部門別BIの生産性を損なわずに全社のデータガバナンスを利かす施策とは

社内のさまざまな部門やユーザーごとに異なるBIツールやアナリティクスのコンテンツが乱立している場合、そこから得られる洞察(気づき)にも、大きな格差やブレが生じる恐れがあります。そのリスクを回避するためには、企業内に散在している分析レポート、ダッシュボード、アプリケーションなどのコンテンツを一元的に管理し、「Single Version of Truth(唯一の真実)」に基づいた全社的なアナリティクスを実現する必要があります。今回は、そのための方法について考察します。

BIツールの乱立がデータガバナンスの崩壊を招く

さまざまなビジネスの最前線に立つマネージャーや担当者が、その時々で客観的な情報に基づいた的確な状況判断を行い、迅速にアクションを起こす――。

こうしたデータ活用の必要性と重要性が広く認識されるようになり、BI(ビジネスインテリジェンス)を活用した分析レポートやダッシュボードなどのコンテンツが、あらゆる業務の現場に浸透し始めています。

もちろん、それ自体は非常に良いことです。ただし一方で、さまざまな問題も散見されるようになっています。問題の一つは、IT部門が気づかぬうちに、部門別に異なるBIツールが導入されていたり、業務ごとの個別最適の視点でコンテンツが生成されたりすることです。その結果として、データ分析の方法やアウトプットに、多種多様なUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)が乱立してしまうのです。

例えば、定型的な分析レポートとダッシュボードにおいては、元になるデータの鮮度や粒度が部門によって異なっていたり、フォーカスしているKPI(重要評価指標)そのものが違っていたり、他のユーザーがセルフBIを使って独自のデータや視点を加えながら分析を行っていたりする場合があります。結果として、それぞれのコンテンツから得られる洞察(気づき)にも、大きな格差やブレが生じる恐れが強まります。

そうしたリスクを放置していると、最悪のケースでは各部門や各ユーザーが、それぞれ好き勝手な分析結果に基づいてアクションを起こし始めるというガバナンスの崩壊さえ招きかねません。仮にそこまで至らなかったとしても、部門ごとに似たような分析がバラバラに繰り返されるという非効率な作業が蔓延しかねないのです。

さまざまなBIツールへの一元化されたアクセス手段を提供

以上のように、全社的なアナリティクスの推進は、トップマネジメントやマーケティング、営業、財務・経理など、部門ごと・役職ごとにサイロ化したアナリティクスの乱立を引き起こす場合がよくあります。

ただし、アナリティクスにおいては、「Single Version of Truth(唯一の真実)」を実現しなければなりません。つまり、ビジネス上の意思決定の元となるデータ(事実)は、唯一無二である必要があり、それによって初めて全社で同じ認識を共有し、的確な洞察を見出すことが可能になるのです。

それを実現する手法として、社内で利用するBIツールや、そこから生成するコンテンツをすべて標準化し、組織横断で統一するという方法があります。これは有効な方法に思えますが、この方法には、現場におけるデータ活用の柔軟性を奪い、モチベーションを低下させてしまう恐れがあります。したがって、最も望ましいのは、各部門や各ユーザーの選択を尊重したうえで、社内に分散するさまざまなBIツールやコンテンツに対するシンプルで、一元化されたアクセス手段を提供することです。これにより、各部門の業務にフィットしたアナリティクスの環境を実現し、ビジネスの俊敏性を損なうことなく次の一手を導くインサイトを各現場に提供することが可能になります。そして、このようなアナリティクスの実現するのが、「SAP Analytics Hub」なのです。

複数の部門をまたいだ情報共有

SAP Analytics Hubは、企業内に散在する分析レポート、ダッシュボード、アプリケーションなどを一元的に管理するためのコンテンツ管理プラットフォームです。インテリジェントな検索機能により、分析結果の迅速な活用を促します。

また、SAP Analytics Hubを活用することで、各部門や各ユーザーがどのような分析を必要としており、実際に行っているのかを全社的なスコープで把握することができます。これによってIT部門はデータガバナンスを確保することが可能となります。

メリットはそれだけではありません。あるユーザーが、別の部門のユーザーが作成した分析レポートやダッシュボードを参照したり、社内で乱立していた類似レポートを一本化したりなど、同じビューと共通の言葉を用いて相互にコミュニケーションをとることが容易になります。これによって、複数部門をまたいだ「Worked well/Not worked well」の情報共有が実現されるとともに、マネージャーや経営陣など上層部の意思決定の迅速化も可能になります。

SAPは従来から、データの視覚化、計画、予測の機能を統合したクラウドベースのアナリティクスソリューションとしてSAP Analytics Cloudを提供してきました。

そのサービスを使うことで、人材分析、顧客分析、セグメンテーション分析、流通分析、総支出分析などのアナリティクスを、多様なユースケースで基幹業務アプリケーションに組み込むことができます。加えて、SAP Analytics Cloudでは、オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境において、データとアナリティクスの一元管理をサポートします。これによって企業は、既存の投資を活かしながらクラウドのリソースを柔軟に取り込んだり、クラウドへの段階的な移行を図ったりすることが可能になります。

SAP Analytics Hubは、このSAP Analytics Cloudの環境で提供されるものですが、接続コンテンツとしては、オンプレミスでもクラウドでも、さらにSAPのコンテンツかサードパーティーのコンテンツかといった違いも問うことなく、さまざまな分析アセットに対して単一のエントリーポイント、分析ポータルを提供します。これにより、異種混在環境に散在しているアナリティクスへのアクセスをシンプル化し、事実に基づいたデータドリブンの意思決定を行うという「Single Version of Truth」が実現されるのです。

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