収益最大化のためには、儲かっている事業への経営資源の投入と不振事業を早い段階で見抜くことが重要です。不振に陥っている事業をいち早く見抜き手を打つために必要なこととは?

働き方改革関連法の施行により業務効率化は急務に
2019年4月1日、働き方改革関連法が施行されました。以降、あらゆる企業は従業員に年間5日間以上の有給休暇を取得させることが義務付けられるようになりました。また大企業は残業時間の上限規制にも従わなくてはならず、中小企業も2020年4月から同様の規制が設けられるようになります。そのほかにも従業員の働き方に関するさまざまな規制が適用されるようになり、企業規模に関係なく、あらゆる企業が働き方改革に真剣に取り組まざるを得なくなりました。

そのため、これまでより短い労働時間で十分な成果を上げられるよう、従業員の生産性を向上させる施策が不可欠になってきます。特にITを使った業務効率化は、ほぼ必須の施策と言えるでしょう。ITを有効活用することで、これまで人手に頼っていた非効率な作業を自動化・省力化し、短期間のうちに労働時間短縮の効果を得ることができます。
近年では、「RPA(Robotic Process Automation)」と呼ばれる自動化・省力化技術も、中堅・中小企業の間で普及し始めています。これは、人手で行っていたPC作業を、ソフトウェアのロボットが代行してくれるというもので、比較的低コストかつ短期間で導入できるため、特に人手不足や長時間労働に悩む中小企業の間で高い注目を集めています。
効率化とともに重要な経営情報や市場情報をいち早く可視化することによる経営への貢献
人事部門や経理財務部門、営業アシスタントなどの業務は、PCを使った入力作業や転記作業といった単純なルーチン作業が多く、特に月末・月初や期末などの時期に作業が一気に集中するため、どうしても残業時間が増えてしまいます。そこでRPAのようなITソリューションを利用すると、そのようなルーチン業務を人に代わって処理してくれるため、バックオフィス業務の効率化と労働時間短縮に打ってつけのソリューションといえます。ただしITの役目は、単に業務を効率化したり、自動化するだけではありません。企業がITを導入する最大のメリットの1つは、これまで見えなかったより細分化された経営情報が見えるようになったり、あるいは従来より早く売上見込みや販売状況など経営判断を行うための情報を手に入れられるようになる点にあります。
今日、ビジネスを取り巻く環境は、刻一刻と変化しています。しかも、顧客や消費者の嗜好の移り変わりは早く、市場トレンドの変化は年々加速しています。こうした変化にいち早く対応し、競合他社に先んじて市場が求める製品・サービスを提供するためには、市場に関する情報や、自社の経営状態を示すデータをいち早く手に入れて、それを基にスピーディーに経営の意思決定を行う必要があります。

その点、RPAのような仕組みは、確かに業務の効率化や労働時間短縮には効果がありますが、企業の収益向上に直接寄与する効果はあまり期待できません。そこで、どうせITを導入するのであれば、経営情報や市場情報を可視化することで、企業経営に直接貢献できる仕組みを導入することをお勧めします。
ERPの導入で「働き方改革」と「経営への貢献」を同時に実現
ただし、一言で「経営情報を可視化する」といっても、実際にはそう簡単にはいきません。現在、企業のバックオフィス業務の中では、さまざまな業務アプリケーションが使われています。例えば経理財務部門では会計パッケージ製品が使われていて、人事部門では人事システムが使われていて、生産部門では生産管理システムが……といった具合です。それぞれのアプリケーションの中には、経営判断に役立つさまざまな情報が管理されています。例えば、会計パッケージ製品の中には経理情報が、人事システムの中には人事評価に関する情報が、といった具合です。それぞれは経営にとって極めて有用な情報なのですが、こうして異なるアプリケーションでばらばらに管理されていると、それらをまとめて参照することがなかなかできません。
例えば、売り上げ情報と在庫の情報を見比べながら経営戦略を検討しようと思っても、ある情報は会計パッケージの中にあり、別の情報は在庫管理システムで管理されているとなると、両者を横並びにして検討するのは簡単なことではありません。それぞれのシステムから人手でデータを抜き出して、レポートにまとめ上げなければならないためです。これでは、せっかくITの仕組みを入れたのに、結局は人手に頼ることになり、十分なスピード感を得ることができません。

場合によっては、同じようなデータが複数のシステムやアプリケーションで重複して管理されており、「どれが最新なのか」「どれが正式版なのか」が分からなくなってしまうようなことも起こり得ます。こうした事態を避け、スピーディーな経営判断に寄与するITを実現するには、すべての業務システムの機能が一体化した仕組みが求められます。
これを実現したのが、「ERP(Enterprise Resource Planning)」です。ERPは会計管理ソフトではありません。ERPは、経理財務や人事、販売管理、在庫管理といった基幹業務のシステム機能を、すべて一体化したアプリケーションです。パッケージアプリケーションのため、情報もすべて単一のデータベースで管理されています。従って、経営判断に必要なあらゆる情報を瞬時に引き出すことができるのです。さらには、これから導入を検討の際には、クラウド型ERPが最適になります。
ERPパッケージ製品というと、一昔前までは「大企業向けの高価な製品」というイメージが強かったのですが、近年では中堅・中小企業でも手軽に導入・利用できるものが増えてきました。また、ただ単に情報を管理するだけでなく、それらを基に経営分析レポートを手早く作成できる機能など、より経営判断に役立つ機能を備えたものも出てきました。
もちろん、ERPを導入することで、それまで人手に頼ってきたバックオフィス業務の多くが効率化されるため、働き方改革の効果も大いに期待できます。業務の標準化も進むため中堅企業に多い、業務の属人化の解消にもつながることでしょう。
急務となった働き方改革、いま抱えている課題を棚卸し、より短い労働時間で十分な成果を上げるために必要なことは何か考えてみてはいかがでしょうか。