「拡張分析ツール」とは?何ができるか詳しく解説!
「Augmented Analytics(拡張分析)」は、データ分析の専門家ではない経営層やビジネスパーソンによるデータ分析を可能にする技術です。ただし、経営層や一般のビジネスパーソンの間で、「拡張分析」によって何が実現されるかを知る向きは、おそらく少数派であるはずです。そこで今回は、拡張分析で何が可能になるかをビジネス視点でお話しします。

ビジネスパーソンにとって大切なこと
「Augmented Analytics(拡張分析)」とは、AI(人工知能)/機械学習の技術を使った分析のことで、データ分析の新たな潮流を形成するものとして注目を集めています。ただし、拡張分析(「拡張アナリティクス」と呼ばれることもある)の技術的な革新性は、一般企業の経営層やビジネスパーソンにとってあまり重要ではなく、より大切なのは、拡張分析で何が可能になり、それが自分たちのビジネスメリットにどうつながるかであるはずです。逆にそれさえわかっていれば、拡張分析のビジネスでの活かしどころが明確になり、メリットを享受できる可能性も大きくなります。それは、インターネットがどのようなメカニズムによって機能しているかを知らなくても、何ができるかを知っていれば、ビジネスにうまく活用できるのと同じ理屈です。
では、拡張分析で何が可能になるのでしょうか─。
以下では、ビジネス分析に特化したSAPのクラウドソリューション「SAP Analytics Cloud」の拡張分析機能を題材にしながら、この疑問への答えについてお話しします。
拡張分析機能でできる3つのこと
SAP Analytics Cloudの拡張分析機能で可能になることは以下の3点に集約できます。1. 自然語対応:コンピュータと自然語で対話しながら、データの分析が進められる。
2. 自動化:データのパターンと傾向を自動的に検出できる。
3. 予測:時系列データの学習により、ビジネス上の成果や業績の予測が支援できる。
もちろん、これだけの情報では、拡張分析でどんな分析が行えるようになるかは分かりにくいはずです。そこで少し簡単な例をご紹介します。
まず、上記「1」の自然語を使った分析ですが、SAP Analytics Cloudの拡張分析の機能を使うと、例えば、以下のような自然語によるデータ検索(インサイト検索)がかけられます。
「各商品の地域ごとの総売上げを見せて欲しい」
SAP Analytics Cloudの拡張分析のエンジンは、こうした依頼に従って、自らデータを探し当てグラフィカルに検索結果を表示させます。
ここで仮に、特定地域において、自分の担当している商品の売上げが、突出して高かったとします。このような場合、必ず、その要因、言い換えれば、売上げに貢献している「何か/誰か(=コントリビューター)」を突き止めたくなるはずです。このようなとき、従来型のデータ分析の環境では、手元にあるデータをいろいろな角度から眺めたり、集計しなおしたりする必要がありました。
ところが、SAP Analytics Cloudの拡張分析では、ビジネスパフォーマンスに対して大きな影響を及ぼしているコントリビューターが自動的にリストアップされます。これにより、特定製品の売上げに責任を持つマネジャーは、地域ごとの売上げ格差の要因をスピーディに突き止めて、売上げの低い地域のテコ入れ策を、ファクト(データ)に基づいて打てるようになります。同様に、複数地域での売上げ責任を持つエリアマネジャーも、最も高いパフォーマンスを発揮しているエリアのコントリビューターを即座に割り出して、他地域のパフォーマンス改善に生かすことができるのです。
人ではなかなか気づけないデータとデータの相関関係を割り出す
拡張分析における「2. 自動化」も、ビジネスパーソンによるデータ分析を強力に支援するものです。先にも触れたとおり、ここで言う「自動化」とは、データに潜在するパターンや傾向を、拡張分析のエンジンが自動で見つけてくれるというものです。例えば、SAP Analytics Cloudの拡張分析機能の一つ、スマートディスカバリー機能を使うと、多数の顧客データや商品データ、あるいは従業員データを分析して、類似の属性を持った一群(クラスタ)へと容易に分類できます。これにより、どういった特性を持った従業員の満足度が高いかといった分析が容易に行えます。
また、スマートディスカバリー機能を活用することで、従来はデータ分析の専門家(データサイエンティスト)の支援なしでは検出できなかった、あるいは、人ではなかなか気づけないようなデータとデータとの相関関係を明らかにすることができます。結果として、さまざまな要因の変化がビジネスの成果にどのように影響するかをスピーディに調べ上げ、適切な改善の手段を検討し、実行に移すことが可能になります。
例えば、特定の属性を持った顧客の一群が、自社の収益の多くを占めているとします。
SAP Analytics Cloudのスマートディスカバリー機能を使うことで、そうした顧客群との「商談の成約率」や「取引額」と、「対面での打ち合わせ回数」や「商談に要した期間」「プリセールスの有無」「経営陣のサポートの有無」「セールスインセンティブの種類」など、さまざまな変数との相関関係を(データサイエンティストがいなくても)詳しく調べられるようになります。これにより、営業部門のマネジャーや経営層は、収益の最大化に向けて、営業部門の陣容をどう整えるべきか、あるいは、どのようなセールスアプローチを強化するのが有効かの判断を、人の“感覚”や“勘”といった曖昧で、属人的なバイアスもかかりやすい基準ではなく、実績データの裏づけをもって下すことが可能になるのです。
さらに、SAP Analytics Cloudでは、前述した「3. 予測」の機能を、スマートプレディクト機能として提供しています。この機能では、過去の時系列データから、季節性やサイクル性、上昇/下降などの傾向を要素分解しながら学習し、将来の業績や数値を予測する信頼性の高いモデルを自動的に生成します。これにより、予測という難度の高いビジネス分析も、比較的容易に行えるようになります。
企業が分析対象にすべきデータは肥大化の一途をたどり、企業を取り巻くビジネス環境も目まぐるしく変化しています。その意味で、AI/機械学習など、デジタル技術の力を借りなければ、有効なビジネス分析ができない時代に突入しているとも言えるでしょう。しかも、AI/機械学習の力を活用することで、人は自身のデータ分析能力を飛躍的に高めることもできます。そうした“能力拡張”の可能性をあらゆるビジネス現場にもたらそうとしているのが、拡張分析のテクノロジーです。それを早期に取り入れるかどうかで、企業の競争力が大きく左右されると言っても、決して過言ではないのです。
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