ドイツのモノづくりテクノロジー企業3社がIndustry 4.0のいまとこれからを語る


2020年9月にSAPが開催した「モノづくりバリューチェーン・リーダーズサミット」からハイライトを紹介します。本サミットにはシーメンス株式会社 代表取締役社長 藤田研一氏(現在は代表取締役会長)、ベッコフオートメーション株式会社 代表取締役社長 川野俊充氏が参加して、ドイツを代表するモノづくりテクノロジー企業の3社から、新型コロナで重要性が高まる Industry 4.0 の最新情報を紹介することを目的に開催されました。

プロセスとデータの一気通貫化でモノづくりのDXを強力に進めるシーメンス

「DX最新事情 モノづくりの今とこれから」と題して講演したのは、170年余の歴史を持つエンジニアリング会社として世界的に知られるシーメンスの日本法人代表取締役社長(講演時役職、現在は代表取締役会長)を務める藤田研一氏。

コロナ後のモノづくりについて講演するシーメンス藤田会長

藤田氏はシーメンスの考えるDXのビジョンとして、ポストコロナの世界で起こるであろう2つのトレンド=「デジタル化の一層の広まりと先進化」と「製造業とサプライチェーンの大幅な再調整」を挙げます。
「今後はデジタル化に力を注ぐ企業が、加速度的に競争力を高めていくはずです。また、コロナ禍においては伝統的なサプライチェーンが大きなダメージを受けました。この結果、製造業もこれまでのように労働力が安価な国を渡り歩くのではなく、デジタルを活用して自国内でモノづくりを行う原点回帰と地産地消への発想転換が重要になります」
藤田氏は、こうしたDXによるモノづくり改革の目指すべき方向として、プロセスの一気通貫化を挙げます。現在は分散化しているCAD/CAM、MES、FAを統合し、開発から製造設備計画までをシームレスに繋げてる。それにはシミュレーション技術の活用やデジタルツインの実践が不可欠だと説きます。また、一気通貫の戦略はプロセスだけでなく、データマネジメントでも重要で、データをエッジで収集し、共通の仕様に翻訳した上で統合的に可視化・分析する仕組みを構築することがアウトプットの飛躍的な向上に効果があると強調しました。
すでにシーメンスの基幹工場では、これらの戦略を実行し、DXを強力に推進した結果、従業員や規模は変わらないまま生産量を14倍アップしたと紹介しました。

シーメンス自社工場のDX事例最後に藤田氏は「コロナ禍の現状を悲観せず、ニューノーマルをデジタル化への追い風として捉え、さらなるデジタル化の加速とDX推進に率先して取り組まれることを願っています」と締めくくりました。

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バリューチェーン統合で顧客体験の付加価値を高める Industry 4.0

複数の制御機器をソフトウェアのモジュールに接続して、単一のCPUとして扱う画期的な自動制御プラットフォーム「ベッコフTwinCATソフトウェアシステム」で知られるドイツのベッコフオートメーション。その日本法人の代表取締役社長を務める川野俊充氏は、日本でIndustry 4.0が話題に上り始めた当初から、その変遷をつぶさに見守ってきた一人です。

Industry 4.0の今とこれからを講演するベッコフ川野社長川野氏は生産財の世界におけるIndustry 4.0の本質について、「誤解を恐れずにいえば、産業機器の標準化といってもよいのではないか」と語り、その具体例として「Industry 4.0コンポーネント」を挙げます。これは管理シェルと呼ばれるソフトウェアのラッパーが、さまざまな産業機器を「コンパニオン仕様」と呼ばれる規則にしたがって結び、OPC UAという産業通信用のデータ交換標準を使って基幹系システムと通信する仕組みです。
「たとえば、PC用のプリンタドライバを考えると分かりやすいでしょう。メーカーも機種も異なるプリンタが混在していても、対応するドライバさえあれば、どんなOSとでも接続して印刷できます。Industry 4.0コンポーネントも、まさにそういう感覚でさまざまな産業機器を使えるようにしたいという考え方から生まれたものです」

BECKOFF川野社長が説くモノづくり標準化川野氏はIndustry 4.0の今後の方向性について、「サプライチェーンもエンジニアリングチェーンも1つに統合して、バリューチェーン全体でいかに顧客体験の付加価値を高めていくかに尽きる」と強調。その展開例として、2025年にはあらゆるモノとサービスがつながるデジタルプラットフォームが新たな経済圏として立ち上がり、とりわけ製造業ではスマートマシンと呼ばれる生産財の標準化がその成否を握ると語り、講演を終えました。

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Industry 4.0 の実現を促進するSAPの戦略とは?

SAPからはイノベーションアーキテクトの柳浦健一郎が登壇し、SAPが提唱する新たなIndustry 4.0戦略ある「Industry 4.Now」について紹介しました。
柳浦はまず、グローバルでの調査に基づくIndustry 4.0の現状について、68%もの企業がIndustry 4.0の重要性を認識しながらも、41%は依然としてパイロット中であることを指摘します。
「さらにIndustry 4.0の展開の見通しが立っているのはわずか29%で、残りの70%以上は具体的な方向性を見いだせずにいます。こうした事態をSAPは憂慮しており、再度Industry 4.0推進に注力することで、モノづくり企業の競争力強化を支援しようというのが『Industry 4.Now』が生まれた背景です」
また従来のIndustry 4.0とIndustry 4.Nowの違いについて、柳浦は「工場の中に閉じないデジタル変革というのが、私たちの本質的な主張です」と説明します。従来の工場=製造業のみにフォーカスした視点から、さまざまな産業や企業全体にわたる価値創造戦略へ発展的に移行し、その実践に向けて「製造の自動化」と「企業の横断的な業務実行」を結合する。つまり単なる製造の効率化ではなく、ビジネス全体の業務プロセスを結び、トータルな最適化や効率化を実現するのがIndustry 4.Nowの考え方なのです。
「事業横断的な最適化や効率化を図り、顧客のエクスペリエンスを最大化していくためには、工場だけに閉じることなく、営業と製造、設計、ロジスティックス、さらにバックオフィスもつなげる必要があります。そのためにデジタルを活用して、IT(Information Technology)とOT(Operation Technology)の領域の連携と統合の強化を図るのです」

SAP柳浦によるIndustry 4.Nowの要点こうした戦略を推進するため、SAPは2020年にイノベーションを加速するためのSAP Industry 4.Now HUBをドイツ、アメリカ、日本3か国で立ち上げました。日本のHUBは大手町に置かれ、デザインシンキングを取り入れた共同ワークショップの開催などに活用され始めています。同HUBのCo-Innovation第一弾として、三菱電機と共同開発したマスカスタマイズに対応する設計と製造間で、世界標準OPC-UAと日本発のEdgecrossが自動連携するデモの展示も始めています。

SAPは日独でデジタルの力をフルに活用して Industry 4.0 を引き続き推進していきます。例えば日本では株式会社Hacobuとの提携など 詳しくはこちらから