【JSUG Leaders Exchange Interview】 データを“意思決定”の武器にする


Close Up of Businessman's Hand Holding a Pen前回は、第6期「JSUG Leaders Exchange」(以下、JSUG LEX)の世話役を務める三井物産の小笠原裕氏のインタビューから、多様なビジネスを展開する総合商社のデータ活用における、グループ内の情報連携の重要性についてご紹介しました。今回はさらに踏み込んで、意思決定に貢献する情報活用の可能性について、引き続き同氏からお話をうかがいます(聞き手:SAPジャパン 濱本 秋紀)。

多様な情報の活用で、意思決定のリスクを低減

―最近話題になることが多いビッグデータ活用については、どのような可能性を感じていらっしゃいますか。

小笠原 当社でも社内外の多様なデータを元に、「予測分析」を実際のビジネスの意思決定に活用する試みが行われています。ビッグデータという言葉はいろいろな使われ方がされていますが、最終的に人間が判断を下すために、「KKD(勘・経験・度胸)」に加えて、定量的・定性的な判断材料を与えるのが情報であり、その一つがビッグデータだと思います。

―未来を予測するための判断材料を集めるということですね。

小笠原 私自身、化学部門の製造系関係会社で生産管理の業務を担当していたことがありますが、販売予測の精度の重要性を痛感しました。どの製品がどれだけ売れるかを予測して生産計画を立て、それに基づいて各種材料を発注するのですが、製品の製造にそれぞれリードタイムが2カ月必要とすると、在庫期間を考慮して4カ月前には材料を手配しないといけません。その際に、この製品は過去にどういう販売のされ方をして、季節的な傾向はどうであったかという判断材料がないと、欠品や過剰在庫につながるのです。

―予測といっても、人によって捉え方がさまざまです。たとえば、システム的に2カ月先の需要が予測できたとしても、現場の担当者がその予測に基づいて発注するかは、また別の話だと思います。

小笠原 データから見えてくるのはあくまで過去の傾向であり、未来の結果が100%保証されるわけではありません。ですから、現段階では人間系の判断で裏読みをしながら微調整を行う必要があります。その意味で考えるとデータ活用とは、人間が意思決定をする際に、より精度の高い判断を下すための補助資料という意味合いが強いと思います。

最新テクノロジーの価値をビジネスに還元する社内カルチャー

―これまでのお話を聞いていると、三井物産の中ではデータ活用の可能性は無限にあるように思えます。

小笠原 たしかに投資系の業種もあれば、モノづくりの業種もあり、データ活用のバリエーションは広いと思いますが、それゆえに一元的なルールが定めにくい面も否定できません。実際、現場のあちこちには生きたデータがあるにもかかわらず、それを活用できていない現状があります。これらを集約して新しいことに使えるようにしていくことが競争力につながることは理解していますが、いざ誰がやるのかということになると難しい問題です。

―とはいえ、御社内にはR&D部門があり、SAP製品もいち早く検証されるなど、最新テクノロジーでビジネスに貢献していくカルチャーが根付いていることには常々感心しています。

小笠原 IT部門としては、ビジネスに役立ってなんぼですからね。実際にお金を稼いでくるのは営業部門であり、特に関係会社です。三井物産の収益はグループ会社が支えているといっても過言ではなく、ITの利活用によりビジネスの現場に貢献できるような提案をすることが重要なことであると思います。

―それこそが御社のカルチャーだと強く感じます。この連載でも何度も話題に出ているIT部門の役割ですが、現在のシステムの保守運用だけに追われている企業も多いと聞いています。

小笠原 三井物産では現業、すなわちビジネスで利益を上げる部門とIT推進部との間口を広くすることはかなり意識していますね。それは人事交流にも反映されていて、IT推進部の人間が営業に出てそこからまた戻ってくるという文化や、営業からIT推進部で修業を積んでまた現業に戻っていくという制度があります。私のように長く営業畑にいた人間が、現業で感じたことを伝えながらIT推進部でやっていく。そういう意味での人事交流は大事だと思います。

―現業からIT部門に移った時は大変ではなかったですか? 専門用語が飛び交っていて会話が理解できないとか。

小笠原 最初はありました。ただ、関係会社でITを管轄していた経験もあり、不安はありませんでした。だからこそ、自ら希望してIT推進部に移ったのです。ITのプロジェクトはマネージメントのスキルを覚える意味でも非常に効果的だと思います。もちろんソフトウェアやネットワークの特性など、技術的なことを覚えることも大切ですが、ITプロジェクトの管理手法を覚えることは、他の部署に異動しても必ず役に立ちます。もともと業種が多い三井物産では、ある商品を担当していた人が別の部署に異動すれば、また新しい商品知識を覚えることになるので、ゼロから学ぶことに対して抵抗感はありません。だからこそ、ITのDNAもいずれは現業にフィードバックされ、会社の大きな財産になると信じています。

―最後に、今年から世話役になられたJSUG LEXの活動について、抱負をお聞かせください。

小笠原 JSUG LEXは参加企業の業種も参加者の年齢も多彩で、ITでビジネスに貢献したいという志を持つ人が集まってきているので、私にとっても非常に刺激的です。IT担当者の方からは、システムは動くのが当たり前で、止めるとおこられるが頑張っても褒められない、という声をよく聞きます。しかし私がJSUG LEXに参加してみて感じたことは、決してそうではないということです。ITは企業価値の向上に必須であるといった観点で議論を重ねてきて、私自身でも目からうろこが落ちた記憶が鮮明に残っています。だからこそ、今期参加する若い世代の方のお世話をすることで、何らかの恩返しをしたいですね。

─貴重なお話をありがとうございました。

総合商社である三井物産におけるデータ活用の考え方から、具体的な課題が浮き彫りになりました。次回以降も、JSUG LEXの参加企業の方々にデータ活用のお話をうかがっていきます。

■略歴
小笠原裕(おがさわら・ひろし)氏
三井物産株式会社
IT推進部 ITプロジェクト支援室長

Profile Photo1988年三井物産に入社。3年半化学品部門にて企業間オンライン受発注システムの開発・ユーザー展開業務を担当。1991年に営業部門に異動、工業用フィルム・熱可塑性樹脂など合成樹脂の取り扱い業務を行う。2001年より上海・マレーシアの化学品製品加工会社に出向、経営・営業・工場管理全般に携わり、現地でのERP入れ替えプロジェクトを実行した。
2010年に帰国後、現在の部署に異動となり、営業部門・関係会社のITプロジェクトの支援業務を担当中。

 

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