ERP導入で実現する、製造業に欠かせない「生産管理」と経営がダイレクトにつながるメリットとは?
生産現場の管理が完璧であっても、流通や販売時点で不備があり、それが納期や価格に悪い影響を及ぼしていたとしたら、その製品は競争力を失います。また、データ活用の得意な企業は顧客の動向を察知し、迅速な商品開発・生産・出荷をする体制を整え、素早く需要に応えています。もはや生産管理は企業全体の動きも統率しなければ成り立たないものになってきました。そのためのシステムがERPです。

※ 本記事は2018年3月に掲載された記事を、加筆・修正したものです。
日本の製造業はこれまで品質と納期を重視してきました。その結果、顧客の満足度が高ければ多少の在庫、材料費や人件費のかさみ、無理な出荷には目をつぶってきたのです。しかし、消費者のモノ離れ、世界的な価格競争の前に、そうしてもいられなくなりました。品質や納期を守りながらも生産コストを下げ、経営やビジネス資産の最適化を実現しなければなりません。つまり経営と生産管理の一体化です。それを可能にするERPシステムについてご紹介します。
その背景として、これまでは製造工程そのものにおける狭義の生産管理という視点が中心だったことがあります。しかし、製品の販売から、原材料調達における資金面やコストの管理、それらのすべてに関わるマンパワーにも配慮しなければなりません。これを広義の生産管理と捉えることができ、重要性が高まっています。広義の生産管理が必要な理由は、ニーズに合ったものをタイミングよく少量供給できる要素が求められるようになったからです。
また次のようなパラダイムの転換も重要です。
生産計画:販売・購買データ、人員計画など種々の情報をもとに生産を計画
調達計画:販売データや生産計画から、必要な部品や材料の調達を管理
工程管理:各工程にて計画どおり生産されているかを管理
品質管理:適正な品質を保って生産されているかを管理
原価管理:生産工程において、実際にかかった原価を管理
在庫管理:需要や経営計画に基づいて適正な在庫を管理
出荷管理:出荷した製品が顧客に届くまでの情報を管理
生産管理システムを導入するメリットは、生産の効率化です。Excelファイルへのデータ入力や、メールのやり取りなど、属人的となっていた生産現場におけるデータ収集作業を自動化することで、ミスを減らしながら業務の効率化を図ることが可能となります。このように、システムを活用して生産の工程における個々の状況をなるべくたくさん集め、効率化していくことが、事業戦略に基づいた生産計画の実行と収益の拡大につながるのです。
ただし、生産管理システムを導入していても、それが長期間稼働している場合は注意が必要です。導入から長期間経過している古いシステムの場合、生産のための機器・機械や工程とのデータ連携がうまくいかなかったり、各種数値をデジタル化できず、目視と手入力によるデータ収集が必要であったりなど、意外と工数かかかっていて、それに気がつかないままかもしれません。
先進的な取り組みを進める生産現場では、センサーによるデータの自動収集やAIを使ったリアルタイム分析による自動発注・生産調整など、さまざまな新技術が採用されています。このようなシステムを導入したライバル企業に遅れをとってしまう危険性もあります。
もちろん、すぐに新しいシステムを導入するための予算を確保できない場合もあるでしょう。効果があるかどうかわからないものに予算は割けません。現在、さまざまなシステムが、利用した分だけ支払えばいい従量制のクラウドサービスに対応しています。一部からスモールスタートし、その効果を確かめた後に本格導入するというステップも可能です。
しかし、一般的に生産管理システムというのは、企業の事業全体から見ると一部分を管理していることになります。もし消費者や得意先の需要をすばやく捉えていち早く生産工程に反映、出荷できれば、ビジネスの競争力を高めることができます。これからの製造業は、工場で行われている生産だけを分けて考えるのではなく、マーケティング、営業・販売、財務、会計、人事、顧客サポートも含め、事業全体を見通せる仕組みに対応できる生産管理システムを活用できるかもポイントとなります。
ここで知っておきたいのは「生産管理システム」という事業の一部に特化したシステム以外にも、次に紹介するERPで生産管理までを包括する方法があることです。
注目されるモノのインターネット(IoT)の普及で、生産やそれ以外の現場からのデータがリアルタイムに数多く集められるようになるでしょう。そのデータを分析し、適宜学習してより正しい解を出すことができるAIが加わることで、生産性とビジネスの情報競争力が高まることになります。いわゆる「インダストリー4.0」が進むと、生産ライン、工場の枠を超えたより広い視点での管理が必要になるのです。
前述のIoTやAIにより生産現場の情報量は拡大し、処理の高度化が求められています。それらの情報も含め経営やマーケティング、流通施策にまでデータが生かせるようなリソース分析ができるERPが求められています。ERPとSCM(Supply Chain Management:供給連鎖管理)との連携で企業体としての最適化、生産の強化を進めるようにしていきたいものです。
そして同時に、ERPシステムの新規導入や刷新に取り組んではいかがでしょうか。幸い、クラウドによって思い立てばすぐにでもテスト導入・運営ができる時代になりました。システムの新規導入やリプレイスで最も負担になるのはそのコストと、導入する側の人手です。クラウドならば最小限のスタートが可能で、あとで変更したり拡大したり、期待にそぐわなければ利用を中止することもできます。クラウドベースのSAP Business ByDesignで、「財務、会計、人事、販売、調達、購買、カスタマーサービス、サプライチェーン管理」などを一度連携させてみてはいかがでしょう。
環境変化に合わせたビジネススタイル変革の迅速化がキーポイントである中堅中小企業。その根幹を担うシステムとして、クラウド上に蓄積されたノウハウの活用の紅葉は大きいです。ERPを思うように活用できる最短コースとなるでしょう。
目次
あらためて考える、生産管理とは?
耳慣れた「生産管理」という言葉ですが、もう一度その意味や目的を整理してみましょう。生産を管理する範囲
生産管理の対象は「生産計画、調達計画、工程管理、品質管理、原価管理、在庫管理」などです。さらにその販売工程までの管理を含めて生産管理と定義することがあります。単に生産機械がトラブルなく順調に稼働し、必要な品質の製品が生産されるプロセスだけを管理するものではないということが重要です。生産管理の目的
その目的の主要なものを挙げると次のようになります。- 生産の可視化と業務負担の平均化:リソースの有効活用、最大化
- 品質管理:不良率、歩留まり率の低下
- リードタイム短縮:顧客満足度の向上
- 過剰在庫の抑制:在庫コスト、在庫スペースの縮小
- 原価管理:利益確保、利益分析
生産管理を再定義する必要性
日本の製造業は歴史が古く、品質や生産高などの実績も高いと評価できます。どの製造業も生産管理は当たり前のように実践してきました。しかしその認識と管理の対象が時代とアンマッチになっている危険性があるため、一度、生産管理を再定義し、自社の生産管理の定義と照らし合わせてみる必要があるでしょう。その背景として、これまでは製造工程そのものにおける狭義の生産管理という視点が中心だったことがあります。しかし、製品の販売から、原材料調達における資金面やコストの管理、それらのすべてに関わるマンパワーにも配慮しなければなりません。これを広義の生産管理と捉えることができ、重要性が高まっています。広義の生産管理が必要な理由は、ニーズに合ったものをタイミングよく少量供給できる要素が求められるようになったからです。
また次のようなパラダイムの転換も重要です。
- 「注文」⇒「生産」という短期的視点や受動的なビジネス、その管理の比重を減らす
- 「予測」⇒「計画」という中長期ビジョンに立った能動的な生産管理を重視する
生産管理システムの特徴と注意点
生産管理システムは「生産工程における、製品や情報、原価などを総合的に管理するためのコンピューターシステム」と説明することができます。「生産計画、調達計画、工程管理、品質管理、原価管理、在庫管理、出荷管理」などの工程ごとに複数の機能を提供します。主な機能をみてみましょう。生産計画:販売・購買データ、人員計画など種々の情報をもとに生産を計画
調達計画:販売データや生産計画から、必要な部品や材料の調達を管理
工程管理:各工程にて計画どおり生産されているかを管理
品質管理:適正な品質を保って生産されているかを管理
原価管理:生産工程において、実際にかかった原価を管理
在庫管理:需要や経営計画に基づいて適正な在庫を管理
出荷管理:出荷した製品が顧客に届くまでの情報を管理
生産管理システムを導入するメリットは、生産の効率化です。Excelファイルへのデータ入力や、メールのやり取りなど、属人的となっていた生産現場におけるデータ収集作業を自動化することで、ミスを減らしながら業務の効率化を図ることが可能となります。このように、システムを活用して生産の工程における個々の状況をなるべくたくさん集め、効率化していくことが、事業戦略に基づいた生産計画の実行と収益の拡大につながるのです。
ただし、生産管理システムを導入していても、それが長期間稼働している場合は注意が必要です。導入から長期間経過している古いシステムの場合、生産のための機器・機械や工程とのデータ連携がうまくいかなかったり、各種数値をデジタル化できず、目視と手入力によるデータ収集が必要であったりなど、意外と工数かかかっていて、それに気がつかないままかもしれません。
先進的な取り組みを進める生産現場では、センサーによるデータの自動収集やAIを使ったリアルタイム分析による自動発注・生産調整など、さまざまな新技術が採用されています。このようなシステムを導入したライバル企業に遅れをとってしまう危険性もあります。
もちろん、すぐに新しいシステムを導入するための予算を確保できない場合もあるでしょう。効果があるかどうかわからないものに予算は割けません。現在、さまざまなシステムが、利用した分だけ支払えばいい従量制のクラウドサービスに対応しています。一部からスモールスタートし、その効果を確かめた後に本格導入するというステップも可能です。
しかし、一般的に生産管理システムというのは、企業の事業全体から見ると一部分を管理していることになります。もし消費者や得意先の需要をすばやく捉えていち早く生産工程に反映、出荷できれば、ビジネスの競争力を高めることができます。これからの製造業は、工場で行われている生産だけを分けて考えるのではなく、マーケティング、営業・販売、財務、会計、人事、顧客サポートも含め、事業全体を見通せる仕組みに対応できる生産管理システムを活用できるかもポイントとなります。
ERPとは、その目的は?
ERPというと本社の管理部門や経営企画部門が使うシステムという認識が強いかもしれません。ERPの機能と役割について簡単にご紹介しましょう。ERPとは?
ERPは会社全体の資源「人材、機材、資金、情報」を管理する仕組みで、システムの名称としては「統合業務パッケージ」と呼ばれています。財務、会計、人事、購買、生産、販売までのすべてを管理します。ERPを導入して得られる効果
ERPソリューションは基本的に、以下のような効果を企業にもたらします。- 経営状況の可視化と意思決定の迅速化
- 部門間での情報共有と業務連携の強化
- 業務の標準化による経営リソース配分の最適化
- 財務体質の強化
- 業務からの属人性の排除
- テクノロジーによる業務の効率化・自動化
ERPと生産管理
販売部門の計画や見込みに基づき、生産計画が決められ、ロット数の確定と見合った部品調達、適正在庫の保管量までERP上に反映されます。各部署で情報共有ができるだけでも生産と販売の足並みがそろい、都度、営業部門とのミーティングや、結果の見直しの手間が省けることになります。生産とERPのより望ましい関係
生産管理とERPについて見てみましょう。生産に必要な原資の確保をERPでより的確に
品質や納期をクリアしても、販売後に赤字になっては次の資材調達や研究開発の原資が先細りしてしまいます。生産に必要な原資「人材、機材、資金、情報」を調達するには企業の資金が元手ですが、それが獲得できるかどうかは生産と販売の業績で決まるものです。生産管理が経営と直結していないと、最終的には原資の確保の点で、生産自体も思うに任せなくなるという負のスパイラルに陥ってしまいます。「製品は良いが営業力がない」「営業力はあるが製品が市場に受け入れられない」と生産と販売の部門が衝突する場面はどの企業にもあるでしょう。そのような不毛な論争をしないためにも、すべてを統合管理するERPの活用が望ましいといえるのです。生産の高度化とERP
ERPでは販売、生産、購買、製造、会計の標準化と情報の一元管理を実現することになりますが、その要求水準は高度化しています。それを背景に、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)という概念も注目されています。機械やオペレーターまでを監視、管理し、生産性や品質の向上を複数の生産拠点(国内、海外など)を含めて統合管理する仕組みです。機械の動きのみならず、操作するオペレーターの活動も捉え、適切な指示を出す機能まで含まれます。少し想像が難しいところですが、それほど巨大な動きに対してこそが、このシステムの出番です。機械個々の動きや工場の1ラインの管理では、新しい生産効率の領域には達しない時代になったといえるのではないでしょうか。生産を含めたより広域なリソースの分析と最適化が重要
生産をよりシビアにし、資材の調達から機械のオペレーション、スタッフの配置、メンテナンスまでをIoTやAIで見える化、最適化、自動化すること。その結果でサプライチェーン全体をいかに強化できるかが、経営上より重要になってきました。一度、これまでの生産管理の再定義をおすすめします。そして同時に、ERPシステムの新規導入や刷新に取り組んではいかがでしょうか。幸い、クラウドによって思い立てばすぐにでもテスト導入・運営ができる時代になりました。システムの新規導入やリプレイスで最も負担になるのはそのコストと、導入する側の人手です。クラウドならば最小限のスタートが可能で、あとで変更したり拡大したり、期待にそぐわなければ利用を中止することもできます。クラウドベースのSAP Business ByDesignで、「財務、会計、人事、販売、調達、購買、カスタマーサービス、サプライチェーン管理」などを一度連携させてみてはいかがでしょう。
環境変化に合わせたビジネススタイル変革の迅速化がキーポイントである中堅中小企業。その根幹を担うシステムとして、クラウド上に蓄積されたノウハウの活用の紅葉は大きいです。ERPを思うように活用できる最短コースとなるでしょう。