

明心 カゴメ全体の組織体系の中で、情報システム部は人事、総務、SCMといった部門が集まる経営企画本部に属しています。私が所属する東京システムグループは「業務改革チーム」の位置づけで、システム開発の上流工程である基本構想、要件定義などを担当しています。一方、名古屋システムグループは「情報活用チーム」として、システムを利用する社員のヘルプデスク、システムの運用・監視、小規模なシステム改修などが担当となります。

─経営企画本部の一員ということは、他部門と比べても経営と近い位置づけになると思いますが、情報システム部ではどのようなKPI(業績評価指標)を掲げて業務を行われていますか?

明心 2014年は、経営層への企画提案、障害件数の削減、システム利用者の満足度向上の3つをKPIとして活動してきました。とはいえ、いかにして経営と密接に連携しながら、重要課題を解決していくかについては、まだまだこれからです。

─情報システム部と業務部門の連携についてはいかがでしょうか?

明心 東京システムグループの「業務改革チーム」は常に業務部門と一体となって活動しています。現場の課題に目を配りながら、私たちの側から「こうしてみたらどうでしょうか?」と提案することも多くあります。私自身、カゴメに入社してから4年間は卸売業担当の営業として北陸支店(当時は金沢支店)に勤務してから、情報システム部に異動となりましたので、もともとは業務部門の一員です。支店営業の時代は担当していた商品の動きしかわからなかったのが、情報システム部に来てからは、生産、物流、調達などの業務全体がわかるようになりました。

─カゴメはBtoCの加工食品メーカーとして、ケチャップ、ソースなどの調味料や、野菜ジュースなどの飲料の開発、製造、販売を手掛けています。加工食品業界におけるデータの種類や特異性はどこにありますか。

明心 BtoCとはいっても、カゴメの直接の取引先は卸売業者で、エンドユーザーである消費者に直接販売しているわけではありません。ですから、もっとも良く参照される売り上げのデータは、卸売業者への売上実績となります。その他には、在庫実績、出庫実績、需要予測に基づく計画データ、営業が取引先との商談やスーパーなどの店舗視察で得た営業上のさまざまな定性データ、各部門が立てた企画に対する採用見込みデータなどがあります。食品業界ならではのデータを挙げるとすれば、これらのさまざまなデータに、鮮度を管理するための製造日や賞味期限という明細情報が含まれることでしょうか。製品の原料となる野菜の情報、たとえば収穫時期ごとの品質なども業界特有のデータといえるかもしれません。

─データの種類ばかりでなく、量も相当多いようですね。それらのデータをすべて情報システム部が管理しているのですか。

明心 そうです。製造日まで管理すると、扱うデータはかなりの量になります。また、さきほど説明したデータはほとんどが社内で得られるものですが、正確な需要予測を立てるためには、卸売業者からさらに川下のサプライチェーン情報まで取得する必要があります。そこで、卸売業者から小売事業者への出荷データをいただいたり、小売事業者から店舗のPOSデータをいただいたりしています。それらを含めるとさらに膨大な量になります。

─これらのデータの活用に関しては、経営サイドから要望が出てくることが多いのでしょうか。それともボトムアップ式で提案するケースもありますか。

明心 両方ですね。カゴメは最近、海外事業や生鮮トマト事業など、新しいビジネスも積極的に展開しています。こうした新事業の立ち上げの際には、経営サイドから「情報システム部として参画して欲しい」というリクエストが下りてくる場合もあります。一方で情報システム部が現場の生の声を聞いて、部門の中期計画として経営層に提案をすることもあります。

属人化したデータ分析の改善とユーザー教育の重要性

─実際のデータ活用において、情報システム部はどのような役割を担っているのですか。

明心 業務部門と一緒に企画を立てながら、SAP Business Warehouseをはじめ、OLAPツール、定型帳票、Excelなど、何らかの形でデータを取り出して現場で活用するための環境を提供することが基本となります。

─社内におけるデータ活用の成熟度は、現在どのレベルにあると認識されていますか。

明心 業務部門からのニーズを受けて、蓄積したデータを見るためのシステムは構築されていますが、データを見て何らかの仮説を立てたり、データを組み合わせて分析したりするところまでは、組織的に対応できているわけではありません。部署や個人でデータ分析にチャレンジしようという動きは一部にはありますが、ある人が分析していることを別の人は知らない、分析を試してみてうまくいかなかったらあきらめてしまうといったように、それぞれが試行錯誤を繰り返している段階です。また、データ分析を行っていた現場の担当者が異動してしまうと、新しい担当者がまた別の分析方法を考えるといったことが往々にしてあります。結局、個人の意欲やスキルに依存しているのが現状です。

─これまでのデータ活用で、具体的な成功事例がありましたらお聞かせください。

明心 ある部署では、ある月の得意先の売上データと一般的な市場データを比較しながら仮説を立て、それをベースに商談を行ったケースがあります。たとえば、クリスマス時期の需要を掘り起こすための企画を立てる際、過去の売上データと市場データから商談を企画して、商戦が終わった後にその結果を検証するといった活動を行いました。その他の事例として、同じ商品を生産している複数の工場で、品質にどの程度の差があるかを分析し、現場力を高める活動に活かされた例もあります。

─こうした事例の中で、情報システム部はどのようなサポートを行っているのですか。

明心 「欲しいと思っているデータは、このシステムの中にあります」といったことを周知したり、Excelを使って複数のデータをどのように分析するかといった、データ活用のアドバイスに留まっています。その後のプロセスについては、やはり現場の担当者の個人知になっていて、共有されていません。この部分こそがカゴメにおけるデータ活用の最大の課題であり、今後はさらに踏み込んだ支援が重要だと思います。

─現在の状況を踏まえて、情報システム部はどのような方向で進もうとされているのでしょうか。

明心 データの分析活用については、人や組織に左右されることなく、共通の仕組みで取り組める環境を早く整えるべきだと考えています。今の時代は、過去のデータから次のことを考えているだけでは出遅れてしまいます。先のことを考える需要予測はますます重要になりますので、何らかの仮説立案のフェーズで情報システム部がもっと貢献できなければいけないと考えています。

─ありがとうございました。食品業界におけるデータ活用の難しさが理解できました。次回は具体的なデータ分析についてお聞きします。

■略歴
明心 秀親(みょうしん ひでちか)
カゴメ株式会社
情報システム部 東京システム グループ課長

781994年カゴメに入社。
4年間、営業パーソンとして、北陸地方の家庭用卸店、家庭用量販店を担当。
1998年に情報システム部へ異動。
営業を支援する情報システムの要件定義や設計を担当。
2000年に物流部門の窓口となり、SCMに関わる業務改革・システム構築を推進。
2009年から現職で、部内システム開発プロジェクトのマネジメント、成果物のレビューを担当。

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