部門の成績に何が影響を与えているのか? ──営業の現場が“キーインフルエンサー”を科学的に突き止める方法を知る

「自社・自部門の業績を上向かせるには、何が必要なのか」─。この自問への答えを見出すための一手は、事象に影響を与えている「キーインフルエンサー」を科学的にとらえることです。今回はそのための方法について考えます。

商談が進まない主因はどこに?

ご存知のとおり、今の時代は、戦後の高度経済成長期やバブル期のように、「モノを作りさえすれば売れる」「営業をかければ、かけた分の見返りがある」といった時代ではありません。
ですから、非常に高効率にモノが作れるとしても、市場ニーズの変化を正確にとらえる力に欠けていると、売れない製品を大量に作ってしまい、不良在庫として抱え込んでしまうリスクがあります。同様に、いくら営業の訪問件数を増やしたところで、顧客へのアプローチの方法を間違えたり、顧客のニーズ/課題への洞察が足りなかったりすれば、営業活動の多くが徒労に終わり、その分のコストが経営を圧迫することになりかねないのです。

したがって、営業活動は客観的な事実に基づき、戦略的、かつ効果的に行われなければなりません。例えば、商談が思うように進まないのであれば、客観的な事実(=データ)に基づいて、その事象を引き起こしている主要要因──つまりは「キーインフルエンサー」を探し当て、そこに集中的にアプローチしていくことが重要と言えます。

では、一体どうすれば、データに基づきながら、キーインフルエンサーを見つけ出すことができるのでしょうか。

“現場勘”とサイエンスを結びつける

データからキーインフルエンサーを探し当てる手だての一つは、統計解析の手法・技術を使うことです。具体的には、重回帰分析や主成分分析、独立成分分析、因子分析などの多変量解析を行い、キーインフルエンサーを割り出していくのです。

ただし、日本の大多数の企業には、統計解析に精通したデータ分析官(データサイエンティスト)は存在しません。しかも、優秀なデータサイエンティストを新たに雇用するのも、育成するのも簡単なことではなく、外部のデータサイエンティストに分析を依頼するにしても、多額の費用が発生してしまいます。

さらに問題なのは、統計解析の知識があっても、ビジネス現場での実務経験を土台にした“現場勘”がないと、現場に役立つデータの分析がなかなか行えないことです。

良質な分析には、優れた仮説が必要で、その仮説を立てるセンスは、ビジネス現場での業務経験によって養われるものです。そして、しっかりとした仮説がないままに分析を行おうとすると、『どのデータを分析の対象にすべきか』というスタート地点で間違いが起こり、最終的に、ほとんど意味を成さないアウトプットを出してしまうおそれすらあります。

例えば、多変量解析の一種であるクラスタ分析を用いて顧客を数種類のグループに分けながら、販売ターゲットを検討するとしましょう。この場合、分析担当者が明確な顧客像をイメージできていないと、結局、役立つ答えを何も出せないという事態に陥ってしまうのです。

このように、有効なビジネス分析を行うには、現場の知見と統計解析の手法をうまく結びつけることが重要です。それは、現場勘という非科学的なものを、再現性のある科学的なデータへと転換する取り組みと言えるかもしれません。

統計解析の知識がなくても……

では、論点を最初に戻し、営業の現場がキーインフルエンサーを科学的に割り出していく方法について考えてみましょう。

まず、最も手間のかからない方法の一つは、社内のデータサイエンティストと、現場勘を持った営業担当者が、密接に連携しながら分析を進めることです。ただし、先に述べたとおり、社内にデータサイエンティストを擁している企業は稀です。

そこで浮上してくるのが、現場勘を持った営業担当者が、自ら統計解析の手法・技術を習得するという選択肢となります。しかし、これも現実的な解とは言えません。なぜならば、大多数の営業担当者は、日々の営業実務に追われており、統計解析の手法・技術を習得している時間的なゆとりが持てないからです。

となれば、残る手段は、ツールの活用という一点に絞られてくるはずです。要するに、統計解析の知識がなくても、キーインフルエンサーが突き止められるツールを使えばいいというわけです。

SAPのクラウドサービス「SAP Analytics Cloud」は、まさにそうしたツールの一つです。AI(人工知能)技術である機械学習の採用により、統計解析の知識を持たない現業部門の担当者でも、キーインフルエンサーを割り出すことを可能にしています。

仕組みのコアは「スマートディスカバリー」

ここで、SAP Analytics Cloudがキーインフルエンサーをどのようにして割り出すかについて、簡単に説明しておきたいと思います。

SAP Analytics Cloudには、「Augmented Analytics(拡張分析)」と呼ばれる仕組みが備わっています。この仕組みを使うことで、経営上・営業上の課題に対する正負の因子「バリュードライバ」を明確にすることができます。そして、この仕組みのコアと言えるのが「スマートディスカバリー」と呼ばれる機能です。

スマートディスカバリーは、機械学習アルゴリズムを使いながら、蓄積されたデータの中からデータ間の新たな関係性を“発見”するエンジンです。フォーカスしたキーインフルエンサーに対して、他のキーインフルエンサーとの相関関係や、キーインフルエンサー中の主要メンバーなどを特定することができます。

また、スマートディスカバリーは、データのチャートも自動的に生成します。そのチャートに基づきながらデータの詳細な探索を行うことで、データの全体像を把握することが容易になります。

さらに、スマートディスカバリーには、「ガイド付き分析」の機能も備わっています。この機能は、分析中のデータについて、ほかのデータとの重要な関係性があるかどうかを判定し、ない場合にはアラートを発する仕組みです。これを使うことで、無意味な分析をそれ以上進めてしまうリスクが回避できます。

ヒトの限界を超える分析

もう一つ、スマートディスカバリーの重要なポイントは、「ストーリー」に沿った分析へと利用者を導けることです。

例えば、スマートディスカバリーを使った分析では、売上高や収益といったターゲット変数を指定するだけで、その変数に関係するキーインフルエンサーを探すための「ストーリーボード」が自動的に生成されます。このストーリーボードを沿って分析を進めていくことで、分析に費やす時間を大幅に減らせるようになります。

また、SAP Analytics Cloudには、“ワンクリック”で関連するインサイトを解き明かす「スマートインサイト機能」や、将来の業績を予測する「時系列予測機能」なども用意されています。これらの機能とスマートディスカバリーを組み合わせることで、一連の分析をさらに効率的に行うことが可能になります。

SAP Analytics Cloudのようなツールを使う利点は、ビジネス現場での高度な分析を可能にしたり、分析業務の効率化を実現したりすることだけにとどまりません。むしろ、それらの利点よりも、『ヒトの思考の限界を超えた分析が可能になる』というメリットのほうが重要かもしれません。

先に、ビジネス分析には現場での“経験”や“現場勘”が必要と述べましたが、経験や現場勘は一方で、分析の視点を狭めてしまうリスクも内包しています。

それに対してSAP Analytics Cloudの場合、純粋なファクトにフォーカスを当てながら、多角的な視点で、大量データの分析を一挙に実行します。これにより、現場で働く全員がこれまで気づけなかった課題や洞察、発見を手にできる可能性が拡がるのです。


▼SAP Analytics Cloudについて詳しくはコチラ
https://www.sapjp.com/analytics/

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