次の10年の成長・発展を遂げるために──ERPの導入=飛躍のための土台作り

ERPで築くデジタルトランスフォーメーションの基盤

日本の名目GDP(国民総生産・支出側)は、2016年度で539兆3,000億円(前年度比1.2%増*1)。2016年歴年で見た名目GDPは、1位の米国のおよそ4分の1で2位・中国の2分の1弱というのが日本の経済規模です。また、国民1人当たりの名目GDPを比べるとOECD(経済協力開発機構)加盟国中18位で、一人当たりの付加価値生産性も、購買力も世界トップクラスとは言えないようです。

こうした中で、世界の有力企業はデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を加速させ、競争力をさらに高めようとしています。結果として、日本企業と世界との開きはさらに広がる恐れもあります。

ところが、日本企業の多くは、DXの必要性を理解しつつも、DXの取り組みをなかなか前に進められずにいるようです。その大きな要因として、業務ごと、あるいは部門ごとに分断した業務システムがあることは、前回のコラムで指摘したとおりです。

実際、経済産業省(以下、経産省)が2017年9月7日に公表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』(概要版)でも、企業によるDXの阻害要因として、「既存のシステムが事業部門ごとに構築され、全社横断的なデータ活用ができていない」「過剰なカスタマイズにより、システムが複雑化・ブラックボックス化している」といった点を挙げています。

そして、このレポートの中で経産省は、企業が上記の課題を克服できない場合、市場の変化に応じてビジネスモデルを柔軟、かつ迅速に変更できず、デジタル競争での負け組になるばかりか、システムの維持管理費がIT予算の9割を占めまでに膨れ上がり、結果、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)があると指摘しています。

このような問題を解決する一手として、ERPの導入があると前回のコラムで触れました。その理由は、ERPによって、会計・販売・在庫・生産管理など、すべての業務システムを統一化し、データのリアルタイムな統合化を実現することが、経産省が指摘するような問題の解決につながるからです。

ERPを導入することで、業務ごと、部門ごとに存在していたデータの壁は取り払われ、全社で単一のデータの共有・活用が可能になり、業務効率を大きく高めることが可能になります。例えば、製造企業は、需要・受注情報から必要な生産数量・時期を正確に算出できるようになり、必要な資材の購買・手配が効率化されます。また、在庫管理と購買管理のデータ統合で、在庫照会のスピードも増し、発注ミスや発注量の過不足も低減されます。工程ごとの完了実績も管理できるようになるので、商品がどの段階まで、どの程度生産されているのかもリアルタイムで把握できるようになります。

もちろん、ERPを導入する際に、企業固有の業務要件を満たすために大量のカスタムモジュールを開発するのでは、システムを複雑化させ、導入と保守・運用管理費の増大を招きます。ですから、可能なかぎり、ERPの標準機能を活用して、ERPの機能に合わせて社内の業務プロセスを標準化させることが大切です。そうすれば、導入・保守・運用管理のコストを最低限に抑えながら、あらゆる業務を横に貫くシステムの連携とデータ統合が実現され、DXを推進するための土台を築くことが可能になるのです。

DXの厳しい戦いに勝ち残るために

先の経産省の指摘にもあるとおり、DXにおいては、市場の変化にいかに柔軟に、かつ迅速に対応できるかどうかが、勝ち残りのカギといえます。

逆に、デジタルテクノロジーが引き起こす産業構造の変化に対応できなければ、市場から淘汰される恐れすらあります。実際これまでも、デジタルテクノロジーを巧みに用いた新興企業(あるいは、異業種からの参集組)のビジネスモデルによって、旧来の産業構造が破壊に近いダメージを受け、旧来プレイヤーたちの事業が大幅な縮小を余儀なくされたケースは多くあります。

加えて、DXの領域では、立ち上げたサービスの継続的な改革・改善も必要です。とりわけ、顧客体験の高度化、あるいは商品の新しい価値創出を目的にした「Systems of Engagement(SoE)」のシステム/サービスの場合、市場の動きを常にウォッチしながら、改革、あるいは機能拡張を続けなければ、競合相手にすぐに模倣され、追い抜かれるリスクが高いといえます。それゆえに、DXの取り組みを推進するうえでは、市場ニーズに対する深い理解と変化への読みが必要とされます。

そこで最低でも必要になるのが、自社の商品に関する正確で、リアルタイムな実績データを常に入手できる環境を整備することでしょう。ERPによる業務システムとデータの統合は、その環境を整備する一手でもあるのです。

このようにしてデータのソースを整備したうえで、外部の公開データとうまく組み合わせながら、自社商品に対する顧客動静をとらえていくことで、顧客ニーズに対する理解を深め、サービスの企画や戦略の精度をファクト(データ)に基づき高めていくことが可能になります。

また、予測分析の機能を備えた分析ツールを活用すれば、市場ニーズの変化を一定のレベルで先読みすることができるようになります。これにより、立ち上げたサービスの成果が予測を下回ったとしても、その結果を分析にフィードバックして再度分析をかけ、サービスに反映させるサイクルを回していけば、予測の精度とサービスの的確性をともに増すことができ、DXの取り組みを成功へと結びつけていくことが可能になります。

SAPでは、そうした予測分析が行えるクラウドサービスとして「SAP Analytics Cloud」を提供しています。ERPが管理する実績データとIoTなどで収集したデータ、さらには、インターネット上のSNSデータを、SAP Analytics Cloudと使って総合的に分析すれば、市場のこれからの動きや自社の商品/サービスの今後をとらえ、SoEの施策展開を強化していくことが可能になります。

クラウドERPという選択肢

以上のとおり、ERPの導入は、DXの取組みを前に進めるための重要な施策です。しかも今日では、SAPの「SAP Business ByDesign」のようにクラウド型のERPに登場し、ERP導入のハードルは以前に比べかなり低くなっています。とりわけ、SAP Business ByDesignには、膨大な数のベストプラクティスが組み込まれています。それを活用し、カスタマイズ開発を必要最低限に抑えれば、開発の工期とコスト、さらには、のちの保守・運用管理費のすべてを圧縮できるのです。

少子高齢化の流れは今後も続き、DXの潮流も日増しに勢いを増しています。ERPをまだ導入していない方は、改めて、その活用を検討してみてはいかがでしょうか。


<関連リンク>
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