CFOは事業推進の戦略パートナーになれるか?~事例で読み解く財務会計・管理会計の一体化【後編】


High Angle View of Two Businessmen Standing and Talking to Each Other in an Officeこんにちは。SAPジャパンの中野です。前編・後編の2回にわたって、SAPドイツ本社のヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)へのインタビューをもとに、SAPにおける財務管理の変遷と、SAP Simple Financeの自社への導入事例についてご紹介しています。前編では、導入の背景についてお話しました。特に、CFO(最高財務責任者)の役割が事業部門の戦略的パートナーに進化しつつあることを述べました。今回はそのようなCFOの役割変化についてのSAP自身の取り組みとして、2カ月半のSAP Simple Finance導入プロジェクトの実際とその効果、メリットについて迫ります。

結論から申し上げますと、SAP Simple Financeの導入は、想像以上に大きなインパクトがありました。その特長は、①イベントトリガー(大型受注や請求、支払いなどのイベントをきっかけにすること)による締め処理の自動化、②組織変更反映の迅速化、③財務的洞察力の提供、④債権管理の効率化などです。特にグローバル企業や連結経営を行う企業の主要な財務管理課題に対して、有効な解決手段であることが実証されました。中でも、財務会計と管理会計の一体化は、CFOに深い洞察を提供。さらに、設定したKPI(主要業績評価指標)における定量的な改善、向上が見られたことで、プロジェクトの有益性も実感できました。また、システム導入に関わるIT部門からも好意的な評価を得ています。それでは早速、弊社の導入事例を通して、SAP Simple Financeの実際についてご紹介いたします。

*メッテのプロフィール及び、聞き手側のプロフィールは、本ブログの最後に記載します。

SAP HANAが創出する高速処理基盤

SAP Simple Financeの導入は、大きく2つのフェーズで実施しました。1つめのフェーズは、SAP ERPをSAP HANAへ移行させることでした。2013年の4月から8月の5カ月間で実施し、決算プロセスの早期化(決算処理時間の短縮)、債権管理の簡素化(債権回収期間の短縮)、リスク・コンプライアンス対応(取引のリアルタイムスクリーニングなど)といった業務上のメリットを実現しています。詳細につきましては、前編にも示しましたが、以下をご覧下さい。

参考記事:
圧倒的スピードは間接部門の業務に変革をもたらすのか? SAP HANAが実証した5つの成果 — 会計業務編
どうしてSAPの内部監査はアドバイザーになれたのか?~SAPグループ内部監査システム刷新事例~

SAP HANAを導入することで、処理速度が高まり、業務が効率化され、さらなる処理能力も担保されました。SAP HANAはSAP Simple Financeの重要な前提条件であり、これだけでも大きなインパクトが得られます。

SAP Simple Financeが生み出すさらなる簡素化

2つめのフェーズは、2014年2月から4月の約2カ月半の期間(実質55日間で)実施されました。先のフェーズでは、従来のERPにおける処理をSAP HANAで高速化したことがポイントでしたが、このフェーズでは唯一のデータソースであるNew GL(新しい総勘定元帳)とSAP Simple Financeに移行させることがポイントです。これにより、会計処理の仕組みがより一層簡素化され、組織変化などへの迅速な対応や、財務会計と管理会計の一体化が実現できたのです。

Picture2

4つのビジネス価値~パワーアップするCFO

ここで、SAP Simple Financeのビジネス面での価値について簡単にまとめます。いずれも、CFO業務の効率化・高度化をはかり、戦略パートナーたるに必要不可欠なものばかりです。

① イベントトリガーによる締め処理の自動化
② 組織変更反映の迅速化
③ 財務的洞察力の提供
④ 債権管理の効率化

①    イベントトリガーによる締め処理の自動化

多くの企業と同様に、SAPにとっても財務的な締めは月末で、その締めのスケジュールにあわせて世界中の拠点から財務関連データが集まり、それを夜間バッチで処理するのが通例でした。また、最終的な集計結果が分かるまでに数日を要するため、それに基づく意思決定やフィードバックを迅速に行えないことが課題でした。SAP Simple Financeでは、月末を待つことなく、大型請求などの目立ったイベントが発生するたびに、いつでも締め処理を実施できるようになりました。極論を言えば、いつでも最新の状況が反映された財務データにアクセスすることができ、それに基づく迅速な対応が可能になったのです。KPIとしては、締め処理工数22%の削減見込み、処理時間28%の短縮、四半期で見ると420時間の短縮という効果が得られました。

②    組織変更反映の迅速化

組織においてやっかいな事象が組織変更です。企業の活性化や市場の状況に合わせ、組織変更を繰り返すことは企業が生き残るために必須ではありますが、その影響をきちんと分析・把握するには手作業などの例外処置を必要とします。SAP Simple Financeにおいては、組織変更の影響を予測シミュレーションなどを用いて簡便に分析・把握することができ、従来は1週間要していた組織変更への対応時間を、1日に短縮させました。

③    財務的洞察力の提供

株主や債権者などの外部の利害関係者に情報提供を行う目的の財務会計と、経営者や企業内部の管理者に情報提供を行う目的の管理会計は、内容が大きく異なります。その整理や分析視点も異なるため、一元管理することは容易ではありませんでした。それぞれのベースとなる基本データセットに差異があるからです。しかし、すべては一つの企業活動から生まれてくるものです。SAP Simple Financeではこの問題を解消し、原点となる一つのデータを元に財務会計、管理会計のいずれにも共通で対応ができるようになりました。

また、従来は分析レポートも事前に定義しておかなければならなかったのが、SAP Simple Financeでは気になったデータに着目し、その場その場で次々と分析を加えていけます。このように、CFOにとって制約のない分析能力を提供します。予測シミュレーション機能を用いれば仮想決算処理が可能になり、事業継続性の先読みやM&Aなどの大型投資に関する投資判断なども容易にできるようになったのです。さらに、SAP Lumiraというデータディスカバリーツールで、直感的でわかりやすい予実分析・管理も実現できました。このような効果から、資金最適化と費用削減により利益率が向上しています。

④    債権管理の効率化

従来の債権回収は月末基準で問題債権を管理してきたので、月末を待たなければ問題としてのアラートが出てきませんでした。また、債権回収部門から出てきたリストに基づき回収事由などに関して営業部門と打ち合わせ、営業部門が顧客に回収依頼を行い、その行為を債権回収部門にフィードバックするというシーケンシャルな流れになっていたため、回収までの手間と時間がかかっていました。SAP Simple Financeでは、リアルタイムで問題債権が特定され、債権回収部門、担当営業部門へ即座にアラートが届きます。システムからのアラートと同時に回収事由も営業に伝達されるため、債権回収部門との打ち合わせの必要もなく顧客へのフォローが可能になり、そのフィードバックもシステムを通じて行われるので、すべてがスムーズに回ります。この仕組みにより、売掛金回収期間が10%短縮されています。

以上のような特長に基づき、それぞれのKPIについて、明確な改善が得られたのです。

Picture3

SAP Simple Financeの具体的な利用イメージについて動画がありますので、以下をご参照ください。

IT部門にも優しいSAP Simple Finance

これまで、CFOや財務管理にとっての有益性を述べてきましたが、こういったソリューションの導入にはIT部門の理解や協力なくしてはできません。では、IT部門にとってのメリットは何なのでしょうか。

弊社の導入では、以下の3つのメリットが得られたことをお伝えしておきます。

① データベース容量の著しい削減
② アドオンプログラムの削減
③ 想定よりスムーズだった移行プロジェクト

①    データベース容量の著しい削減

SAPにおいては、プロジェクト開始前の必要データ格納領域が7.1TBでした。プロジェクト開始後は厳格なデータ管理(要不要の整理など)や、SAP HANAによるデータ圧縮効果、プログラムコードの大幅な簡素化などによって、最終的には500GBになる見込みです。なんと約93%の削減で、TCO削減に大きく寄与しています。

②    アドオンプログラムの削減

旧バージョンから積み重ねてきた多数のアドオンプログラムは、SAP Simple Finance導入時に必要性を見直すことによって、約80%が不要になりました。通常システムの移行時には、アドオンプログラムの修正業務が発生するのですが、残った20%のアドオンも、このシステムではほとんど手を入れずに済んでいます。

③    想定よりスムーズだった移行プロジェクト

当初2カ月半を見込んでいた第2フェーズは、実際は55日間で完了しました。移行プロジェクトは長くなることはあっても、短くなることは少ないですので、いかにSAP Simple Financeが文字通り「シンプル」なのかが想像できると思います。実際に導入を行う企業のIT部門の方々にとっては、朗報と言えましょう。

SAP Simple FinanceとSAPの今後の目指す方向性

SAP Simple Financeは、まだ緒に就いたばかりです。ここで終わりではなく、実はまだ旅の始まりなのです。今後はさらに、ダッシュボード化や新機能の追加、メモリー領域の圧縮を進め、その先にはより一層の柔軟性と順応性、簡単でスマートなシステムとしての進化を目指しています。

また、SAPグループは業績着地予想の精度向上や3カ月後PL/BSによる意思決定支援などにSimple Finance活用範囲を進化させる計画です。たとえば、受発注データや案件管理データを統合することで直近業績の確からしい見込み値のベースラインや将来PL/BSを自動的に生成し、高精度の着地予測や為替・失注などによる損益インパクトを早期に把握し、打ち手に繋げられるよう準備を進めています。

Picture4

以上で、SAP Simple Financeで財務管理をリアルタイムで可視化し、洞察力を高め、CFO業務の戦略性を向上させる、事業部門の戦略的パートナーたるということがおわかりいただけたのではないかと思います。SAP自社導入の事例が少しでも参考になれば幸いです。大規模組織やグループ企業における財務管理パフォーマンス向上に問題意識を持つ方々にとって、検討いただける余地が大きいものと思っておりますので、ご関心のある方は、以下のお問い合わせ先までご連絡ください。

関連記事:会計業務をグローバルにシンプル化する~次世代会計基盤SAP Simple Finance

ヒアリングメンバーのプロフィール

【話し手】
■    ヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)
22年間にわたりSAP社内IT業務に従事。現在の所属部門は、社内IT部門の中のBusiness Innovation & Application Services Team。本チームは、SAPが開発した新しい技術(SAP HANAやモバイルテクノロジーなど)をSAP内部の業務で活かせるよう支援。
Joachim Mette

【聞き手】

    吉田 祐馬
SAPサービス事業本部に所属。SAPに16年在席し、販売管理コンサルタント、CRMコンサルタントを経て、現在は、コンサルティングサービスの事業開発を担当。
photo

■    中野 浩志
SAPプラットフォーム事業本部に所属。SAP16年在席し、財務会計/財務資金管理コンサルタントなどを経て現在はAnalyticsのCoEを担当。
(米国公認会計士、公認内部監査人、公認情報システム監査人、公認不正検査士)
untitled

■    高橋 正樹
外資系ベンダで企業向けミドルウェアのテクニカルセールスを経験後、同社にてITアウトソーシングや会計シェアードサービスの業務改革コンサルタントを担当。 SAP入社後は経営管理・経理財務向けソリューションのビジネス開発を担当しております。当ブログではIT部門だけでなく、経営企画や経理・財務などの業務部門の方が知りたい、また読みやすい情報の発信をしていきたいと思います。
Takahashi

■    佐々木 直人
監査法人でのシステムコンサルタント経験を経て、外資系ソフトウェアベンダーにて消費財、小売、サービス業のプリセールスを担当後、SAPジャパン入社。経理財務のお客様向けのプリセールスを担当しています。効率化だけでないITの使い方と導入効果を、経営企画や経理・財務などの業務部門の方が実感できるようにご提案していきたい、と考えております。
sasaki

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)