SCMとは?導入のメリットとERPとの違いについて解説
仕入れから販売までを最適化する「SCM」と、経営資源を最適化する「ERP」。どちらもビジネスを加速させ、利益幅を広げるために導入しておきたいシステムです。しかしこの2つを混同してしまい、うまく利用できていない企業もあるようです。本稿では、企業経営に不可欠なSCMの手法やメリットを説明するとともに、ERPとの違いについても解説していきます。

※ 本記事は2018年3月に掲載された記事を、加筆・修正したものです。
問題はこれだけではありません。製造された製品がエンドユーザーに届くまでにはいくつもの企業が関わっています。これにより供給連鎖は長大化し、関連する企業間に見えないコストを生んでいます。自社がコストの最適化を図っても、ほかの企業で余剰コストが生まれることにより最終的には利益幅が大幅に減少してしまう可能性もあります。こういった無駄を省くためにも、SCMを導入し同盟企業内の統制をとり、適切な供給を実現できるよう努めましょう。
SCMでは社内外問わず製品販売における一連のプロセスを可視化できますが、あくまでサプライチェーンの最適化が目的となります。一方で、ERPは社内業務に関するすべてのデータを活用し、経営全体を可視化することができます。よって、ERPシステムにはSCMのための機能も含まれています。
SCMはERPで経営判断を行うための情報の一部なのです。SCMを含むあらゆる業務データを可視化できるERPシステムを導入することにより、生産管理だけではなく組織全体の業務を効率化できるようになります。
SAPでは、幅広い製品ラインアップによってSCMから全社の経営資源までの最適化を支援します。中堅成長企業にて、SCMとERPで価値を最大化させた事例も用意しております。ぜひご覧ください。
※参考事例
I-PEX 株式会社事例「製造業のDXを加速―工場の稼働率向上、品質管理の高度化へ 」
目次
仕入れから販売までをトータル管理し業務の最適化を図るSCM
SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、仕入れから販売までをひとつのチェーンと見なし、業務の最適化を図るマネジメント手法のことです。原料調達から製造、在庫、輸送、販売を経て、エンドユーザーに製品を届けるまでの供給連鎖には、輸送業者、小売業者、メーカーなどさまざまな企業が携わっています。SCMには、製品に関わる業務について「企業の垣根を越えてリアルタイムに情報交換ができる」という特徴があります。なぜSCMが必要なのか?
SCMを実施することで、製品を販売するために必要なあらゆる業務が透明化され、最適なコストカットが可能になります。企業にとって最も避けたいことの一つが、大量に余剰在庫を出してしまうことです。SCMを実施していない企業では、なぜ人的リソースを最大限活用できないのか、無駄な業務が生まれてしまうのかが分からず、経営が迷走してしまうこともあるでしょう。問題はこれだけではありません。製造された製品がエンドユーザーに届くまでにはいくつもの企業が関わっています。これにより供給連鎖は長大化し、関連する企業間に見えないコストを生んでいます。自社がコストの最適化を図っても、ほかの企業で余剰コストが生まれることにより最終的には利益幅が大幅に減少してしまう可能性もあります。こういった無駄を省くためにも、SCMを導入し同盟企業内の統制をとり、適切な供給を実現できるよう努めましょう。

多岐にわたるSCMのコンポーネント
SCMには、サプライチェーン計画や製品・サービスの生産、ロジスティクス、製品ライフサイクル管理、設備管理、調達など、さまざまなものが含まれています。主な項目について、見ていきましょう。- サプライチェーン計画
製品需要を予測し、それに対応するためにサプライチェーン内の全リンクを調整するプロセスです。需要予測と需要計画に加え、供給計画、資材所要量計画、生産計画、販売事業計画などが含まれます。 - ロジスティクス管理
原材料調達に始まり、製造、配送、アフターサービス、返品、リサイクルに至るまでの商品の輸送と在庫に関するプロセスです。入出荷の輸送管理、フリート管理、倉庫管理、在庫管理、顧客サービスなどの管理を行います。 - 製造テクノロジー
製造においては、品質を高めつつ無駄のない生産体制を構築しなければなりません。AIやIoTでビッグデータを収集・分析するとともに、先進的な製造機器を導入することで製造プロセスの合理化・効率化が実現できます。 - 製品ライフサイクル管理(PLM)
PLMは、構想/エンジニアリング/設計から、製造/アフターサービス/廃棄・リサイクルに至る製品ライフサイクル全般で製品を管理するプロセスです。これらのプロセスを一元管理し、コストの最適化と顧客への提供価値の向上を図ることが求められます。 - 設備資産管理(EAM)
EAM は、工場ロボティクスから配送用フリートまで、サプライチェーン全体にわたる物理的資産を維持管理するプロセスです。センサーやネットワークを活用して修理時期や故障時期を予測し、計画的なメンテナンスを実施しなければなりません。 - サプライチェーン調達
調達は、事業運営に必要な材料、商品、サービスを入手するプロセスで、その品質を管理するとともに、適正価格の交渉も行います。調達においては、過不足のないように発注ボリュームを正確に予測することが重要課題です。
SCMの3つのメリット
社内外の情報を統制できるSCM、導入することでどのようなメリットが得られるのか詳しく見ていきましょう。メリット1:適正在庫の可視化
SCMを導入することで得られるメリットのひとつとして、適正在庫の可視化が挙げられます。現在の販売状況から適切な仕入れを行い生産することで、企業のリスクである余剰在庫を減らすことが可能です。メリット2:経費を投入すべき業務が分かる
SCMは市場が求めるもの、企業内で不足しているものも可視化できます。現在何に経費をかけるべきなのかがはっきりとし、どこに人的リソースを割くべきかが分かるようになります。やみくもに生産し経費をかけるのではなく、必要な場所に必要なだけ予算を投入することができるようになります。メリット3:需要変動に対応
SCMによって市場分析と市場予測を行うことで、急激な需要変動にも対応できるようになります。常に適正在庫を予測するSCMを利用することで、需要の減少と増加どちらにも柔軟に対応することが可能です。ライフサイクルの短い製品を扱う企業にとって、SCMはもはや必要不可欠なシステムであると言えます。間違われやすい「SCM」と「ERP」の違いとは?
SCMと混同されがちなもののひとつにERP(企業資源計画)があります。ERPはあらゆる業務のデータを一元化し、ヒト、モノ、カネ、情報といった企業資源を有効活用するための計画のことを指します。SCMでは社内外問わず製品販売における一連のプロセスを可視化できますが、あくまでサプライチェーンの最適化が目的となります。一方で、ERPは社内業務に関するすべてのデータを活用し、経営全体を可視化することができます。よって、ERPシステムにはSCMのための機能も含まれています。
SCMはERPで経営判断を行うための情報の一部なのです。SCMを含むあらゆる業務データを可視化できるERPシステムを導入することにより、生産管理だけではなく組織全体の業務を効率化できるようになります。
SCMとの組み合わせで価値を最大化させるERPシステム
SCMはサプライチェーンを最適化させるのに対して、ERPは社内業務全体のデータを統合し、経営の高度化を図るもので、企業の成長にはどちらも欠かせません。組み合わせて活用することで、大きなメリットを享受できます。SAPでは、幅広い製品ラインアップによってSCMから全社の経営資源までの最適化を支援します。中堅成長企業にて、SCMとERPで価値を最大化させた事例も用意しております。ぜひご覧ください。
※参考事例
I-PEX 株式会社事例「製造業のDXを加速―工場の稼働率向上、品質管理の高度化へ 」