OKRを志向する成長企業はなぜタレントマネジメントを重視するのか?

今日、世界の有力企業や成長ベンチャーがこぞって採用する目標管理の手法に「OKR(Objective and Key Results)」があります。また、そうした企業の多くが、タレントマンジメントの仕組みを併せて活用しています。果たして、OKRとタレントマネジメントにはどのような関係があるのでしょうか。その点を掘り下げてみます。

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プロスポーツのチームのように

今日、企業の発展・成長には、プロスポーツチームのような組織を作り上げることが重要とされています。

ご存知のように、プロスポーツチームでは、仕事(試合)の中で、選手の誰もが、自分の能力や才能を最大限に発揮して、「勝利」というチーム目標の達成に貢献しようとします。また、試合で最高のパフォーマンスが発揮できるよう、日々の研鑽(トレーニング)も欠かしません。さらに選手たちは、チームの勝利のために自分が何をすべきかを理解しており、それを遂行するうえで直面する課題に対し、自らの判断で臨機応変に対応しようとします。

このように、個々人が自発的・自律的に所属組織の勝利に貢献しようとする企業は、変化への対応力や成長・発展のパワーを高く保つことが可能とされています。

ならば、プロスポーツチームのような組織を築くには、何が必要なのでしょうか。

まず言える一つは、会社と従業員との整合された目標の共有です。実際、プロのスポーツチームでは、チームと選手各人が、「勝利」という明確な目標を共有しています。だからこそ、選手一人一人が、自身の能力や才能を振り絞って、チームの勝利に貢献しようとするわけです。

それは、企業人についても同様です。会社と従業員が目標を共有し、会社が成し遂げようとしていることを、個人としても成し遂げたいと思えないのであれば、会社に貢献する意欲を長く保ち続けることは難しいと言えます。

もう一つ、組織と従業員との間に信頼関係があるかどうかも大切です。例えば、自分の成果、能力、パフォーマンスが、常に正当に評価されるという信頼がなければ、プロスポーツの選手も、企業人も、組織への貢献意欲はわいてきません。同様に、自分の会社が、自分の能力や才能をしっかりと理解し、かつ、「一層高めようとしてくれている」、あるいは「最大限に活かそうとしてくれている」と思えないようでは、働く意欲や貢献意欲は維持できないと言えるのです。

加えて、マネジメントの観点から言えば、会社の目標達成に必要な役割を、各従業員にしっかりと担ってもらい、高いパフォーマンスを発揮し続けてもらうことが重要です。そのために必要とされるのが「目標管理」や「パフォーマンス管理」であり、それを有効に機能させる手法として、Googleをはじめとする世界の有力企業/成長ベンチャーは「OKR(Objective and Key Results)」と呼ばれる手法を採用しています。

「OKR」の効用

OKRの考え方は、とてもシンプルです。会社の目標とリンクした「目標(Objectives)」を定めて、その目標の達成度合いを、計測可能な「成果指標(Key Results)」によって管理していくというものです。

例えば、小売事業者のマーケティング担当部署が、会社の収益増に向けて「顧客体験の向上」という目標を掲げたとします。このような目標設定だけでは、通常、目標の達成度合いが可視化できず、結果、部署のパフォーマンスや能力、さらには、会社の目標に対する貢献度が見えにくくなります。そこで、目標と併せて、その目標を達成するうえでカギとなる成果を、計測可能な指標として設定します。例えば、「顧客体験の向上」が目標とすれば、「新規顧客を〇〇件獲得する」「既存顧客の店舗へのリピート率を〇〇%に高める」「顧客の平均購買単価を〇〇%アップさせる」といった成果指標を併せて設定し、それによって目標達成度を見える化し、定常的に進捗を管理、目標管理/パフォーマンス管理に役立てていくというのが、OKRのアプローチと言えます。

また、部署のOKRは、部署で働く各人のOKRとしてブレークダウンしていきます。このとき、各担当者の目標も「顧客体験の向上」というシンプルで高次な目標のままで構わず、その達成度合いを計測するための成果指標を、個々にブレークダウンしていけばいいのです。

このほか、部署や個人のOKRを定める際には、部署内での納得と合意も必要なようです。理由は単純で、トップダウンで一方的にOKRを設定すると、従業員たちは、設定された目標を「上層部が勝手に押し付けてきた目標」と見なすようになり、その達成意欲を減退させてしまう恐れがあるからです。この橋渡しを担うのがマネージャー層です。

このようなリスクを回避しながら、OKRを導入することで、各従業員は、会社の目標や中長期的なビジョンの達成/実現に向けて、「自分はどのような役割を演じるべきか」「具体的に、何をどうすべきか」というミッションを明確につかむことが可能になります。また、会社が自分に何を期待しているかも具体的に理解できるようになるとされています。

さらに、OKRで成果指標を定めることで、マネージャーと部下が目標達成度の確認ミーティングを定期的に行うことが可能になります。これにより、マネージャーは部下たちの目標の達成度合いを正確に把握できるだけではなく、達成に向けた各人の課題もとらえられるようになり、課題解決の一手を適切なタイミングで打てるようになるのです。

目標管理とパフォーマンス管理の効率化に向けたIT施策

こうしたOKRによる目標管理/パフォーマンス管理を効率的に行うには、そのためのITツールが必要とされます。そうしたITツールの一つと言えるのが、「SAP SuccessFactors」のようなタレントマネジメントシステムです。

SAP SuccessFactorsは、OKRの運用にも適用できる先端の目標管理とパフォーマンス管理の機能を提供しています。
まず、目標管理について言えば、「SMART」と呼ばれるメソドロジーに基づいて目標を設定することを基本としています。SMARTとは、以下に示す5つの目標設定ルールの頭文字をとった略語で、これらはOKRにおいても重要な概念となっています。

1.Specific(具体的):どんなことに取り組むのか誰が見てもわかる内容にする
2.Measurable(測定可能):誰が計測しても同じ数値が出る目標を設定する
3.Attainable(達成可能):簡単すぎるものでも実現不可能なものでもなく、努力すればなんとか達成できる、ストレッチされた目標を設定する
4.Relevant(関連性):個人的な目標ではなく、組織の目標と部内目標に関連するゴールを設定する
5.Time-bound(期限):あらかじめ設けられた期限までに目標を達成する

SAP SuccessFactorsでは、このSMARTに対応した500以上の目標ライブラリーを用意しており、適切な目標をすみやかに設定することができます。

これにより社員の日々の取り組み状況や成功の可能性を把握し、コメントの更新を継続的に実施することで目標達成を促進することができます。同時にマネージャーは企業全体の目標に対して、チーム目標や個人目標の関連づけを行い、目標の進捗状況をより正確に把握することが可能となります。

一方のパフォーマンス管理の機能は、マネージャーと各従業員間のコミュニケーションやフィードバックの提供を継続的に促進し、パフォーマンスの調整や改善方法についてより体系的に話し合うことをサポートします。従業員各人もまた、自身が目標達成のために何に取り組んでいるのか、どこまで進んでいるのかなどの状況をマネージャーに逐次伝えることが可能になります。

さらに、SAP SuccessFactorsで重要なのは、人事部のリーダーが、このマンツーマンのミーティングが追跡できる点です。

これにより、人事部のリーダーは、マネージャーに対してより効果的なコーチングを行うためのガイダンスを提供することが可能になります。また、組織全体を俯瞰して、どの部署の誰が高いパフォーマンスを発揮し、誰が高いパフォーマンスを発揮できていないのかを即座につかみ、企業の事業戦略や目標に沿ったかたちで、能力開発を含めた組織的な課題解決の施策を練り、提案し、遂行していくことができるようになります。

繰り返すようですが、プロスポーツチームは、チームの勝利という目標に向けて、選手の一人一人が自分の役割を理解し、その役割を遂行するために、自身の能力を最大限に発揮しようとします。また、チーム側は、選手各人の能力やパフォーマンスを常に把握・観察・分析し、それぞれの能力/パフォーマンスを最大限に引き出す努力を続けます。

それは、多くの有力企業やベンチャー企業が目指す組織のあり方であり、それを実現するためにOKRやタレントマネジメントの考え方や仕組みを使い、会社の目標達成に向けて人材の能力・才能を高めたり、最大限に活用したり、適材適所の人材活用を推し進めようと取り組んでいます。

今日、海外の有力企業や成長ベンチャーと同じように、従業員の働きやすさ満足感、あるいは「働きがい」を経営の柱に据えようとする日本の企業は増えています。背景には、人材不足が深刻化する中で、人材採用で優位に立ちたい、あるいは、人材の流出を防ぎたいという事情がありますが、究極的な目的は、人材のモチベーションを高めて、組織のパフォーマンスをアップし、自社の目標を達成することにあるはずです。

そのためには、働きやすい就労環境を構築したり、待遇面での改善を図ったりするだけではなく、従業員が明確な目標の下で、自分の能力や才能を最大限に発揮していけるプロセスや仕組みも確立しなければなりません。それを下支えするのが、OKRの手法であり、SAP SuccessFactorsのようなタレントマネジメントシステムです。ハイパフォーマンスな組織を築きたい──。そうお考えなら、OKRやSAP SuccessFactorsのような手法/システムの採用を検討されてはいかがでしょうか。

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