ITが創出するスポーツインダストリーの新たな価値――第2回:ITによる「見える化」でセイリングを制す!


SAPジャパンの山本です。「ITが創出するスポーツインダストリーの新たな価値」と題して2回シリーズの連載を行っています。前回は「ITでテニス観戦がもっとおもしろくなる!と題して、Fan Engagementの観点からお伝えしました。第2回の今回は、SAPがグローバルスポンサーシップを行っている「セイリング」を取り上げ、「ITによる『見える化』でセイリングを制す!」と題してお伝えします。とは言え、「セイリング」といってもピンと来ない方も多いのではないでしょうか。正直なところ、セイリングはわかりにくいスポーツの一つです。ボートレースや車のレースと違い、明確なトラックがないため、どのヨットが一番先頭を走っているのか一目ではわかりません。セイリングにとって重要なのは、「風と潮を読む」こと。そう、ただゴールに向かってストレートに行けばいいのでなく、風向きや潮の流れを読みながら進む、ある意味経営や人生にたとえられるような紆余曲折こそが、このスポーツの醍醐味なのです。このようなちょっとややこしいスポーツに、ITはどう役立つのでしょうか?

セイリングって、いったいどんな競技?

272659_l_srgb_s_gl簡単にセイリングの競技についてお話します。セイリングのレースは、洋上に固定した2~4個のブイで作られたコースを1~2周回して、先にゴールした艇が勝者となるスポーツです。なんだやっぱり速さが勝負じゃないか、とお思いになるでしょうが、艇にはエンジンがありません。風だけが頼りです。洋上を周回するには、風上に向かって進む部分が出てきます。ただし風上に向かって一直線に進むことは不可能なので、その部分は斜めにジグザクと進んでいかざるを得ません。斜めすぎると風上に向かえないし、風上に向かいすぎると速度が出ません。難儀です。しかも風向きや強さは時々刻々と変わるので、そのあたりを判断しながら進む必要があるのです。洋上ですから潮の流れもあり、艇には風とはまた違う力が働きます。また、当然レースですから、他のヨットとの駆け引きもあります。同じコースをとろうとすれば、混雑したり接触したりする可能性があるし、思った通りに進めないことになります。このように、フラストレーションのたまりやすい(?)、それゆえにおもしろい競技なのです。

何がレースの勝敗を決めるのか?

では、このように複雑な要素への判断が要求されるスポーツを制するためには、何がポイントになるのでしょうか。それは、以下の3つです。

  • マニューバリング
  • セイリングスピード
  • コース取り

マニューバリングとは、スタート時の位置取り、艇の方向転換(ジャイブ、タックという)、マークの廻航を、いかにスムーズに行うかです。続いてセイリングスピードですが、これは艇を進める速さであり他艇に競り負けないということだけでなく、風が強い海域にいかに早くたどり着くかになります。最後にコース取りとは、どういう経路をとるべきかを、風向き、レース海面のレイアウト、マークへのアプローチ方法、競合艇との位置関係を考慮して決めます。そのためには、どのような状況判断が必要になるのでしょうか。

まずは、(1)自分の置かれた現状を正しく把握し、(2)その上で風や潮、競合の艇の現状と方向性の予測を行います。それに基づき、(3)アクションを決めていくことになります。しかも、これらを瞬時に行い、つねに軌道修正をし続けるということが求められるのです。

ITによる見える化が、チームの判断の手助けをする

SAPでは、Sailing Analyticsという統合パッケージを投入し、各艇の状況(位置、向き、移動方向、速度など)と、風向きや風力などの外部データをリアルタイムで管理・分析できる体制を整えています。これにより、セイリングを制するために必要な事項はすべてカバーできます。ここで中核になるのが、TracTracという、複数の艇の位置情報をリアルタイムで追跡・管理するサービスです。このサービスから提供される情報をビジュアル化して表示することにより、瞬時に全体の状況を把握することができるのです。これによって、競技者は次のアクションを決めることが容易になります。

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また、競技運営者はレースの記録管理を、そしてメディアはライブ中継やリプレイなどを行うことができます。もちろん観戦者が、ゲームの状況を知ることも可能です。実際に、観客が沿岸部からセイリングのレースを見ていても誰がリードしているのかわからないので、このビジュアライゼーションは、わかりやすさを高める役割、つまり「スポーツをより楽しくする」ということに大いに役立っています。競技後には過去のレースデータなどを呼び出して、レースの反省や今後の指針、トレーニングの方向性などに役立てることもできます。これは、セイリングダッシュボードのような形式で提供されます。

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このように、セイリングにおけるITの活用は、「チームをより強くする!」というTeam Performanceの概念が中心となっています。こちらから、具体的にその活動を見ることができます。

セイリングは経営に似ている

ここまで見てくると、セイリングというのは実に経営に似ていることがわかります。風は景気などのマクロ環境、潮の流れは業界環境、競合の艇は競合他社にたとえることができます。これらの動きを把握し、次の動きを読んだ上でアクションを決めていく。そしてそれをつねに軌道修正する。まさに経営そのものと言えるでしょう。つまり、セイリングのようなレースに対するソリューションという概念は、経営に対するソリューションの概念に通じるのです。

SAPでは、このような経験を、スポーツ業界だけでなく、広く経営全般に役立てたいと考えています。セイリングをサポートするための統合パッケージSailing Analyticsから得られたさまざまな知見を、「経営をより強くする!」というManagement Performanceとでも呼ぶ概念にまで昇華したい、というのが狙いです。

スポーツの世界に革新をもたらす

SAPは、各国のセイリングのオリンピックチームをはじめナショナルチームのスポンサーを数多く手がけています。これはSAPの創業者の意志にもよるものですが、スポーツ振興というだけでなく、経営を強くするというSAPの経営理念に則ったものであります。一義的には「チームをより強くする!」というTeam Performanceの概念に裏打ちされた活動ですが、その根底には、「お客様の経営を強くする!」という思いがあります。

以上、2回にわたって、スポーツ分野でのSAPの新しい取り組みについてご紹介してきました。1回目はテニスを題材にFan Engagementについて、また、2回目の今回はセイリングを題材にTeam Performanceの強化について。こうしたスポーツ分野での活動は、ほかのインダストリーでの活動とは趣を異にしますが、これもまた、ITによってイノベーションを先導するSAPならではの取り組みなのです。

参考記事:世界最大のヨットレースで、波と風をリアルタイムに「見える化」して勝利をつかめ!

2015年2月追記: 2015年の開催地はシンガポールのマリーナ・ベイ(なんとマリーナ・ベイ・サンズの目の前の非常に狭い湾で開催されました)

Extreme Sailing Series Set-Sail in Singapore (2分4秒)

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