ファーストコールカンパニーを目指すコイズミ照明 RISE with SAPを採用してサプライチェーンを最適化

コロナ禍に端を発した半導体不足などが続く中、サプライチェーンの最適化が急務となっています。大阪市に本社を置き、住宅・店舗施設向けの照明器具の企画、開発、製造、販売を手がけるコイズミ照明株式会社はファブレスメーカーから本格的な製造業への転換を見据え、SAP S/4HANA Cloudを中核とするクラウドオファリング「RISE with SAP」を採用し、生産・販売・在庫(PSI)の管理による適正な供給量の確保に向けて取り組んでいます。

コイズミ照明株式会社 代表取締役社長 佐久間晋氏、常務取締役 購買生産管理本部長 𠮷村典之氏

DXと事業ポートフォリオの変革に向けて基幹システムを刷新

300年以上の歴史を誇る小泉産業グループの事業会社であるコイズミ照明。光の質にこだわった提案活動に力を注ぎ、2021年度より3つの変革を柱とする3カ年の中期経営計画を進めています。柱の1つはDXで、顧客本位のスピード経営に向けてAIなどの技術を組み込んで業務プロセスを改革し、データ活用を加速する方針です。
もう1つの柱は、事業ポートフォリオのトランスフォーメーションです。「現在の売上構成は、住宅市場向けが大半を占めています。今後、成長市場である店舗・施設市場向けの売上高約5割を目指して、2017年に竣工したコイズミ照明R&Dセンターでのモデル展示や、最新の照明制御システム(DALI)を応用したソリューションの開発などに取り組んでいます」と、代表取締役社長の佐久間晋氏は語ります。
このような変革を推進するうえでの課題は、30数年にわたってメインフレームで運用してきた基幹システムでした。
「生産を100%子会社や協力会社(EMS)に委託するファブレス経営を進めてきた当社は、協力会社を含めた生産・販売・購買・会計の業務プロセス改革を見据えています。しかし従来の基幹システムは商社・卸売業に特化したもので、生産系システムは基幹システムの周囲に手組みのシステムを複数構築していました。そのため部品調達に向けた所要量計算をスピーディに実行できず、お客様の要望にタイムリーに応えることが困難でした。そこで、基幹システムを刷新して課題解決に取り組むことにしました」(佐久間氏)


長期の販売計画を管理しながらサプライチェーンを最適化

商社・卸売業に特化した従来の基幹システムでは長期の販売計画の管理ができず、在庫状況や過去の実績、直近の入荷予定などをもとに生産管理部門が販売数を予測しながら、製造子会社やEMSに生産を委託していました。ただし製造子会社やEMSに生産委託できるのは2カ月分の販売計画数のみで、途中で計画外の生産を依頼することも多く、製造子会社やEMS側の負担も大きくなっていました。
そこで、新たな基幹システムでは長期の計画を製造子会社やEMSと共有し、部品の調達や供給を最適化しながら生産する体制を目指しました。
「コロナ禍に端を発した半導体不足が続く中、従来の業務プロセスでは先行きの予測に限界がありました。特に当社が事業ポートフォリオの拡大を目指している店舗・施設向けの商材は、納期が年単位となるものもあります。計画生産が主体の住宅向けの商材と比べて、店舗・施設市場向けの商材は受注生産もあり、受注件数も小ロットから大ロットまで幅広くなります。そこで新システムでは、過去の出荷実績や営業部門が持っている商談情報などに基づいて生産数を決定する業務プロセスに移行することにしました」と、常務取締役 購買生産管理本部長の𠮷村典之氏は語ります。

受注生産から見込生産まで幅広く対応できるRISE with SAPを採用

コイズミ照明は複数のパッケージ製品を検討し、RISE with SAPを選定。コアのERPにはSAP S/4HANA Cloud, private edition(以下、SAP S/4HANA Cloud)、需要予測や販売計画の管理にはSAP Integrated Business Planning for Supply Chain(SAP IBP)、予算管理にはSAP Analytics Cloudを採用しています。選定の理由についてDX推進部 部長の藤田一朗氏は次のように語ります。
「サプライチェーンマネジメント(SCM)に強い製品を比較し、受注生産から見込み生産まで幅広く対応できること、当社の課題を解決できること、簡易Fit & Gapでの適合率の高さなどを評価しました。アマゾン ウェブ サービス(AWS)を基盤としたクラウドサービスとして提供されることもポイントになりました」
システム刷新にあたっては、プロジェクト開始前に外部のコンサルタントを交えてAs-Is(現状)とTo-Be(あるべき姿)について念入りに議論したといいます。
「約1年間、構想フェーズとして既存の業務プロセスを整理し、将来のあるべき姿を徹底的に議論しました。その結果、RISE with SAPならリーズナブルなコストで導入可能という判断に至りました」(藤田氏)

SAP S/4HANA Cloudとスムーズに連携するSAP IBPを採用

需要変動を踏まえた中長期の生産・販売・在庫(PSI)計画に向けて採用したSAP IBPは、インメモリー技術を基盤としたクラウド型のSCMソリューションで、複数のシステムからデータを収集して中長期の実行計画を作成できます。
「決め手は基幹システムとのスムーズな連携です。SAP S/4HANA Cloudから過去の出荷・在庫実績などを取得し、需要を予測して販売計画や供給計画を調整して、結果を再びSAP S/4HANA Cloudに取り込んで所要量計算を実行するなら、同じSAP製品であるSAP IBPを選ぶのが最適と考えました。また、製造子会社やEMSとのコミュニケーション基盤としても利用可能なクラウドサービスで、計画立案中の画面を一緒に見ながら調整できることもポイントになりました」(藤田氏)
SAP IBPの計画画面はExcelベースでユーザーも親しみやすく、考え方や機能を理解すれば簡単に操作方法を習得可能で、ユーザー教育の多大な負荷もかかりません。
「導入前にデモ画面を何度も確認しましたが、日常業務で使っているExcelの延長線上で複数の情報を参照しながら、綿密な需要計画を立案したり、在庫計画や供給計画を調整したりできる点が魅力でした」(藤田氏)


Fit to Standardを基本方針に標準機能を活用

RISE with SAPの導入プロジェクトは2022年4月にスタートし、12月までに適用設計フェーズのFit & Gapや業務フローの作成を完了。引き続き基本設計を進め、2024年4月の本稼働を予定しています。SAP S/4HANA Cloudの導入モジュールは財務/管理会計、販売管理、在庫/購買管理、生産管理で、導入チームはモジュールごとに業務担当者とDX推進部のシステム担当者で構成しています。
「業務部門から部長クラスの意思決定者とエース級の社員を配置して早期の意思決定を目指しています。基本方針はシステムに業務を合わせるFit to Standardとし、生産領域を中心に標準機能の活用を徹底します。また、計画系のSAP IBPと実行系のSAP S/4HANA Cloud、それぞれの役割を正しく理解できたため、需要予測系の導入チームと共に基本設計、詳細設計を進めていきます」(藤田氏)

長期計画に基づく適正な供給量を確保し、お客様満足度の向上へ

生産機能を備えた新基幹システムの稼働により、PSIの適切な管理を実現できる見込みです。SAP S/4HANA Cloud移行後は、現在数日を要しているMRPの計算時間を一晩程度に短縮し、生産計画が変更された際にも即座に再計算して対処できるようにします。製造子会社やEMSにも長期の計画が提示されるため安定した部品調達が可能になり、同社からの要求にもスムーズに応えられます。これらにより取引先の満足度向上、製造子会社やEMSの負担軽減につながると期待しています。
「長期の販売計画を策定することで部品調達時の品切れを防ぎ、取引先には安定した製品供給が可能になります。製造子会社やEMSにとっても経営の安定化につながります」(𠮷村氏)
新基幹システムの稼働後は、SAP S/4HANA Cloudに蓄積していくデータを活用しながらDXを推進し、ビジネスの永続的な成長につなげていきます。
「システム刷新をきっかけにデータを活用する意識を社員に根付かせ、リスクが多い状況下でも、弱点を克服しながら競合他社との差別化を図り、CO2削減といった企業責任も果たしながら事業を拡大していきます」(𠮷村氏)
新基幹システムが稼働する2024年からの次期中期経営計画に向けては、アジアを中心とした海外戦略を推進していく構想です。
「データを活用しながら経営資源を適切に投入し、海外で活躍できる人材も育成します。照明事業を通して豊かな未来を創造し、お客様の信頼を獲得するファーストコールカンパニーを目指していきます」(佐久間氏)
RISE with SAPによってサプライチェーンの最適化に踏み出したコイズミ照明の取り組みは、多くの製造業にヒントをもたらすはずです。

>コイズミ照明株式会社 RISE with SAP導入事例 資料ダウンロードはこちら

関連タグ