人・組織・企業の変革に取り組むエイト日本技術開発、SAP S/4HANA Cloudでバリューチェーンを一元化

道路、河川、都市などの社会インフラを計画・調査・設計・管理の側面から支える建設コンサルタント業界は、産業振興、国土強靱化、脱炭素などのニーズを背景に、安定した国内市場を維持しています。一方、建設業界全体では少子高齢化による労働力不足や人材育成、国際市場に対する国内市場でのデジタル化の遅れ、サイバーリスクへの対応などが課題となっています。 総合建設コンサルタントの株式会社エイト日本技術開発はこうした課題に向き合い、人、組織、企業の変革を加速するため、SAP S/4HANA Cloud(パブリッククラウド)を採用し、DXプロジェクトを推進しています。

次世代創造企業への変革を目指してDXプロジェクトを立ち上げ

岡山に本店、東京に本社を置き、全国に支社を展開するエイト日本技術開発は、東証プライム上場のE・Jホールディングス傘下の建設コンサルタントで、建設コンサルタンツ協会所属の498社中、建設コンサルタント部門の売上でトップ6(2022年4月)に位置しています。1955年に測量会社(エイトコンサルタント)からスタートし、2007年に日本技術開発と共同持株会社E・Jホールディングスを設立して経営統合を果たしました。2009年に現社名に商号変更し、現在はホールディングスの主要事業会社として、環境、防災・保全、行政支援をコアコンピタンスとしながら、環境エネルギー、自然災害・リスク軽減、都市・地域再生、インフラメンテナンス、公共マネジメント、デジタルインフラソリューションの6つを重点分野に事業を展開しています。
次世代創造企業を目指す同社の「EJEC長期ビジョン2030」は、内閣府が定めた2021~2025年度の第6期科学技術・イノベーション基本計画で規定しているSociety 5.0の社会実装と4つの国家像(脱炭素社会、価値創造(DX)、社会と組織の強靱化、時間と資源の無駄削減)と連動するものです。「現在は未来の基盤づくりに向けた第5次中期経営計画(2021~2024)を推進中で、基本方針として『ESG経営の推進』『コア技術の深化・新分野への進化』『バリューチェーンの進化』『イノベーションカルチャーの醸成』を掲げて変革に取り組んでいます」と、取締役 常務執行役員の永田裕司氏は語ります。
このような変革に欠かせないのが、価値創造の源泉となるDXです。「バリューチェーンの一元化に向けて、さまざまな異業種との連携が不可欠となっていますから、DXを積極的に推進していかなければ他社に後れを取ってしまいます」と、代表取締役社長の小谷裕司氏は強調します。
そこで同社はDXプロジェクトを立ち上げ、オンプレミス環境で運用している9領域の既存システムを、26領域からなるクラウドシステムに刷新することを決断しました。
「旧システムの個別最適化が進んだ結果、手作業や多重入力、紙に依存した業務、人づての情報共有などの課題が生じていました。これまでの業務プロセスはExcelやメールに依存してきたために標準化が難しく、さまざまなデータをビジネスで利活用できる情報に変換する作業にも多大な労力と時間がかかります。そのため、人と仕事と資産をデジタル化・可視化し、同時に『作業偏重から思考と試行主体の働き方』へ転換を図ることにしました」(永田氏)

実績のあるクラウドソリューションを幅広く活用

同社は新システムの中核としてSAP S/4HANA Cloud, public editionの導入を決定しました。加えて、BIツールにSAP Analytics Cloud、人事管理にSAP SuccessFactors、従業員エクスペリエンス管理にEmployee Experience Management solutions from SAP and Qualtrics、経費精算管理にSAP Concurと、周辺領域にもSAPのクラウドソリューションを採用。選定の理由は、デジタル変革を推進するための基本要件を満たしていることにありました。

新システムの全体像
「建設コンサルタント業界での実績と、事業に対応可能な管理会計と財務会計が融合していること、世界的なグローバル企業に採用され、かつ当社の事業の国際化に欠かせないグローバルへの対応力を有していること、さらに人事・給与・勤怠の統合、予算管理など協調領域の充実、競争領域がパッケージ化されていることなどが決め手となりました」(永田氏)
また、総合企画本部 DX推進室 室長の藤田亮一氏は次のように語ります。「当社のような中堅企業は、現場の意向に沿って業務プロセスを構築してきましたが、それが正しいかどうかの判断は誰もできずにいました。SAPを選んだ大きな理由の1つは、グローバルで豊富な実績から定義された標準の業務プロセスがパッケージ化されていることです。パッケージ標準の業務プロセスを教科書と見立てて、活用していきたいと思っています」
さらに、セキュアで堅牢なシステム構造を持ち、情報漏洩やシステムの不具合による業務の停止・混乱などのトラブルがないこと、SAPがオンプレミスのユーザーとの対話姿勢を持ち、クラウドに移行させる技術力と組織の牽引力を備えていること、デジタル化社会へ導く変革のリーダーであり、日本市場向けに研究開発費を投入していることも評価しました。
新システムではSAPソリューション以外にも、営業プラットフォーム、DX営業プラットフォーム、名刺管理、ワークフロー、プロセスマイニング、文書セキュリティなどのクラウドソリューションを導入し、26領域のシステムで構成する予定です。

変革の起点となる「ヒトの心と活動の変化」を目指す

SAP S/4HANA Cloudの導入を中心とするDXプロジェクトは現在進行中で、2023年6月の稼働を予定しています。同社が目指しているのは、変革の起点であり終点である「ヒトの心と活動を変える」ことです。「システム導入をきっかけに、従業員一人ひとりが自分自身の仕事を振り返って見直し、システムから新たな学びを得ることを目指します。結果として、『作業偏重から思考と試行主体の働き方』への転換が実現すると考えています」(藤田氏)
同社はデジタル変革を推進する柱として、以下の5つを掲げてプロジェクトを推進しています。

  • スキルと所要量と在庫の管理
    従業員のスキルと利用可能な工数をデジタル化し、製造業のプラクティスを建設コンサルタント業界に展開する。
  • 工程とプロセスの標準化と最適化
    個人のスキルにマッチしたアサインメントの総体を組織の対応力として極大化し、人材育成の材料とする。
    「技術者は、個々の頭の中でそれぞれの工程を組み立てているため、社内でノウハウが共有化されていません。そこで経験豊富な人材の知恵をまとめて『標準工程』として保有していこうという取り組みです」(藤田氏)
  • アウトプットのデジタル資産化による再利用の促進
    個人の経験の中に埋没しがちな技術の継承を、デジタルによって実現可能なものにする。
    「これまで、後輩は先輩の働きぶりを見ながら技術を吸収するプロセスを経ることで、一人前に成長していきました。人材不足が深刻な現在は、求められるスキルを最初から並べてわかるようにしておき、それを業務の効率化、教育、人のアサインなどに活用します。ゼロからつくるのではなく、必要な情報をすべてSAPシステムの中に入れておき、その中から選ぶだけで使える状態になっていることが理想です」(藤田氏)
  • Excelとメールからの脱却によるサイバーセキュリティの確保
    システムのカバレッジを拡大することで部門間の分断を解消して生産性を向上させ、情報漏洩などのサイバーリスクを予防する。
  • ビジネスモニタリング手法の刷新と規定・ルールのデジタル化
    組織と個人の課題が明らかになる前の段階から、市場の特性、情勢や個人の特性に即した規定・ルールの柔軟な運用を実現する。

次世代に向けて価値ある環境、未来、持続可能な社会を作り上げていく

新システムの導入により得られる期待効果として同社は、リアルタイム経営の実現、全体システムと統合された人財管理、標準工程に基づく人材育成、スキルの在庫管理に基づく応札判断の4つを挙げ、今後のビジネスに活用していく考えです。
「次世代に向けて価値ある環境、未来、持続可能な社会を作り上げていくことが、今回のシステム刷新によって見据えている将来展望です。今の業務をデジタル化して置き換えるだけでなく、DXを通じて新しい働き方改革を進めていくことが、私たちに課せられたミッションであると思っています」(小谷氏)
次世代創造企業への変革に向けて、SAPソリューションを中心としたクラウドシステムの導入を進めるエイト日本技術開発。同社のプロジェクトは、これまでにない試みとして建設業界を中心に大きな注目を集めています。

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