【JSUG Leaders Exchange Interview】 データ連携によって意思決定の高度化を目指す総合商社のデータ活用とは?


274471_l_srgb_s_gl「JSUG Leaders Exchange」(以下、JSUG LEX)の参加企業の皆様から、企業価値向上を支えるデータ活用についてお話をうかがう連載特集。前回は、三井物産でIT推進部ITプロジェクト支援室 室長を務める小笠原裕氏に、総合商社のビジネスモデルで求められるITの役割についてお聞きしました。今回も引き続き、多種多様な事業を手掛ける同社におけるデータ活用の意義についてうかがいます(聞き手:SAPジャパン 濱本 秋紀)。

データはあくまで傾向値であり、判断材料の1つにすぎない

―今回は総合商社におけるデータ活用の特性についておうかがいしたいと思います。世界中に多くの事業やグループ会社がある中で、グループ全体で整合性の取れたデータを取りまとめるのがすごく難しそうな印象があります。

小笠原 はい、そうですね。マスターデータという観点では、三井物産単体での統合はすでに完了しています。グループではグループのマスターは共通化しつつあるものの、それぞれでミッションや取り扱い製品が異なる中では、単一のマスターで対処することは非常に困難です。連結決算の際も、勘定コード等が異なる場合、連結用に別途データを集約して、データの整合性を確保しています。業態が複雑化しているがゆえの、データ集約の難しさは常に感じています。

―総合商社におけるデータ活用の課題としては、どういったことが挙げられますか。

小笠原 当社のビジネスは「KKD(勘・経験・度胸)」にかなり依存してきた部分があります。データ解析の手法を使うことよって、ある程度は分析結果の裏付けを背景に意思決定が下せるのではないかということを期待しています。ただし、データはあくまで傾向値であり、判断材料の1つですから、KKDを完全に排除することはできません。意思決定をする人間の判断が重要になる中で、少なくとも「見える化」を実現することによって、意思決定の属人化やばらつきを防ぐことができるのではないか、と考えています。

―「見える化」の実現は現時点ではどの程度進んでおられますか?

小笠原 SAP ERPのデータについては、「見える化」を実現するための基本的な環境は整っていると考えています。ただ、基幹システムとは元来、意思決定が行われた結果が蓄積されるものですから、そう考えると意思決定前の膨大な情報をどうするかが大きな課題です。ビッグデータとまでいかなくても、SAPで扱っていないデータをどう統合するかが難しい問題です。

―グループ会社からは、データ分析で売上げを伸ばしたいといった相談やリクエストが寄せられることもあるのでしょうか?

小笠原 もちろん、ありますよ。ただし、現在は各グループの手元にあるデータからしか判断ができない状況です。しかも、業務内容が多岐にわたる三井物産の場合、グループ全体のデータ集約もそう簡単には進みません。たとえば、穀物の相場を分析することと、化学品のエチレンの相場を分析することを同じ土俵で議論できないのが現実です。しかし、もしかしたらある業界では穀物やエチレンの価格に密接な相関関係があるかもしれず、そうなるとグループ間の関連性がビジネス的に大きな価値を生む可能性があります。今までの常識では関係ないと思っていたことでも、つながることで新しい価値が生まれることを真剣に考えていく必要性は認識しています。

―つなげることでこれまでにない価値を創出する、なかなか深い話です。

小笠原 雲をつかむような話ですが、それぞれの部署単位で分散された情報が何らかの意味づけを与えられて活用できるとしたら、まさにイノベーションを生み出す大きなチャンスです。

グループ共通の情報プラットフォームでデータを一元化

―分散された情報は必ずしもDBに保存されているような情報とは限りませんから、それを収集して活用レベルまで統合していくのは大変ですね

小笠原 そうですね。分散しているデータを集約するのは簡単なことではありません。取り扱いに注意を要する情報もあれば、誰でも使えるパブリックな情報もある。それを線引きしながら集約するとすれば、大変困難な作業です。特に三井物産のような業態は、宝物のような価値を備えたデータがあちらこちらに眠っていると考えられます。やや気が遠くなりそうな話ではありますが、それらのデータを活用する方法は、これから考えていかなければならないことです。

―グループ共通のプラットフォームの構築に関してシステム要因以外の障害などはありますでしょうか。

小笠原 三井物産はSAP ERPを導入した当初から、グループ間におけるデータ共有の意識は高く、業績評価の面からもバックアップしていますのでグループ間、部署間連携の壁は比較的低いです。それでもまだ、意識して情報を共有化しなければ「私属化」してしまっている情報は集約できそうにありません。

―いろいろなご苦労がありそうですね。貴重なお話ありがとうございました。

次回は、データ活用のポリシーを踏まえ、データの活用に関する課題、現状、将来展望についてうかがいます。

■略歴
小笠原裕(おがさわら・ひろし)氏
三井物産株式会社
IT推進部 ITプロジェクト支援室長

Profile Photo1988年三井物産に入社。3年半化学品部門にて企業間オンライン受発注システムの開発・ユーザー展開業務を担当。1991年に営業部門に異動、工業用フィルム・熱可塑性樹脂など合成樹脂の取り扱い業務を行う。2001年より上海・マレーシアの化学品製品加工会社に出向、経営・営業・工場管理全般に携わり、現地でのERP入れ替えプロジェクトを実行した。
2010年に帰国後、現在の部署に異動となり、営業部門・関係会社のITプロジェクトの支援業務を担当中。

 

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)