デジタル変革がもたらす、新たな事業の創出と持続可能な社会の創造

企業におけるデジタル変革は、クラウドコンピューティングやAI(人工知能)、IoTなどのテクノロジーを活用し、新たな成長戦略や価値を創造することを指します。新しいシステムを導入して既存の業務を効率化することだけが目的ではありません。ここでは、企業がデジタル変革を進める際の課題とそれを克服する方法、そしてデジタル変革の先にはどのような社会が訪れるのかを考えてみましょう。

デジタル変革 (DX)とは

デジタル変革(=DX【デジタルトランスフォーメーション】)とは、デジタルテクノロジーを利用して、企業や社会をより良い方向へ導くという考え方です。センサーなどの電子機器やAI、データ解析といった情報技術の普及によって、あらゆる事象をデータ化して有効活用する動きか活発化しています。
たとえば、顧客の購買行動を個別に捕捉・分析することで、顧客からのオーダーを待たずに適切なタイミングでの商品の提案も可能となりました。また、鉄道会社が車両や駅構内にセンサーを取り入れ、乗客や車両の状態をリアルタイムにデジタルデータ化し、コンピューティングリソースを使って分析することで、効率的な運行計画を立てたり、機器の保守に役立てたりすることができます。
製造業においても、工場の生産ラインに知性を持ったロボットを導入することで、より効率的な部品を考案し、3Dプリンターによって改善した製品をスピーディーに製造していくことも可能となっています。
このように、デジタルテクノロジーを取り入れることで、顧客との接点や生産・物流の現場でデータを取得・分析できるようになり、これまでになかった気づきを得て、新たな取り組みに応用し始める企業も増えてきています。このデジタル変革は、あらゆる業界において有効であると期待されています。

日本企業・社会におけるデジタル変革の現状

2018年の世界各国のGDPランキングで、日本は米国、中国に次ぐ3位です。しかし、製造業などのものづくりにおいては得意な日本ですが、デジタル活用という面では世界に大きく後れをとっています。スイスのビジネススクールIMDの「IMD World Competitive Center」が2019年に発表した世界デジタル競争力ランキングにおいて、日本は23位でした。デジタル活用の後れを挽回すべく、日本政府もIT戦略をまとめ、国をあげたデジタル活用社会の構築を目指しているというのが現状です。

デジタル変革に向けた経営陣の意識改革が重要

経済産業省では、2018年に産業界のデジタル変革推進のための有識者による研究会「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を実施し、その課題と対応策を議論しました。この研究会のレポートの中で、デジタル変革をしていく経営戦略が不可欠である一方で、方向性を模索しているばかりでいっこうにビジネス改革につながっていないという実態が示されました。

また、これまで利用してきたITシステムが老朽化・複雑化していることも、デジタル変革が進まない原因としています。企業がそれぞれ独自に開発・運用・改修してきたシステムは、多重下請け構造に起因したマネジメントの欠如によりブラックボックス化し、その全貌や個々の機能の意義が不明な状態に陥っています。その結果、新しいシステムや外部のサービスとの連携が困難となっているのです。

コンピューティング基盤をサービスとして利用可能に

日本の産業界がITシステムの老朽化やノウハウの継承ができない状態に陥ってしまった一方で、Amazon (AWS)やGoogle (GCP)、Microsoft (Azure)など、クラウドコンピューティング環境をグローバルに展開する事業者が躍進してきました。当初は、サーバーやネットワーク、OSなどのコンピューティングリソースを提供するだけだったものが、データベース連携、データ解析、AI、IoT連携のほか、統合基幹システムであるERPや会計といった各種業務アプリケーションにも対応するなど、急速な進化を遂げています。

これまでのように、機器を調達してシステム基盤をゼロから構築するよりも、これらのサービスを使いたいときだけ使う、というやり方のほうが初期投資を抑えられます。加えて、メンテナンスやノウハウの伝承も含めたIT投資効果を高めることが期待できます。現在、日本政府が利用する情報システムではクラウドサービスの利用を第一候補として検討をするようになっています。

デジタル変革のメリットとデメリット

コンピューティングリソースや各種アプリケーションのサービス化により、人の力を超えた処理や便利な仕組みを次々と利用できるようになりました。ではこうしたテクノロジーの活用は、企業にどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メリット(1):新たな気づきから得られる新事業への参入

企業におけるデジタルデータの活用のメリットに、新商品や新事業の創出があります。例えば普段の業務において、顧客との取引状況を「全体動向」「個別動向」両面から分析し新たなニーズを予測できます。一旦納品済みの商品からも、センサーや情報端末など、さまざまなチャネルから大量のデータを取得し、蓄積・分析する仕組みを加えることで、これまでは気がつかなかった顧客の傾向をとらえ、新商品や新事業開発に役立てることができます。顧客に寄り添いさらに満足度を高める商品を提供したり、新しい市場への参入を目指せるのです。

メリット(2):共有可能な社内データ資産の蓄積と、それを活用した組織の強化

データ資産によって、これまでの事業経験にとらわれない柔軟な発想や協創のための環境も構築できます。企業活動において生まれるデータをクラウド上に蓄積することは、部門内で閉じることなく、社内の各部門においても共有できるようになるため、データを社内の資産としてこれまで以上に活用可能となります。さらに、外部にデータを公開することで生まれる協業など、自社のデータを中心とした新たなエコシステムの構築も期待できます。

デメリット(1):デジタル変革のためのイニシャルコストとランニングコスト

デジタル変革のためにさまざまなテクノロジーを導入・運用するにはコストがかかります。新しいシステムを導入し、人員や体制を整えたからといって、その投資に見合った事業の成功が約束されているわけではありません。

デジタル化そのものを目的として新しい仕組みを導入するのではなく、まずは、経営戦略や市場や現場にある課題を明らかにし、それを解消する仮説を立て、必要なテクノロジーの導入を検討しましょう。検討の過程ではできる限り定量的な指標を設定し、従量課金のクラウドサービスを必要最小限だけ導入して検証していくなど、段階を踏んだ導入を繰り返していくことが有効です。

デメリット(2):データ管理に伴うセキュリティリスク

デジタルデータはオンラインやコンピューターシステム上で容易に共有できることが良い面である一方、漏えいや悪用といった情報セキュリティに関するリスクも高まることを理解しておきましょう。顧客が情報漏えいの被害者になったり、従業員が攻撃対象となったり、あるいは退職を予定している従業員が機密情報を持ち出したりする危険性も高まります。ISO/IEC 27001など、国際基準のセキュリティマネジメントに準拠し、インシデント発生後にも早期復旧できる体制を構築する必要があります。

経産省は、先に挙げた「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」のレポートを踏まえ、「DX推進ガイドライン」を公表しました。これは、デジタル変革の実現やその基盤となるITシステムの構築を行ううえで経営者が行うべきことや体制・仕組みづくり、実行プロセスが記されています。

DX推進ガイドライン
図)DX推進ガイドライン

出典:経済産業省 デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)

デジタル変革が目指す社会とは

日本政府が提唱する未来社会のコンセプトに「Society 5.0(ソサエティー5.0)」があります。サイバー空間と現実空間を高度に融合したシステムにより、エネルギーや食糧問題、高齢化、産業の国際競争力、富の再配分といった、経済発展と社会的課題の解決を両立していくというものです。

経済産業省は、Society 5.0実現の鍵となるテクノロジーとして、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットを挙げています。企業には、これらの技術を活用したデジタル変革によって、新たな価値を創出し、持続可能な社会を創造していくことが求められているのです。

SAPは、自身がこれまで度重なる変革をしてきた企業です。そしてSAPジャパンは、日本社会のデジタル変革に欠かせない存在となることを目指し、デジタルエコシステム創造のためのイノベーションコミュニティの運営、日本製インダストリー4.0、クラウド活用の推進、顧客や従業員の両方の体験を向上していくエクスペリエンス・マネジメントといった取り組みを重点的に行なっています。

デジタル変革によって生まれ変わる

冒頭で、日本のデジタル化は諸外国に後れをとっていると触れましたが、いままさに官民一体となって活用推進をしている最中です。日本の組織は、方向性が決まりさえすれば、その後は皆が一丸となって高速に物事を進めていく能力が高いとされています。自社のビジョンを明確にし、そのためのデジタル変革を実現していきましょう。

SAPでは、クラウド対応のERP製品や関連業務アプリケーションの機能を最大限に活用いただけるよう、ご提案から、システム導入、稼働後のサポートに至るまで、担当するすべての社員を集約し、お客様のデジタル変革の支援体制を構築します。構築だけがSAPの仕事ではありません。お客様に寄り添いながら、デジタル変革をチーム全員でサポートしてまいります。

▼DXの先進事例を読む「どうする、わが社のDX!?」そんな悩みに答える実践ノウハウ&成功ポイント

参考リンク
世界各国のGDPランキング
IMD World Digital Competitiveness Ranking 2019
世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画
産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進
標準ガイドライン群・政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針
内閣府:Society 5.0とは

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