SuccessConnect 2015【世界最強人事 事例に学ぶグローバル人事への取り組み】レポート


Woman running on wooden path

書籍「世界最強人事」に登場する人事リーダーが一堂に会する!

~グローバル競争で勝つための、日本発人事マネジメントを語る~

こんにちは。SAPジャパン人事・人財ソリューション部 藤田 園子です。今後人事・人財に関わる様々な情報をシリーズでお届けします。

第1~3回は、昨年12月4日に開催されたイベント、『SuccessConnect 2015 世界最強人事 事例に学ぶ グローバル人事への取り組み』の模様をレポートいたします。

今回は、書籍「世界最強人事」の著者であるSAPジャパン 南がファシリテーターを務め、書籍に登場する人事リーダー5人が、“真のグローバル人事”について語り合ったパネルディスカッションを抜粋してお届けします。

 

世界に通用するリーダーの育成と人事のグローバル化

冒頭では、先行的な取り組みを実践する企業の人事リーダー一人ひとりが、自社の人事戦略を紹介しました。1人目は、1985年のプラザ合意以降、海外生産を本格化したコマツの日置政克氏です。

「海外生産を始めた当初は日本本社中心の方針を打ち出していましたが、次第に貿易摩擦が深刻化したことで、現地化を進めることになりました。やはりグローバルチームワークをどのように築いていくかという点が大きな課題になりましたが、行き着いた結論は『人はみんな浪花節』です。海外で事業を展開することについて必要以上に難しく考えず、自然体でコミュニケーションをとることが大切だと気づいたのです」(日置氏)

2人目は、BASFジャパンの江口典孝氏です。ドイツに本社を置く総合化学メーカーであるBASFは、2015年で創立150周年を迎えました。

「経済的、環境的、社会的に持続可能な事業を行う『サステナビリティ』と、統合やつながりを意味する『フェアブント』という2つのキーワードを企業理念に据えています。そのため、人事戦略に関しても、持続性を生み出す人材育成と、従業員同士がつながりお互いを高め合う土壌づくりを重視しています。きめ細かい育成プランを立てて長期的に実行していくことで本人に自覚が湧いてきますし、会社に対する愛着心も芽生えます」(江口氏)

3人目は、堀場製作所の松尾孝治氏。堀場製作所は、海外売り上げが70%、全世界の従業員6500人のうち外国人が60%以上を占めるグローバル企業です。

「グローバル人材の育成のため、1974年から海外研修制度を導入しました。日本ではできないさまざまな仕事や苦労が能力の向上につながります。加えて、コミュニケーション力の強化を目的として、世界中の幹部を集めたグローバルミーティングを頻繁に開いています。フェイス・トゥ・フェイスの対話を重要視し、グローバルの従業員全員が1つの方向を向いて働くことを大切にしています」(松尾氏)

4人目は、LIXILグループの八木洋介氏。「One LIXIL」のグローバル人事を推進しています。

「人事責任者として、強くて良い会社をつくりたいと常に考えています。人事部門はサポート・ファンクションという人がいますが、人を変化に導くことができる人事こそが、会社の成長を実現していくべきと考えます。そういった意味で人事はドライビング・ファンクションです。その一環として、グローバルに通用する強いリーダーの育成に取り組んでいます。『One LIXIL』として共通した人事戦略を持ち、基本的なプラット・フォームを統一し、世界中に配置した人材を信頼してダイナミックに活動しています」(八木氏)

5人目は、SAPジャパンのアキレス美知子です。実は、2010年までのSAPのグローバル人事は各国ごとに運営されていて、効率が悪い状況でした。

「人事変革のきっかけになったのは2010年の中期計画です。2015年までの5年間で事業領域を2倍に拡大するという目標を掲げ、それを達成するために人事組織の再構築がスタートしました。人材の育成では、グローバルのラーニングプログラムを充実させるとともに、自らが進んで学習しキャリアを築いていく『学びの文化』の定着を図りました。また、共通のビジョンの下で多様な人材が強みを発揮するインクルージョンの強化にも注力してきました」(アキレス)

各企業に合った人事のあり方を戦略的に考える

企業のグローバル化が進むにつれ、年功序列や終身雇用といった古くからある日本の人事制度が機能しなくなってきています。どうすれば過去にとらわれることなく、世界で戦える人事部門に生まれ変わることができるでしょうか。

この問いかけに対し、八木氏は、「人事で会社に差別化すると考えることが大切です。日本的人事をひとくくりにして他社と同じことをしていては、差別化できません。各企業に合った人事のあり方が必ずあるわけですから、それを戦略的に考えるということに尽きると思います。今までずっと続けてきた人事制度を変えるのは難しいなんて思うのはやめましょう」と語りかけ、まずは風穴を開けることが大事であると強調しました。

日置氏は、「確かに、独特な人事慣行を持つ日本企業に海外のグローバル人材を定着させるのは難しい」と八木氏に同調する一方で、「何十年も人事に携わってきた私からすると、日本の人事制度は悪い面ばかりではないとも思います。重要なのは、海外の方法と日本の人事をどうブレンドするかということではないでしょうか」と提案しました。

SAPでも、ローカルの優れた仕組みは採用します。8割をグローバル化し、残りの2割はローカルのプロセスといった具合です。アキレスは、「ブレンドのベストバランスは国によって異なりますし、外部の環境は変化しますので、適宜見直す必要があります。そう考えると、もはや日本的か否かという問題ではなくなってきます」と指摘しました。

 価値観や理念を共有し、グローバルな一体感を生む

堀場製作所では、自社の価値観や理念を全世界の従業員が共有するユニークな取り組みを行っています。「創立60周年を機に、世界中の仲間で歌える英語の社歌をつくりました。アメリカやヨーロッパの人も意外と喜んで歌ってくれています」と松尾氏。グローバルな一体感を重視する堀場製作所らしいアイデアと言えます。

一方、BASFは異なるアプローチで従業員の一体感を生み出します。それは、あらゆる人事の施策にひもづくグローバルコンピテンシーです。「採用面接にはじまり、育成から配置まで全ての人事活動についてコンピテンシーをベースにすることで、全世界の従業員の共通認識と統一感を醸成しています」(江口氏)

さらに、シンガポールには「BASFラーニングキャンパス」と呼ばれるアジア太平洋地域における人材育成施設があり、各国のタレントが集まってトレーニングを行うそうです。「年間を通して空いている日がほとんどないくらいフル活用しており、人材育成とともに交流を通じたネットワークづくりにも役立てています」(江口氏)

双方向のコミュニケーションの重要性が増す

これからの時代、人事部門はどのようなことを心がけるべきか。八木氏は、「いつまでに何をやるかを決め、それを実現するためのステップを踏んでいくことが大切」と説きます。「M&Aで仲間入りしたさまざまな文化やバックグラウンドを持つ会社を一つにまとめていくには、複雑なことをしていては時間がかかりすぎてしまいます。シンプルでわかりやすいメッセージを送り、スピード感を持って実行することを重視しています」(八木氏)

人事部門の役割として、コミュニケーションの重要性を強調するのは日置氏です。「従業員と会社をつなぐコミュニケーターとして、触媒となるのが人事の一番の仕事だと思います。その意味で、人事スタッフの一人ひとりにもできることがたくさんあります。自分の立場を限定せず、人に対して何ができるかを常に考えて行動するといいでしょう」とアドバイスします。

アキレスも、「グローバル化が進めば進むほど、人事が担うコミュニケーションの量は増えていきます。情報をきちんと管理し、ただ受け取るだけでなく意見を発信していくことが重要です」と続けました。

従業員と役員の対話を重視するのは、堀場製作所も同じです。「毎月行う誕生会では、従業員が役員と直接話すことができますし、『ブラックジャックプロジェクト』という業務の改善運動では、国内外の一般の従業員が経営陣に対して、その活動内容を示すことができます。これらは従業員にとって大きなモチベーションになっており、非常に好評です」(松尾氏)

人事部門は事業部門の隣に座るコ・ドライバー

最後に、5人のリーダーたちは人事担当者へ次のようなメッセージを送り、パネルディスカッションを結びました。

「グローバル競争で勝つために、人事部門と事業部門がどのように協力するか。私のイメージでは、事業部門がドライバーだとすれば、人事部門は助手席に座るコ・ドライバー(co-driver)です。一緒にレースを戦い、ともにゴールを切る。人事担当者にはそんな役割が求められていると思います」(江口氏)

「ITの進化により、これまで人事部門が行っていた仕事の多くはテクノロジーで処理できるようになるでしょう。そうなったときに、事業部門のビジネスパートナーとして何を提供できるか。運転席の隣に座るためには、それに値する力をつけることが大切ですね」(アキレス)

「堀場製作所には『おもしろおかしく』、英語で言うと『Joy and Fun』という社是があります。一人ひとりの心の中でよりどころとなる世界共通のシンプルなメッセージを、人事として発信してみてはどうでしょうか」(松尾氏)

「いざ海外へ出ていくとなると、自分たちとどこが違うかという点に目を向けがちですが、よく考えれば違いよりも類似点の方が多いはずです。少し肩の荷を下ろして、普段着の感覚でグローバリゼーションに取り組んだ方がかえって上手くいくような気がしてなりません」(日置氏)

「LIXILは決して特別な会社ではありませんが、ここ数年の取り組みで随分変わりました。会社は変われます。そのためには、行動あるのみ。これが私から皆さんへのメッセージです」(八木氏)

いかがでしたか?
人事部門も、事業戦略に則り、守りの人事から攻めの人事へ、意識を向けていく必要がありますね。

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