【JSUG Leaders Exchange Interview】 多種多様な総合商社のビジネスを支えるITへの期待


274472_l_srgb_s_glSAPジャパンのユーザー会であるJSUGが開催している「JSUG Leaders Exchange」(以下、JSUG LEX)の第6期の活動が5月から始まりました。今回は第6期の世話役を務める三井物産株式会社 IT推進部ITプロジェクト支援室 室長の小笠原裕氏に、三井物産のビジネス、IT部門の果たす役割、総合商社ならではのデータ活用について、たっぷりとお話を聞きました(聞き手:SAPジャパン 濱本 秋紀)。

本社のIT推進部がグループ会社のIT戦略を包括的に支援

─まず、ご自身が所属するIT推進部 ITプロジェクト支援室についてお聞かせください。

小笠原 IT推進部 ITプロジェクト支援室は、三井物産グループの営業部門・関連会社のIT全般を支援する部署です。当社のグローバルネットワークは現在、67カ国・地域にまでおよび、事業所数は151拠点、連結決算の対象となる関係会社数は410社にのぼります。

─グループ各社のITニーズと本社IT部門をうまく繋げる役割ということですね?

小笠原 幅広い事業を網羅する総合商社ならではの特性もあり、とにかくさまざまなケースがあります。ここ数年の傾向として見られるのは、投資サイクルの短縮化です。関係会社を短期間に立ち上げ、ビジネスの状況に応じて撤収する動きに迅速に対応できないと、時代の変化に対応できなくなります。一方、事業の内容はグループ会社によって大きく異なるため、標準化や共通化が図りにくい点も総合商社の特徴です。IT推進部も、環境変化に合わせて多くの関係会社をITで支援することが期待されており、そのための窓口がITプロジェクト支援室です。

─グループ会社側にもITを担当する方々がいらっしゃるのですか?

小笠原 はい。三井物産は1990年代まで、事業特性を生かすために分散型の経営を進め、ITも個別に運用してきた経緯があります。ところが、エンロン事件などをきっかけに内部統制が求められるようになり、集中管理型の体制へと転換して、2004年にはSAP ERPを導入しました。しかし、グループ内のITをすべて標準化してしまっては、商社としての強みが薄れてしまいます。その中で、差別化と標準化のバランスを保ちながら、グループ会社のIT部門と連携して、全体の方針を舵取りしていく役割を担っているのがIT推進部です。その中では、個々の強みを生かしながらも、セキュリティに関する問題などは中央集権的にコントロールしていくことも重要です。

─実際、IT推進部とグループ会社のIT部門とでは、どちらがイニシアチブを取るのですか?

小笠原 資金を出して、利益を生み出し、最終的な責任を持つのは事業部門ですから、イニシアチブを担うのは基本的にはグループ会社です。グループ全体を同じ枠にはめ込むことで、グループ各社の強みが削がれてしまっては意味がありません。ただ、個別にやっていたら非効率な部分もあるので、共通領域はIT推進部が統括するといった棲み分けになっています。また、三井物産のIT推進部には、別セクションとしてR&Dを行う「技術統括室」があります。技術統括室は世の中の新しい技術やソリューションを広く俯瞰しながら、その価値やリスクの検証など技術面での目利きを行っています。

─予算を割いてまでR&D部隊を設けて活動している企業は、なかなか珍しいですね。

小笠原 こうした点も、多種多様な事業を手掛ける総合商社ならではかもしれません。システム導入については、現業を理解しているグループ会社に任せるのが基本ですが、何をどのように使うかといった事前段階での検証は、私たちが情報集約しようという考え方です。事業部門の役割はビジネスを回すことなので、調査研究には時間やお金をかけられません。その中で現業から離れた視点で、最新のIT技術を見極める部門の存在は重要だと思います。

─逆に言えば、IT部門側が現業を理解することも重要ということですね。

小笠原 その通りです。IT推進部全体として、常に現業のビジネスを理解しながら相乗効果を上げていくことを目指しています。

人と人とをつなぎ「バリューチェーン」を生み出す総合商社

─三井物産が目指す理想のITを知るうえで、はじめに総合商社の業務形態について教えていただけますか?

小笠原 そもそも総合商社の業務とは、世の中のニーズに応じて、国やお客さま、人やモノ、事業や情報を「つなぐ」ことが中心にあります。例えば、世界各国と協力して、石油や天然ガスといったエネルギー資源を開発することもその1つで、資源開発を求める地元の政府や自治体、周辺住民やそこで働く人々など、多くのステークホルダーを意識して働きます。また、石油や天然ガスを採掘するだけでなく、それを運ぶための船の開発、運用なども総合商社の役割です。この他、世界各国の水道、ガス、発電所、鉄道といったインフラ整備など、新興国の生活レベルの向上を支援するといった事業にも、総合商社がさまざまな形で貢献しています。

─こうした総合商社の仕事が生み出す価値はどこにあるのですか?

小笠原 まず挙げられるのが、人と人とのつながりから生まれる「バリューチェーン」です。材料となる資源の開発、調達、供給、製品の生産や加工、販売、流通、物流など、総合商社は必要に応じて事業のさまざまな段階に関わります。その中には、金属、化学品事業での材料確保もあれば、自ら製造会社を立ち上げて生産に関わることもあります。さらには製造したものを売るために販売網を全世界に広げ、物流を通じてお客様に製品を届ける。これらの工程すべてで総合商社が関わっています。身近なところでは、コンビニエンスストアを支えているのも総合商社です。物流だけでなく、原料の調達や商品の生産、受注管理、商品開発といった裏側をバリューチェーンで支えています。

─その中で、三井物産は主にどのような領域で活躍されているのですか?

小笠原 「金属」「機械・インフラ」「化学品」「エネルギー」「生活産業」「次世代・機能推進」の6事業です。そして、商社の総合力を「マーケティング」「ファイナンス」「ロジスティクス」「リスクマネージメント」「IT・プロセス構築力」の5つの機能によって実現しています。マーケティング機能で世界各国から情報を収集し、強力なファイナンス機能で事業に必要な資金を調達する。物資や製品はロジスティックス機能を駆使してお客様に届け、リスクマネージメント機能で取引相手や事業リスクを見極める。さらにITの力で事業を最適化・効率化していくわけです。それらの取り組みを、12の営業部門が世界4極で連携しながら総合的にビジネスを行っています。

一般的な投資事業では、むしろ現場にタッチしないことが多いように思いますが、総合商社はまさにビジネスのプロデューサー的な存在ということですね。

小笠原 確かにそうですね。いずれにせよ、さまざまな分野の専門家がいて、そこで収益を挙げることをビジネスとする集団ということですね。そのためには常に多方面にアンテナを張り、市場のニーズを敏感にキャッチすることが私たちに課せられた役割だと言えます。

─ありがとうございました。総合商社のビジネスモデルと ITの役割が理解できましたので、次回は三井物産で実践されているデータ活用についてお話をお聞かせください。

 

■略歴
小笠原裕(おがさわら・ひろし)氏
三井物産株式会社
IT推進部 ITプロジェクト支援室長

Profile Photo1988年三井物産に入社。3年半化学品部門にて企業間オンライン受発注システムの開発・ユーザー展開業務を担当。1991年に営業部門に異動、工業用フィルム・熱可塑性樹脂など合成樹脂の取り扱い業務を行う。2001年より上海・マレーシアの化学品製品加工会社に出向、経営・営業・工場管理全般に携わり、現地でのERP入れ替えプロジェクトを実行した。
2010年に帰国後、現在の部署に異動となり、営業部門・関係会社のITプロジェクトの支援業務を担当中。

 

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