【JSUG Leaders Exchange Interview】 需給計画の精度向上やデジタルマーケティング推進グループの新設など、カゴメが挑むデータ活用


Globe zucchini display in supermarket produce section「JSUG Leaders Exchange」(以下、JSUG LEX)の参加企業の皆様から、所属企業におけるデータ活用についてお聞きする連載企画。前回は加工食品大手のカゴメ株式会社 情報システム部の明心秀親氏に、食品業界におけるデータの種類とその特異性を説明いただき、同社におけるデータ活用の現状と課題をお聞きしました。今回は、需給計画におけるデータの重要性とビッグデータ分析に向けた取り組みについてお話をうかがいます。(聞き手:SAPジャパン 濱本 秋紀)。

需給計画の向上に営業データを活用

─前回、需要予測の精度向上に情報システム部がもっと貢献しなければならないというお話をうかがいました。現状は需要予測や需給計画の立案において、どのようなデータ活用が行われているのですか。

明心 カゴメでは需給計画、生産計画の業務にSAPのSCMソリューションであるSAP Advanced Planning and Optimization(SAP APO)を利用しています。需要予測はこのSAP APOに営業の販売情報を合わせて実行し、それをもとに出荷計画を作成しています。ただ、カゴメの商品構成自体が当時とは大きく様変わりして、特定の期間だけ販売される季節商品も増えていますので、以前と比べて需要予測が難しくなっています。

─食品業界における需要予測においては、ITを活用したデータ分析と経験知に基づく判断力のどちらが重要でしょうか?

明心 ITの力だけですべての答えが導き出されるとは考えていません。さまざまな情報とシステムに蓄積されたデータを見ながら、議論して決めるのが普通だと思います。データ活用で重要なことは、そのインプットとなる情報の正確性と、分析の手順を正しく理解し、臨機応変に使い分けていくこと、あとは意思決定のルールだと思います。正しい情報を使い、自分の都合の良い解釈をするのではなく、分析方法も固定したやり方だけに頼らない。そうしたスキルがなければ、通年の定番商品も季節限定の商品もすべてを画一的な分析軸でみなければならなくなってしまいます。

─LEXでの発表では、需要予測に基づく出荷計画の精度向上に向けて、企業別、アイテム別、日別の特売情報を利用している取り組みを紹介されていました。これについて、あらためてご紹介いただけますか。

明心 カゴメの営業には、卸売担当と店舗担当がいます。卸売担当の営業は問屋全体の管理と、直接フォローできない企業への配荷促進を行っています。一方、店舗担当の営業は新商品案内、売場提案、企画提案などカゴメ商品を売るための商談を行い、本部で決まった企画が各小売店で実施されているかをチェックすることが役割です。

その中で、私たちが卸売業者にどんどん商品を販売しても、その川下にある小売店から出ていかなければ商品は滞留してしまうので、店頭のデータを見ることも重要になります。そこで、支店の営業担当は商談した結果を「特売情報システム」に入力し、それをSCMシステム(出荷計画)に反映させています。さらに、各営業担当の商談結果や活動実績を日報形式で入力する「情報共有システム」を別途用意しておき、数値結果だけではわからない商談時の相手の感触を蓄積しています。最終的に、需要予測と特売情報、営業時の感触などを組み合わせて補正しながら、出荷計画を見直す取り組みを行っています。

─それによって出荷計画の精度は上がっていますか。

明心 なんとかやりくりをしている状態だと思います。カゴメの場合、取引先からの確定情報は前日にならないと入手できず、ほとんどが予測で動いています。その中で、さまざまな情報を補正しながら出荷計画を立てているのですが、特に最近は品目の傾向として、プライベートブランド製品や季節限定製品が多くなり、従来の需要予測では対応できていません。それだけに、特売情報や営業情報はなくてはならない貴重なデータです。

ただし、これらの情報を入力するのは営業担当です。つまり、入力の頻度や情報の精度は人に依存することになり、どうしても担当者個人の期待値や売りたい思いが反映されてしまいます。その結果、見込みが外れて、品切れや滞留につながったことが実際にありました。こうしたリスクを排除し、精度を高めるためには、それを見極める需給計画担当者の職人技が必要となり、誰でも利用できる標準化を目指した当時の目的からは乖離しつつある状況は否定できません。この点は、LEXで発表したときの参加者の反応を見ても、同業者は同じような苦労をされているようです。

ビッグデータをきっかけとして、経営層のパートナーとして役割を認識

─続いて、ビッグデータについてお聞きします。カゴメが具体的に取り組んでいるテーマ、あるいは関心のあるテーマはありますか。

明心 具体的な話はまだ出ていませんが、2014年に組織変更があり、マーケティング部門の中に「デジタルマーケティング推進グループ」が新たに設置されました。彼らとはWeb解析からはじまり、実際に店頭で購入するお客様とWebにアクセスしてきた人との販売実績を、どのように紐付けるかといった分析まで組織的に考えたいと話しています。これらは、情報システム部が普段から各部門とコミュニケーションを重ねる中で出てきた課題です。

─デジタルマーケティング推進グループでは、すでにSNS分析といったビッグデータ活用に向けた取り組みは始まっているのですか。

明心 ニュースにもなりました、アマゾンジャパンとの商品開発の事例はありますが、現状はビッグデータ活用と自信をもってご紹介できる事例は増えていません。購買履歴や検索キーワードから、ユーザーの商品ニーズを分析し、販促プロモーションに繋げる活動は行っていますが、ECサイトやプロモーションの世界では、一般的な活動に留まっていると思います。デジタルマーケティング推進グループとは、カゴメのデータ活用がなぜ進んでいないのかを議論しています。データを活用する以前に、「大量の明細データが自由に使える環境がほしい」とか「存在を知っていれば活用できる情報はたくさんあるのだろうが、自分に関係ないデータはどこにあるかわからない」など、データ活用に進む手前にも、課題がたくさんあるよね・・・という会話をしています。

情報システム部はどこにどのようなデータがあるかを一通り把握していますが、他部門のユーザーはデータがどこにあるかを知りません。たとえデータを取り出せたとしても、分析に必要のない余計な情報が含まれていることもあります。また、オープンデータや統計情報などの外部データは、基本的にカゴメ社内に蓄積されていません。

─ビッグデータの分析には課題も多いようですね。

明心 情報感度の高い社員の中には「こういう組み合わせで、こういう分析ができないか」とひらめく人もいます。しかし、具体的な手段がわからないこともありますし、Excel分析がベースになるので大量データを処理したらシステムが動かなくなって断念したといったこともあるようです。あとは、誰に話を聞けばデータ活用や分析について教えてくれるかわからないという声も聞きます。そのあたりの敷居を下げてあげないと、なかなか会社組織としてビッグデータの活用が進まないのではないかと思います。

─ソーシャル分析も直販分析も、こうした取り組みが活発化することで、商流そのものに一大変革をもたらす可能性を秘めています。こうした点について、経営層の皆様はどのように認識しているのですか。

明心 情報システム部とマーケティング部門で検討を重ねて、ようやく共同で経営層に提案をしはじめています。その中で「ビッグデータはうまく活用したいよね」という反応は返ってきました。ただ、ようやく経営層とそうした話ができるようになってきた段階で、本格的な議論はこれからです。

情報システム部はメインフレームの時代から基幹システムを構築して安定して動かすことが主な役割だと思われてきました。今はそれがようやく落ち着き、ここ2~3年の間で、新商品開発やマーケティングなど、今まで情報システム部が支援できていなかった領域で、どう貢献していくかを考えるようになっています。

その中で経営の右腕、パートナーとしてのコンサルティング的な役割を果たす意識が芽生え、情報システム部の中期目標として定め、取り組もうとしています。現在は取締役や本部長と課題を共有化したり、経営層が出席する会議に提案する機会を増やすことを、意識的に行っているので、ようやくデータ活用について経営層との距離が近くなっていることを実感しています。

─ありがとうございました。データ分析のハードルはまだ多いようですね。次回は基幹システムのデータ活用についてうかがいます。

■略歴
明心 秀親(みょうしん ひでちか)
カゴメ株式会社
情報システム部 東京システム グループ課長

781994年カゴメに入社。
4年間、営業パーソンとして、北陸地方の家庭用卸店、家庭用量販店を担当。
1998年に情報システム部へ異動。
営業を支援する情報システムの要件定義や設計を担当。
2000年に物流部門の窓口となり、SCMに関わる業務改革・システム構築を推進。
2009年から現職で、部内システム開発プロジェクトのマネジメント、成果物のレビューを担当。

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