1から理解!タレントマネジメントとは?―知っておきたい「なぜ、注目!?」「なぜ、必要!?」「何が必要!?」

にわかに注目を集める「タレントマネジメント」。日本でも、多くの企業がタレントマネジメントを実践すべく、IT環境を整備し始めています。では、そもそもタレントマネジメントとは、どのような手法であり、それによって何が変えられるのでしょうか。そして、いまなぜタレントマネジメントへの関心が高まっているのでしょうか。1から、お話しします。

タレントマネジメントとは何か?

「タレントマネジメント」は最近登場した新しい手法ではなく、概念としては20世紀末から存在していたものです。タレントマネジメントを支えるITシステムも古くからあり、タレントマネジメントの機能を備えたSAPのフルクラウド型人事ソリューション「SAP SuccessFactors」も10年以上前からありました。当初は大企業・グローバル大手から導入が始まり、それが徐々に市場全体に波及し、ここ数年は、中堅・成長企業にまで広がり日本の企業全体で関心が高まっています。

ここでは、そんなタレントマネジメントについて、次の項目に沿って一からご紹介します。

【1】タレントマネジメントとは?
【2】タレントマネジメントの取り組みとは?
【3】人事部門とタレントマネジメントとの関係は?
【4】タレントマネジメントが注目を集める理由とは?
【5】タレントマネジメントに必要なITシステムとは?
【6】なぜ、Excelではタレントマネジメントが行えないのか?
【7】補足:SAP SuccessFactorsでできること


【1】タレントマネジメントとは?

タレントマネジメントは、日本語で「人材管理」、あるいは「人財管理」と一般的に呼ばれている手法です。「管理(マネジメント)」と言うと、私たち日本人は、「制御」や「統制」といった言葉を想起しがちですが、タレントマネジメントにおけるマネジメントには、「活用」「育成」という意味合いが強く含まれています。

つまり、タレントマネジメントとは、人材(ないしは、人財)を管理して、有効に活用、正しく育成するための手法であるということです。

また、「タレント」とは、そもそも「才能(あるいは、才能を持つ人)」を表す言葉です。ですから、「タレントマネジメント=才能を管理して、有効に活用するための手法」ととらえたほうが分かりやすいかもしれません。

【2】タレントマネジメントの取り組みとは

では、「才能を管理・活用する」というのは、具体的に、どのような取り組みを指しているのでしょうか。

結論から先に言えば、それは、才能を持つ人(=人材)の「掘り起こし」「見える化」「育成」、そして「有効活用」です。

例えば、タレント事務所では、タレントの“たまご”を発掘して、育成によって才能を伸ばす一方で、所属タレントの能力を常に把握し、管理します。そして、タレント各人の能力が最大限に活かせるような仕事をアレンジして成功を後押しし、それを事務所の収益へとつなげていきます。

企業におけるタレントマネジメントの考え方も基本的にはこれと同じです。

個々の従業員が持つ能力・スキルをとらえながら、適切に育成して、自社の従業員を会社にとっての真の戦力、あるいは財産(つまりは、人財)へと変えていきます。そして、それぞれの才能が最大限に活かせる仕事をアレンジして、従業員と組織の成功につなげていくというわけです。


【3】人事部門とタレントマネジメントとの関係とは?

大抵の企業では、人材を採用して、定型的な社員研修を実施するのは、人事部門の仕事です。ただし、人材が各部門・部署に配属された以降は、人材の育成は基本的に配属先の現業部門に委ねられます。また、人材の能力を見極めたり、人材の成長度/パフォーマンスを評価したりする業務も、多くの場合、人材が働く各部門のリーダー、ラインマネジャーに一任されています。

その意味で、実質的なタレントマネジメントを遂行しているのは、実のところ、現業部門であって人事部門ではないということになります。

しかしながら、タレントマネジメントの考え方は、このような“現場任せ(あるいは、現場への丸投げ型)のタレントマネジメント”を否定するものでもあります。

というのも、人材の育成・評価をすべて現場に委ねていると、結果的に、人事部門や経営から、従業員各人の能力・才能が見えづらくなり、組織全体を俯瞰した人材活用の戦略が立てられなくなるからです。また、企業には、会社としてどのような人材を育成したいかの戦略があるはずです。ところが、人材育成を現場任せにしていると部門最適の考え方に陥りがちで、企業戦略としての人材育成の遂行も困難になる可能性があります。

言うまでもなく、現業部門は、基本的に自部門の成功やパフォーマンスアップを第一に考えます。そのため、あまり会社組織全体を俯瞰して、足りない人材の育成や適材適所の人事戦略を考えようとはしないものです。実のところ、それはタレントマネジメントの考え方とは真逆の発想とも言えます。したがって、タレントマネジメントは、あくまでも人事部門がイニシアチブを握り、経営と業務部門を巻き込み、バランスを取りながら推進していかなければなりません。

加えて言えば、従業員各人の能力やスキルを把握して、能力を開発したり、スキルを高めたり、適材適所の人事を行うというのは、実は、人事部門の本来的な仕事とも言えます。

だからこそ、かつての人事の世界では、相当数の社員がいたとしても、全社員の学歴、能力、適性、趣味嗜好、家族構成に至るまで、すべてを記憶し、その情報を常にアップデートできている担当者が人事のプロとされてきました。その意味で、タレントマネジメントは決して特別な取り組みではなく、古くから人事部門の基本的な役割の一つだったと言えるかもしれません。


【4】タレントマネジメントが注目を集める理由とは?

ここ数年来、タレントマネジメントに対する日本企業の関心が高まっています。

その理由の一つとして挙げられるのは、少子高齢化です。この社会的な問題の影響によって、今日の日本では、中堅・成長企業を中心に、人材採用の難度、とりわけ、若い世代を採用する難度が高まっています。

例えば、厚生労働省(厚労省)の調べ(*1)によると、2017年における大卒者の有効求人倍率は1.74倍で、従業員数1,000人未満の企業の場合は2.39倍、300人未満になると4.16倍に上ったといいます。要するに、日本の企業全体でおよそ2社に1社、1,000人未満の企業であれば約2.5社に1社、そして、300人未満の企業では4社に1社しか大卒者が確保できなかった計算になります。しかも、この傾向はなおも厳しさを増し、ある民間企業の調査によれば、2020年における大卒求人倍率は1.8倍を超え、300人未満の企業では8倍を大きく超えているようです。

*1 参考:厚生労働省「平成29年度全国キャリア・就職ガイダンス」(平成29年6月20日公表)


さらに悪いことに、若い世代の企業への定着率もあまりよくありません。例えば、日本の大卒者の場合、入社3年目までの離職率が(企業規模の大小によらず)30%前後という高い水準にあるようです(厚生省調べ*2)。つまり、企業の人事部門が苦労のすえに獲得した大卒者のおよそ3人に一人は、3年後に会社から姿を消しているのが現実です。

*2 参考:厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況


このような時代においては、現有人材の能力を最大限に活かすことが必要になります。また、採用した人材や有能な人材の離職率を可能な限り下げることの重要性も増しています。そうしたことが、結果として、タレントマネジメントへの期待につながっているわけです。

では、現有人材の能力を最大限に活かす、あるいは、人材の離職率を下げるという課題に対して、タレントマネジメントはどのような役割を担えるのでしょうか。

この疑問に対する答えの一つは、情報の管理と見える化です。

タレントマネジメントの取り組みは、人材の経験、能力、スキルに関する情報を収集し、それを可視化することが初めの一歩となります。これにより、タレントの在り処をつかみ、適材適所の要員計画につなげたり、人材に足りていないスキルギャップを明らかにして、適切な育成プランを立てたりすることが可能になります。

また、離職率の低減に向けては、例えば、各部署に配属された新人たちが日々どのように働き、指導を受け、それが、どのようなパフォーマンスの向上や能力の向上につながっているのか、あるいは、日々の仕事の中で、どのような想い・本音を抱いているかを収集して、管理します。また、彼らの能力や働きと、評価・報酬との関係情報を組織横断で収集して時系列で管理します。

こうすることにより、新人たちがどのような職場環境の中に置かれているか、それぞれの能力・働きと評価・報酬とのバランスを可視化できるようになります。その情報と、各人の働く意欲や離職/定着の情報などとを照らし合わせることで、離職率低減に向けた有効な施策が見えてくるのです。


【5】タレントマネジメントに必要なITシステムとは?

上の記述から、タレントマネジメントに必要なITシステムとは何かは、お分かりいただけたかもしれません。それはすなわち、人材に関するあらゆる情報を一元的に管理するシステムです。例えば、以下のような情報が主な管理対象になります。
  • 基本属性(氏名、生年月日、性別、国籍、など)
  • 経歴(学歴・職歴)
  • 趣味・特技
  • 所属/職位
  • 報酬(給与情報)
  • 異動・昇進履歴(キャリア実績)
  • 全職歴
  • 業績履歴
  • 人事評価考課履歴
  • 上司との面談記録
  • スキル/資格
  • トレーニング受講履歴
  • 仕事に対するアンケート履歴
  • 今後のキャリア志望
上記のうち、「基本属性」「経歴(学歴・職歴)」「所属/職位」「報酬(給与情報)」は、従来からの人事システムでも管理されてきたものです。ただし、その他の情報については、個別のシステムの中でバラバラに管理されているのが一般的で、なかには、人事部門で管理の対象としてこなかった情報もあるかもしれません。

タレントマネジメントシステムは、そうした情報も含めて、人材にかかわるあらゆる情報を一元的に管理して、人材の能力や可能性、社内での状況・状態、さらにはモチベーションをいろいろな角度から可視化します。それを通じて、組織のリーダーや人事部門による人材の発掘・育成・ケア・有効活用を支援するというのが、タレントマネジメントシステムの基本的な役割となります。

タレントマネジメントシステムには、もう一つ、大切な役割があります。それは、情報の収集です。例えば、上述した「趣味・特技」「仕事に対するアンケート(履歴)」は、従業員から直接収集しなければ入手できない情報です。

そのため、タレントマネジメントを支えるシステムは、こうした情報を収集する作業を支援する機能を備えていなければなりません。

また、「人事評価考課」の情報にしても、タレントマネジメントシステムのデータベースにそれを取り込むには、「人事評価考課」、あるいは目標設定・達成度評価のプロセス自体をシステム上で行わせるための仕組みも必要とされます。

加えて、先に触れたとおり、タレントマネジメントは、人事部門が中心となりながら、経営と現業部門が一体となって推進すべき取り組みです。

ですので、それを支えるシステムは、人事部門だけではなく、経営層や現業部門のすべてのリーダーが有効に活用し、従業員の能力やスキルを確認して、組織強化の施策に役立てられるようでなければなりません。もちろん、一般の従業員にもシステムを開放し、各自の評価や目標達成度、パフォーマンスの確認に使えるようにすることも必要です。まとめれば、タレントマネジメントのシステムは、全従業員のための人材情報システムとして機能できる仕組みでなければならないということです。


【6】なぜ、Excelではタレントマネジメントが行えないのか?

ところで、タレントマネジメントに向けて、上述したような人材情報をマイクロソフトの「Excel」で管理しようとする方もいます。ただし、Excelはあくまでも表計算ソフトであって、情報を管理するために作られたデータベースシステムではありません。ですので、Excelを、タレントマネジメントシステムの代替として機能させるのには無理があります。

以下、タレントマネジメントを行ううえでのExcelの難点についていくつか紹介します。

難点1 管理項目を増やすとすぐにシートが巨大化する:
先に触れたとおり、タレントマネジメントでは、多岐にわたる項目の情報の管理が必要とされます。このような情報をExcelのシートで一括して管理しようとすると、シートがすぐに巨大化します。結果として、可視性がすこぶる悪く、データの検索も非常にしにくい一覧情報になります。

難点2 記録を時系列で管理するのが苦手:
例えば、「異動・昇進履歴」「業績/人事評価考課履歴」「上司との面談記録」などの情報は、ときとともに変化していくデータです。また、いずれも“履歴”情報ですので、過去の情報も、記録としてきちんと管理していかねばなりません(つまり、上書き更新による情報管理はできません)。
Excelのファイルにおいて、このような多項目にわたる履歴情報を管理していくのは難しく、単一のファイル内でそれを行おうとすると、巨大で複雑な表の一群が出来上がります。ゆえに通常は、個別のファイルでそれぞれの履歴を管理していくことになりますが、それではタレントマネジメントのために、いちいち複数のファイルからデータを集めてくる手間が発生します。それは、タレントマネジメントのシステム化とは呼べないのです。

難点3 データに対する権限を細かく制御できない:
Excelでは、データベースシステムのようにデータごとの閲覧・編集(入力・更新)権限が制御できません。これは、タレントマネジメントのための情報管理ツールとして致命的な問題です。
前述したとおり、タレントマネジメントシステムは、人事部門の特定の役職者だけが使うシステムではなく、全従業員が使うシステムです。ですので、従業員の職務、職位などに応じて、見せるデータと見せないデータ、編集可能なデータと不可能なデータなどを、細かく制御できなければなりません。
例えば、一般の従業員に対しては、自分の情報以外は見せないようにする必要があるはずです。一方、組織のリーダー層に対しては、部下たちの人材情報は組織横断で開示するのがタレントマネジメント的なアプローチと言えますが、リーダー同士については、一部のデータ(例えば、報酬情報など)をクローズにしたいことがあるはずです。
このような細かなデータの制御は、Excelではできません。仮に、同様の制御をExcelで実現しようとした場合、情報を開示する相手に応じて個別にファイルを作り、送付する以外に方法はないと言えます。こうしたデータの運用はとても煩雑ですし、工数が膨大になり、現実的ではありません。

難点4 ファイル単位でしかデータが管理できない:
Excelではファイル単位で情報を管理します。そのため、データを一つ変更するにも、いちいちファイルを開いたり、閉じたりしなければなりません。仮に、ファイルが巨大であった場合、非常に面倒な作業になります。


Excelは一覧形式で情報を整理するうえではとても便利なツールです。ですので、例えば、人材のスキルや経歴、特技、業績などを洗い出し、部署ごとに整理して、Excelを使い一覧形式でまとめれば、タレントマネジメントに向けたはじめの一歩となりうるかもしれません。
ただし、それはあくまでも、特定時点の人材情報をまとめただけの表であり、それを見せられた側は、現状は理解できても、なぜそうなったかの背景はつかめず、結果、これから自分が何をどうすべきかの判断もつかないはずです。

タレントマネジメントという継続的な取り組みを支えるには、人材の変化と、変化をもたらした因子がとらえられるようなデータベースが必要とされるのです。


【7】補足:SAP SuccessFactorsでできること

以上、タレントマネジメントとは何かから、タレントマネジメントに必要とされるITシステムの要件について、Excelも例にとりながら説明しました。

ということで、本稿の最後に、タレントマネジメントシステムの代表的な一つであるSAPのフルクラウド型人事ソリューション「SAP SuccessFactors」について簡単にご紹介しておきます。

SAP SuccessFactorsは、企業内に散在していたさまざまな人材情報を一元管理し、人材の見える化──つまりは、「才能の在り処」の見える化を実現する仕組みです。

またそればかりではなく、過去の評価や実績から人材の能力や可能性を正確に区分けしたり、AI(人工知能)技術によるデータ分析によって、特定のプロジェクトを推進するチームのメンバーとして、誰が適任なのかを推奨したりする機能も構築可能です。さらに、それを人材開発プログラムの適正化・改善に役立てることも可能です。

そうしたSAP SuccessFactorsが提供するタレントマネジメントの基本機能をまとめると、次のとおりとなります。

1.人材の発掘と育成、定着支援
  • 採用管理:要員計画に基づいた採用活動を支援する。SNSを通じたスカウティングの機能も提供
  • 後継者管理:部下の業績/スキル情報などに基づき後継者候補を割り出す機能。候補者のスキルと職位とのギャップを分析して、必要とされる育成プランの立案も支援
  • 報酬管理:従業員の業績に応じた適切な報酬を定めて、人材の定着率向上に寄与する機能
  • 社内教育管理:各種研修における学習プロセス管理と学習環境の提供を支援する機能
2.適材適所の人材活用支援
  • 8目標管理:経営戦略/ビジョンに基づく従業員の目標設定と、達成度合いを管理するための機能
  • 要員計画:さまざまな人材情報に基づく人材配置の意思決定を支援する機能
以上のように、SAP SuccessFactorsでは、組織におけるタレントマネジメントに必要とされる機能を網羅的に提供しています。タレントマネジメントによって人材難を克服して新たな成長・発展に向けた一歩を踏み出す──。SAP SuccessFactorsなら、そうした人事の戦略を全方位で支援できます。

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