中堅・中小企業にERPは必要なのか?導入メリットや成功事例をご紹介

中堅・中小企業にERPソリューションは不要では?──。 そんなふうに考えている方がいらっしゃいます。しかし、日本における多くの中堅・中小企業が、すでにSAPのERPを導入して数々の成果を手にしており、ERPは大企業が使うものという見方は大きく変わりつつあります。今回は、そんなERPの必要性や導入メリット、成功を収めた企業の導入事例もご紹介します。

※ 本記事は2018年9月に掲載された記事を、加筆・修正したものです。

目次

中堅・中小企業にERPが必要な理由

会社の事業を日々回していくために必要な業務──つまり基幹業務は、企業の規模に関係なく大きく変わりはありません。例えば、製造業であれば、財務会計、販売・在庫管理、資材調達・生産管理などがそれに当たります。

これら業務のデータの一元化と業務の標準化によって、経営状況の可視化や経営リソースの最適化、さらには、業務の効率化・自動化をサポートするのがERPです。ですので、企業規模の大小によって、ERPの必要性が上下することはありません。基本的に全ての企業に必要なソリューションがERPであり、むしろ、大企業よりも中堅・中小の企業のほうが、組織や業務の構造がシンプルで、個々の業務や業務プロセスについてのオーナーシップが明確である(あるいは、明確にしやすい)ことから、ERPによる業務の標準化や最適化が図りやすく、より大きなメリットを得ることが可能といえます。

ERPが中堅・中小企業で発揮する効果

ERPソリューションは基本的に、以下のような効果を企業にもたらします。
(1)経営状況の可視化と意思決定の迅速化
(2)部門間での情報共有と業務連携の強化
(3)業務の標準化による経営リソース配分の最適化
(4)財務体質の強化
(5)業務からの属人性の排除
(6)テクノロジーによる業務の効率化・自動化

これらは、大手企業だけではなく、中堅・中小企業の経営課題を解決するうえでも有効です。そのため、SAPのERPは日本の中堅・中小の企業の間でも広く浸透し始め、それぞれの経営課題の解決に役立てられています。

とりわけ、今日では経済情勢や市場の先行きが見通しづらく、ITを巧みに使う新手の競合が市場にいきなり参入し、価格破壊を始めたり、自社の中核的な製品・サービスがいきなり売上げをダウンさせたり、その逆に、全く売れていなかった製品・サービスが、想定をはるかに上回るペースで売上げを伸ばすといった変化がいつでも起こりえます。

このような変化に迅速に対応するには、データを起点にした適切な経営判断と、その判断に基づくオペレーションをしっかりと回せる業務体制の確立が必須となります。そのための有効な一手が、ERPによる業務の標準化であり、効率化であるわけです。

また、中堅・中小企業の場合、従業員一人一人の能力を最大限に発揮させ、有効に活用することが、大手企業以上に強く求められると言えます。それには、自社のコアコンピタンス(中核の強み)や競争力のアップに直結しない業務の負担を可能な限り軽くして、より多くの人的リソースをコアコンピタンス/競争力アップの取り組みへと振り分けられるようにしておくことが重要です。また、そうすることで、新しい製品・サービス、あるいは新たな事業を立ち上げるのに必要なオペレーションコストの増分を必要最小限に抑えることが可能になり、成長・発展の一手を打ちやすくなります。ERPは、そのためのソリューションとしても有効といえるのです。

もう一つ、SAPのERPのように世界の有力企業の多くが採用しているERP製品の活用には、企業としての信用と信頼を高められるという効果もあります。

例えば、SAPのERPには、各業界を代表する世界有数の企業の業務プロセスがベストプラクティスとしてテンプレート化され、実装されています。それを活用して業務の標準化を図り、日々の業務を処理できている会社は、世界有数の企業と同じ業務処理の能力と業務の品質・コンプライアンス性が確保できていると見なされるためです。これは、中堅・中小企業が海外の企業と取引をする、あるいは、海外で事業を展開するうえでのアドバンテージとなりうるのです。


■中小企業にERPは不要とお考えの経営者様へ―永遠に中小企業だと思っていませんか?―

ERPは大企業のものという先入観にとらわれていませんか?企業の成長にはITの活用が不可欠です。むしろ機動力や意思決定プロセスを洗練しやすい中堅・中小企業こそ、ITを活用すべきです。ERPのなかでもクラウドERPは、導入・保守・運用にかかるコストが低いという特長を持っています。そのため、少額のコストでビジネス効率を最大化する早道となります。

■日本の中小企業がERP導入で得られる5つのメリット

ビジネス環境の変化に伴い、ERPは中小ビジネス環境が目まぐるしく変化するなか、ERPは、中堅・中小企業にとって必要不可欠なシステムになっています。なぜ、そう言い切れるかの理由を、ERPのソリューションが中堅・中小企業にもたらす以下の5つのメリットを中心にお話しします。

メリット1:中小企業の機動力を強化
メリット2:経営資源の効率的な運用
メリット3:財務体質の強化
メリット4:短期間かつ低コストでの導入
メリット5:運用保守費の削減


中堅・中小企業がERPを導入するデメリットとよく聞かれる誤解

中堅・中小企業がERPを導入するデメリットは、基本的にはありません。仮にERPの導入時にデメリットを感じるとすれば、それは、ERP製品の選択を間違えたか、ERPの導入方法に間違いがあるかのいずれかです。

例えば、既製品であるERPを導入すると、自社固有の細かな業務要件に対応できないという声が聞かれます。確かに、個社固有の細かな業務要件を満たす目的には、ERPは不向きです。理由は、そもそもERPは、企業固有の業務要件を満たすために設計されたソリューションではなく、業務プロセスの標準化によって経営資源を最適化することを目的にした仕組みだからです。

ゆえに、自社固有の業務を維持することが、企業のコアコンピタンスの維持・強化に直結するのであれば、ERPの導入はあまりお勧めしません。ただし、基幹の業務における個社固有の業務が、その会社のコアコンピタンスの維持・強化に直結していること、あるいは、差異化の源泉になっているケースは稀です。逆に、固有の業務へのこだわりが、経営資源の最適化を阻む要因になっている可能性のほうが高いといえます。

一方、ERPの導入を巡っては、数億円単位のコストがかかり、とても中堅・中小の企業には手が出ないといった声もときおり耳にします。ただし、その見方には誤りがあります。

ERPソフトウェアのライセンスフィー自体は、それほど高額ではありません。高額になるのは、ERPパッケージを自社固有の業務ニーズにフィットさせるために、数多くのモジュールやアドオンを追加しようとするためです。これによってシステム開発の工期とコストが膨れ上がり、結果としてERPの導入コストが高額になるのです。

今日の企業──とりわけ、中堅・中小企業の間では、“既製品であるERPをカスタマイズすることの非合理性”への理解が深まり、ERPを自社の業務にフィットさせるのではなく、自社の業務をERPに適合させようとするところが増えています。そのため、中堅・中小企業におけるERP導入のコストは、以前に比べると低く抑えられています。

また、業務ごとに異なるシステムを導入し、生産管理などはレガシー(旧式の技術を使った独自性の強いシステム)なハードウェアを使い、レガシーな開発言語で開発したアプリケーションを使い続けている場合があります。業務システムがこのような構造にあると、業務システム全体を維持・運用管理するコストが高止まりし、かつ、異なる業務システム間を結ぶデータ連携ツールの開発にもコストがかかり、各業務システムを新しいシステムに切り替えるたびに、データ連携ツールの更新もかけなければならず、そのための手間と費用もかさみます。

さらに、クラウドERPを選択すれば、ERPのソフトウェアを稼働させるためのサーバーやストレージなどのハードウェアインフラの導入が不要になり、その分ERP導入の工数と手間・コストを低減させることが可能です。

また、クラウドERPはIT資産として購入するものではなく、あくまでも月極で使用料金が発生するサービスです。そのため、ソフトウェアを一括購入する場合と比べて初期導入の費用が小さくなり、その分キャッシュフローに与えるインパクトも小さくて済みます。

このほか、中堅・中小の企業はIT専門の人的リソースが大手企業に比べて少なく、それがERP導入を難しくするといった声もあります。人材不足はなかなか解決の難しい問題ですが、自社の業務を世界標準に完全に合わせる(=つまりは、カスタマイズを一切行わない)という決断の下、SAPのクラウドERPを使い、そのサービスに標準で備わっているテンプレートをそのまま使って業務システムを立ち上げるのであれば、実のところITに関する専門的なスキルはそれほど必要ではありません。つまり、ITの専門家ではない業務の担当者でも、自分で使う業務システムを作り上げることができるということです。

ERPを導入することで成功を収めた中堅・中小企業

先に触れたとおり、日本の中堅・中小企業の間では、SAPのERPソリューションを導入し、成果を手にする企業が急激に増えています。

例えば、従業員数200名/連結売上高100億円規模の産業用機械・構成部品メーカーでは、SAPのERPパッケージの機能を一切のカスタマイズなしで活用し、プロジェクト始動から半年程度という短期間で財務会計から販売・在庫管理、資材調達、生産管理・設備管理など、自社の事業運営を支える基幹業務システムの全てを刷新しました。これにより、在庫を従来の2分に1に圧縮したほか、生産計画の策定サイクルを毎週1回から毎日へと短サイクル化し、さらには、MRP(資材所要計算)処理時間を20分の1に圧縮することに成功しています。ちなみに、この会社では、IT部門のスタッフのみならず、ITに精通していない現場の業務担当者も開発作業に参加し、システムの早期立ち上げに貢献しています。これは、SAPのERPが備えているテンプレートをカスタマイズなしで活用したことの効果です。

また、従業員数約500名の陣容で、エレクトロケミカル材料の研究・開発、製造を手がけるメーカーでも、SAPのERPソリューションによって、国内と海外拠点の基幹業務システムを刷新し、業務の標準化による情報の見える化と業務効率向上を実現しています。

さらに、合成樹脂製品と産業機械の製造を手がける、ある中堅のメーカーでは2004年の段階でSAPのERPソリューションによる基幹システムの全面刷新と業務の標準化を実施し、月次決算を2日間で完了できる仕組みを整えているほか、業務データの一元化による在庫の適正化や業務データの分析・可視化による社員の意識改革といった効果を手にしています。

こうした日本の中堅・中小企業が、なぜSAPのERPを選択し、どのようにして成功を収めたのかについて、下記の資料を併せてお読みください。

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