グローバル化待ったなし!日本の化学業界――第1回:避けて通れない「標準化」


SAPジャパンの中谷です。日本企業にとってグローバル化が大きな課題であることは言うまでもありません。しかし、過去の経緯を振り返ると、決して容易ではないことも事実です。だからといって、今後ますます世界規模の競争が激化していくなかで、日本企業がこのまま手をこまねいているわけにはいかず、化学業界も例外ではありません。そうした背景のもと、当連載でも以前に日本の化学業界のグローバル化について、各種オペレーション・機能面から取り上げたことがあります。

参考:化学業界が直面するグローバル・サプライチェーンの課題と克服の手段とは?

今回は、真のグローバル化に向けて、より包括的な問題提起を行うとともに、3回シリーズでその解決の道を探っていきたいと思います。なお、グローバル化は大手企業だけの課題ではなく、中堅企業にとっても避けられない課題であり、その点についても触れていきます。1回目の今回は「標準化」をテーマにお届けします。

グローバル化の3形態とは

View of refinery plant against blue backgroundアベノミクス第1幕に続き、第2幕の幕開けとなっていますが、ここまでの成果を見てみると、国内経済は良くも悪くも海外需要に引っ張られる形で成長しており、今後も同様のシナリオで進むことが予想されます。そうしたなか、ほとんどの化学上場企業は中期経営計画に、「グローバル化」「新興国市場への重点投資」などを中心とした、海外売上・生産比率向上による収益・利益の拡大戦略を掲げています。まさに化学業界では、グローバル化を活用しながら、いかに持続可能な企業活動を続けるかが大きな課題と言えるでしょう。

では、それぞれの企業はグローバル化にどのようにして取り組んでいるのでしょうか。グローバル化の取り組みの形態としては、大きく分けて、以下の3つに分類できます。

  1. 現地法人主導型
  2. 国内・現地法人協調型
  3. グローバルトップダウン型

1. 現地法人主導型
生産拠点が日本にあろうが、海外にあろうが、現地法人がイニシアチブを取り、海外売上比率を伸ばす形態です。海外現地法人が市場情報を把握し、ハブとなって事業を展開(営業)します。なお、多くの場合、現地法人は複数の事業部を掛け持ちしています。

2. 国内・現地法人協調型
「現地法人主導型」の変形で、国内事業部もしくは傘下のグループ会社がイニシアチブを取って展開する形ではありますが、現地法人の裁量権比率が高いのが特徴です。

3. グローバルトップダウン型
販売・生産拠点を世界中に展開し、本社または地域本部が事業部を中心に管掌事業を統率する形態です。グローバルで統一されたガバナンスを擁し、現地法人を含めた一体経営を実施します。

目指すは「グローバルトップダウン型」

日本の化学会社のほとんどは、現時点では「現地法人主導型」か、「国内・現地法人協調型」のところが多いように思います。大手化学会社においても、「国内・現地法人協調型」からなかなか先に進んでいないように見えます。

一方で、海外のグローバル大手化学企業には、「グローバルトップダウン型」が多く見られます。この方式は、標準化などを含めた管理コストはある程度大きくなるものの、経営環境変化への対応力が高く、M&A後の経営統合にも威力を発揮し、何よりもリスク管理能力が高いのが特徴です。

もちろん、事業内容や規模、展開方向、戦略などにより状況は異なるため、必ずしも「グローバルトップダウン型」でなければならないということはありません。しかしながら、世界をリードするBASF社やBayer(バイエル)社などのグローバル化学会社は、すでに「グローバルトップダウン型」を採用しており、多くの大規模会社がこの方向に向かっています。実際に、グローバルトップダウン型を目指せば目指すほど、よりグローバルに統合された経営手法を取り入れざるを得ない、ということでしょう。ただし、そのためにはITを経営基盤としてフル活用することが必須であり、実際にそのほとんどがSAPのERPを中心としたソリューション群を活用しています。

事例:徹底した標準化・集約化

具体的な事例を見てみましょう。BASF社では、市場、商品、経営機能の多様化を見越し、早くから「統合」をキーワードに、経営管理の標準化・集約化を行ってきました。90年代終盤には個社ごとの管理システムをアジア、欧州、米州の3極に集約し、キャッシュフロー経営を大幅に前進させました。その後2000年代に入り、3極間のグローバル共通基盤を整え、コード体系の統一、グローバルKPIの設定など、グローバルにおける経営管理の礎を作り、M&A後の経営統合をスムーズに行える基盤を構築しました。現在では、3極のシステムをすべて標準化し、1つのグローバルシステムにまで昇華させ、グローバルベストプラクティスの標準化に取り組んでいます。グローバル化学業界ではそのIT基盤として、SAP HANAの活用を計画している会社が少なくありません。

ここで重要なポイントは、まずITありきではなく、もともと経営管理の標準化・集約化を進めていたことにあります。取り組みを進めるにつれ、データの処理量が急増したことから、ITの活用が必須になったということでしょう。現在はSAP HANAによる高速処理により、複雑多岐な経営管理を実施しています。

Bayer社においても、グローバル企業同士の取引が多岐にわたることから、CRM(顧客関係管理)をグローバル1システムで導入し、SAP HANAを基盤として運用しています。これにより、すべての事業部門担当者が重要顧客との取引状況をグローバルに即座に確認できるようになり、効率と顧客満足度の向上につなげています。

標準化なくしてグローバル化は困難

こうした海外のグローバル大手化学企業の取り組みからも分かるように、日本の化学企業がこれらの企業と伍していくには、やはり抜本的な取り組みを今すぐに始める必要があります。そうでなければ、その差はどんどん開いていくことになるでしょう。なかでも最も重要な取り組みが「標準化・集約化」であり、それを踏まえたITの活用が不可欠だということです。とはいえ、一口に標準化といっても、何から手をつけるべきか、迷うところです。次回は、このような問題意識に基づき、「克服すべき3つの課題」というテーマでお話したいと思います。

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