ERP導入で効果が出やすい企業と運用成功の秘訣

あらゆる業務データの一元管理と、リアルタイムな情報の可視化が可能なERPは、今ではどのような企業にも重要なツールと言われています。中でも、特に効果が出やすいとされているのが中堅・中小企業です。本稿では、中堅・中小企業がERPを導入すべき理由と、実際の導入において気をつけるべきことなどを成功事例/失敗例を紹介しながら説明します。

※ 本記事は2018年3月に掲載された記事を、加筆・修正したものです。

なぜ中堅・中小企業こそERPを導入し使うべきなのか


中堅・中小企業は、その規模から意思疎通がしやすく、黙っていても常に同じ目標を目指せる、情報も雰囲気も統一された環境がメリットの1つです。しかしコロナ禍でテレワークが推奨される中、一声かければ必要な情報をすぐに提供してくれる信頼ある社員は社内に不在なことが増え、情報が思うように手に入りにくくなりました。

それでも競争の厳しさは変わらず、急激に社会情勢が変化する可能性も否定できません。もしかしたら、明日いきなり自社の方向性を変える必要が生じるかもしれません。そんなとき中堅・中小企業には、大企業のように新たな方向性をいくつか試す余力は少ないでしょう。

そこで今、中堅・中小企業に注目されているのがERPの導入です。
ERPとはもともと「企業資源計画(Enterprise Resource Planning)」という経営資源の有効活用を目指す経営手法を概念化したもので、これをシステム化したものが「ERPパッケージ」と呼ばれています。現在ではERPといえばERPパッケージを指すことが多く、企業の基幹システムの代表格となっています。

企業が正しい道を短期間で選択し、経営戦略を実行していくためには、自社の状況・情報を、リアルタイムにとらえる環境が必要です。ERPがあれば、全ての部門の確実な情報をリアルタイムに得て意思決定ができ、業務効率を高めることができます。
タイムリーな経営情報の可視化と業務プロセスの標準化・効率化促進には多次元経営分析が不可欠
そして中堅・中小企業にはチャンスに対して俊敏に動けるというもう1つのメリットがあります。ERPを活用して自社のあらゆるデータを一元管理し、他部門間でしっかりと情報共有を行って目標をブレさせないことで、この機動力を維持することができます。

ERP導入で気を付けるべき失敗例と対処法

では実際に中堅・中小企業がERPを導入する際には、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
ERPの導入では、多くの成功事例とともに失敗例も存在します。失敗例にはいくつかのパターンがあり、対策を打つことで失敗のリスクを低減することが可能です。

ERPの運用が定着しない

最も一般的な失敗例の一つが、既存システムに慣れている従業員がスムーズにERPに移行できず、ERPが定着できないケースです。特に ERPが定着しない理由としては「パッケージ選定のミス」や「ユーザートレーニングが不十分である」などが挙げられます。特にERPパッケージの選定は、従業員目線での使い勝手の良さが重要です。直感的に見て理解できるUIなら、ユーザートレーニングや通常業務の負荷が減ります。また、経営者視点からは経営のベストプラクティスをすぐ利用できることが重要です。導入後のビジネス的な成功は、ERPパッケージベンダーが持つビジネスシナリオの質にかかっているといっても過言ではありません。できるだけ豊富な実績と、多くの成功事例を持つパッケージベンダーの製品を選定すべきでしょう。

外部アクセスにより情報漏えいリスクが増大する

昨今では、クラウドサービス経由でERPを利用できる「クラウド型ERP」に注目が集まっています。しかしクラウド型はインターネットを利用する特性上、セキュリティが最大の懸念事項になります。モバイル端末による社外からのアクセスも活発に行われるため、情報漏えいのリスクも増大します。この場合は、強固なセキュリティ機能を持つERPパッケージの選定や、導入時のセキュリティポリシー策定などによってセキュリティを確保しましょう。

また、本社内に設置されたオンプレミス型ERPへ子会社のクラウド型ERPが接続する場合も、セキュリティ対策が必要になります。この場合、本社のオンプレミス型ERP側のセキュリティ対策は企業側が、子会社のクラウド型ERP側はパッケージベンダーが実施するのが一般的です。セキュリティポリシー策定も、オンプレミス型ERPの場合は自社で行います。クラウド型ERPでは強固な接続コンポーネントを持つパッケージベンダーの選定といった対策が重要です。

社内データが可視化できるのに部署間の連携が取れていない

ERPが導入されると、多くの業務データを可視化できるようになります。しかし、可視化だけではIT環境統合や業務効率化の達成には足りません。達成に向けては部署間のデータ連携が肝になるからです。例えば、経理・財務部門にはERPを導入し、生産管理部門は旧来システムを使用した場合、ERPと既存システムの連携がうまくいかないと、全体としての基幹システムは機能しません。

こうした「連携」に関する課題解決には、経営者のリーダーシップが大切です。まず経営者が大号令をかけてERPの導入を宣言し、全社的に導入・運用を進めるようにしましょう。異なるシステムを連携するには、連携仕様の見直しや部門の垣根を超えた人材交流、相互理解などが必要です。これらが号令によってつつがなく進めば、部署間の連携もスムーズに達成できます。

ERP導入後の運用を成功させる秘訣とは

パターンごとにいくつかの失敗例と対処法について説明しましたが、これらに気を付けるだけではERP導入を成功させることは困難です。ERPの導入プロジェクトには、特に現場業務に精通した担当者や、経営目線を持った責任者、財務会計、管理会計、在庫購買、人事給与、販売・営業担当といった人材の手を借り、導入コンサルタントやエンジニア以外の人材からも知見を得なくてはなりません。

※参考記事
経理担当者からさらなる高みへ。経営力を持った真のCFOに必要な3つのポイントとは?

ERPは全社的に影響が出やすいツールのため、ERP導入の目的を明確にし、社員間の共通認識として定着させておきましょう。さらに導入プロジェクト終盤から実際の運用開始までには、以下の点に留意する必要があります。
  • ユーザーマニュアルの準備
  • 必要に応じてユーザートレーニング
いくら優秀なERPであっても、現場社員が使いこなせなくては、その効果を発揮できません。必要に応じてユーザーマニュアルの準備やユーザートレーニングを行い、新しいERPへのスムーズな移行を促しましょう。拠点間のIT環境統合を目的としている場合は、この2つの施策が特に重要です。直感的な操作が可能なUIを持つパッケージを選択すれば、マニュアル作成やユーザートレーニングの工数を削減できますし、現場社員からの抵抗が少ないというメリットがあります。

ERP導入の成功事例を大公開!

実際にERPを導入して業務改革を成し遂げた成功事例を紹介します。

A社の事例:ERP導入で決算処理を短縮化!在庫管理がリアルタイム化し、13年にわたり赤字なしの業績を維持 既存システムの老朽化が課題だった製造業界の中堅企業であるA社は、2004年からERPの迅速なデータ処理などに可能性を見出し、導入を敢行。ERP導入後は、月次決算を約2週間から2日に短縮、在庫管理の精密化といった効果が表れました。導入以来、13年にわたり四半期決算での赤字なしという驚異のパフォーマンスを叩き出しています。

B社の事例:ERP導入でシステムの効率化と「現場社員の意識改革」を実現! グローバルビジネスへの展開を見据えてERPを導入したB社では、導入によるシステム効率化以外にもメリットがありました。それは「現場社員の意識改革」です。ERPの導入後は、現場社員から「こういう使い方をすれば業務が改善する」といった意見が出るようになり、社員の成長を促す機会として意義があったと述べています。

ERPの導入・運用を成功させて、ビジネスの成長拡大へ

中堅・中小企業のメリットは、組織全体で意思の疎通をしやすいことや、チャンスに対して機敏に動けることです。そのために、自社の状況・情報を、リアルタイムにとらえるERPが役立ちます。ただし、ERPの導入には、スムーズに導入できない、情報漏洩リスクが増大する、部署間の連携が取れないなどの失敗例もあります。

このため、導入コンサルタントやエンジニアだけでなく、現場の業務に精通した推進担当者や、経営視点を持った管理層の存在が重要となり、社内の各部署に所属する人材の手を借りながら導入・運用を進める必要があります。ERP導入の目的を明確にして社員間の共通認識とし、十分な教材やトレーニングを準備して定着を目指しましょう。

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