CFOは事業推進の戦略パートナーになれるか?~事例で読み解く財務会計・管理会計の一体化【前編】


Businessmen in a Meetingこんにちは。SAPジャパンの中野です。企業のCFO(最高財務責任者)の役割は、単なる「財務数値の管理人」から「財務数値に基づく事業推進の司令塔」へと、その役割を大きく変えつつあります。このような要請に加えて、日本の企業は特に、グローバル展開に伴ってグループの会計基準としてIFRSをどのように自社の財務戦略に活かしていくか、といった課題も抱えています。このように複雑さが増す一方の課題に対し、何か解決の手がかりはないのでしょうか。

SAPはエンタープライズソフトウェア(システム)のサプライヤーですが、それと同時に多国籍で173超の現地法人、従業員6万5000人以上を抱えるグローバルカンパニーでもあります。実は、多くの大手企業と同じように、さまざまな財務面でのチャレンジに直面しているのです。SAPでは、これまで財務管理のあり方を常に追求してきており、CFOは「事業部門の戦略的なパートナー」になることを課題として認識してきました。SAPの開発部門はCFOから、これを実現するソリューション開発を要請されていましたが、10年以上にわたる検討の結果が、今、具現化しつつあります。例を挙げると、月次の締め処理からリアルタイム処理へ、組織変更の早期反映、財務会計と管理会計の一本化などです。

ここでは、SAPにおける財務管理の考え方の変遷と、SAP Simple Financeの自社への導入事例(55日間の移行プロジェクトとその成果)について、SAPドイツ本社の導入責任者であるヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)へのインタビューに基づきお話していきます。メッテはSAP Simple Financeを含む、SAP開発の新しい技術を自社に導入する責任者です。全2回の前編である今回は、SAP社内での財務管理の変遷をふまえた、CFOの役割変化とその課題について述べます。

*メッテのプロフィールおよび、聞き手側のプロフィールは、本ブログの最後に記載します。

SAP流財務管理ビジョンとは?

1972年にドイツで設立されたSAPは、1988年にドイツ証券取引所に上場、グローバル化とエンタープライズソフトウェア領域の拡大を目指し、2013年末現在では173超の現地法人、6万5000人の従業員を擁するグローバル企業となっています。中でも1990年代からM&Aを経営戦略に取り込み、その流れは2000年以降から加速、これまでに約60社の買収を実施しています。それと呼応するように、グループ全体における財務管理についても取り組んでおり、「管理会計の集中化」、「グローバルスコープでの購買・調達の共通化」を2005年までに実現しました。2005年以降には、集中化と共通化をより一層進展させるため、共通部分の切り出しである「シェアードサービス化」と、「グローバルでの業務標準化」を柱に据えた財務管理ビジョンを推進してきました。

テクノロジーがSAPの財務管理ビジョンを飛躍させた

そして2011年以降には、SAP HANAを導入し、新たなフェーズに突入しました。インメモリーデータベースであるSAP HANAにより、バッチ処理に頼らざるを得なかったERPやCRMの処理がほぼリアルタイムで実施できるようになりました。そして、財務データやその分析データに基づき、迅速な経営判断が可能になっています。具体例としては、従前は22日間程度を要した連結決算業務が8日間に短縮され、売掛債権回収が月末を待たずに月中でもできるようになりました。これにより、処理の効率だけでなく、意思決定の早期化や戦略見直しをいち早く実施できるようになったのです。なお、詳細につきましては、以下の記事をご参照ください。

参考記事:圧倒的スピードは間接部門の業務に変革をもたらすのか? SAP HANAが実証した5つの成果 — 会計業務編

また、アナリティクス技術やモバイル技術も重要な役割を占めています。どこにいてもリアルタイムでデータや情報にアクセスし、必要な分析を加え、洞察や予測を得ることができます。また、それに基づく意思決定やアクションが可能になります。これにより、SAPの財務管理能力が飛躍的に向上したのです。

現在、この取り組みは進行中で、「顧客中心主義」、「オペレーショナルエクセレンス」、「人と組織」というスローガンを掲げて、これらの実現に向けた仕上げに向かっているところです。

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CFOは事業部門の戦略的パートナー

このようにテクノロジーを活用することにより、CFO本来の責任である日々の会計処理、資金管理、ファイナンス、リスク管理、内部統制が今まで以上に効率的に実行できるようになります。つまり、リスク低減による企業資産の防衛と、厳格な財務オペレーションが効率的かつ効果的に担保されるようになるのです。また、それだけでなく財務オペレーションから得られた結果を今後の事業方針や運営に役立てるため、計画や構造化、分析、予測を行い、事業部門に対する積極的な洞察や示唆を与える、言わばビジネスパートナーとしての役割も果たせるようになります。さらにもう一段高い立場に立てば、企業全体の経営に対し、財務面からの戦略的方向性を与えることも可能になってくるのです。

これこそがSAPの考える新しいCFOの役割であり、今までの数字取りまとめ中心のCFOとはまったく異なる「戦略的パートナー」であります。そして、このような新しいCFOの役割を滞りなく進められるためのソリューションが、これから述べるSAP Simple Financeなのです。

SAP Simple Financeとは?

では、SAP Simple Financeとは何でしょうか。従来の財務オペレーションに関わるシステムやアプリケーションは、そのほとんどが技術的に分離したものであり、情報の重複やデータのサイロ化をもたらしていました。個別に利用している分にはいいのですが、それぞれを組み合わせて使おうとすると、数値の突き合わせや分断されたデータのつなぎ合わせが大きな障害になります。冒頭で挙げた、財務会計と管理会計の一体化をこれまでのテクノロジーで実現しようとすると、大変な作業が発生してしまうという状況でした。

そこでSAPでは、統合された単一の信頼できるソースに基づき、財務オペレーションを最も簡単に実現しようと考えました。それが、SAP Simple Financeです。これにより、世界中の会計部門やCFOが、あらゆる場所で即座にその瞬間の財務に関わるインサイト(洞察)を得られ、迅速な意思決定につなげられるようになるのです。

テクノロジーパワーを最大限に生かした最先端ソリューション~売上・利益への明確な寄与

なぜそれが可能になったのか。それは、先にもお伝えしましたが、テクノロジーの進化によるところが大きく、そのベースを支えるのがSAP HANAです。また、モバイルでの活用も前提で、そのために最適な表示技術(SAP Fioriなど)も実装されています。しかも、クラウドをベースとしているので、いつでもどこでもアクセスが可能です。利用にあたっては、事前に定義を行わなくてもレポーティング機能を活用できたり(オンザフライレポーティング)、直感的なインターフェースで簡単に活用できます。

その結果、SAP社内では、「締め処理の工数削減22%」「四半期決算での処理時間の短縮420時間」などをはじめとした、さまざまな業務効率化や処理の高速化が測られ、意思決定の迅速化にも繋がっています。

次回は、後編として、SAP Simple Financeの具体的内容とSAPにおける導入事例の詳細をご紹介します。

ヒアリングメンバーのプロフィール

【話し手】
■    ヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)
22年間にわたりSAP社内IT業務に従事。現在の所属部門は、社内IT部門の中のBusiness Innovation & Application Services Team。本チームは、SAPが開発した新しい技術(SAP HANAやモバイルテクノロジーなど)をSAP内部の業務で活かせるよう支援。
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【聞き手】

    吉田 祐馬
SAPサービス事業本部に所属。SAPに16年在席し、販売管理コンサルタント、CRMコンサルタントを経て、現在は、コンサルティングサービスの事業開発を担当。
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■    中野 浩志
SAPプラットフォーム事業本部に所属。SAP16年在席し、財務会計/財務資金管理コンサルタントなどを経て現在はAnalyticsのCoEを担当。
(米国公認会計士、公認内部監査人、公認情報システム監査人、公認不正検査士)
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■    高橋 正樹
外資系ベンダで企業向けミドルウェアのテクニカルセールスを経験後、同社にてITアウトソーシングや会計シェアードサービスの業務改革コンサルタントを担当。 SAP入社後は経営管理・経理財務向けソリューションのビジネス開発を担当しております。当ブログではIT部門だけでなく、経営企画や経理・財務などの業務部門の方が知りたい、また読みやすい情報の発信をしていきたいと思います。
Takahashi

■    佐々木 直人
監査法人でのシステムコンサルタント経験を経て、外資系ソフトウェアベンダーにて消費財、小売、サービス業のプリセールスを担当後、SAPジャパン入社。経理財務のお客様向けのプリセールスを担当しています。効率化だけでないITの使い方と導入効果を、経営企画や経理・財務などの業務部門の方が実感できるようにご提案していきたい、と考えております。
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