“クラウドERPもSAP”のワケ──「SAP Business ByDesign」が企業にもたらす変革

前回はクラウドERPの価値について解説しました。今回は、クラウドERPの一つである「SAP Business byDesign」にスポットをあて、ビジネスにどのような変化をもたらすかについて掘り下げます。

限りある人的リソースを本来業務に集中させる

クラウドERPの「SAP Business ByDesign」は、「(期間が)長い、(コストが)高い、(技術的に)難しい」とされてきたERP導入の“常識”を覆すSaaS(Software as a Service)型のソリューションです。SaaSですからシステムを利用するため設備投資は不要です。サービス利用のための月額基本料金も40万円からと格安ながら、ERPとしての機能を網羅的に備え、世界の成功企業の業務ノウハウ(ベストプラクティス)がテンプレートとして豊富に用意されています。それらをうまく活用すれば、短期間のうちにERPのシステムを立ち上げることが可能です。

現在、きわめて多くの日本企業が、少子高齢化・労働人口減に起因した人材不足に悩まされ、付加価値労働生産性(*1)をいかに高めるかという課題と対峙しています。

にもかかわらず、各業務間のシステム的な連携がないために、付加価値の増進とはほとんど関係を持たない業務に、人的リソースを費やしていることが間々あります。

例えば、経理部門では、各営業担当者からメールで寄せられてくる前週の売上実績から顧客先、品目、販売額などのデータを拾い出し、表計算ソフトの「Excel」に再入力してレポートとしてまとめ上げるといった作業を行っていることがあります。

週次の売上実績をレポートすることは大切ですが、レポートの「作成量」と企業の付加価値との間には相関関係はありません。そこに費やす時間・労力と付加価値とは反比例の関係にあると言えます。というのも、実績レポートは、経営や営業現場が何らかの意思決定を下すためのデータであり、そのレポートを出すタイミングが遅くなればなるほど、意思決定のタイミングが遅れ、労働の付加価値を低下させる恐れがあるからです。言い換えれば、実績レポートの作成に、時間をかければかけるほど、労働生産性に寄与する度合いが少なくなるということです。

したがって、週次の売上実績をまとめ上げるような作業は可能な限り自動化し、経理の担当者には他の生産的な業務に集中させることが重要と言えます。

SAP Business ByDesignを採用する一つのメリットは、まさにそうした人的リソースの有効活用を実現できる点にあります。このシステムを活用すれば、日次でも、週次でも、売上実績をまとめ上げるのに、上述したような手順を踏む必要はなくなり、経営層や営業部門は最新の販売状況をまとめたレポートを、より早いタイミングで受け取ることが可能になります。そして、現状の問題をすばやく察知し、次の一手を打ち、売上向上につなげていけるのです。

*1 付加価値労働生産性:企業における労働者一人当たりの付加価値生産額。ここで言う「付加価値」とは、企業の「粗利益」のこと

SAP Business ByDesign がカバーするビジネス変革

SAP Business ByDesignが実現できることは、上述したような実績集計の自動化だけではありません。以下に、SAP Business ByDesignがカバーするビジネス変革について、主なものをざっと紹介しましょう。

財務プロセスの効率化と最適化

SAP Business ByDesignを活用することで、財務状況をリアルタイムに把握し、中核的な会計プロセスの効率化と資金・流動性管理の改善を図ることが可能になります。複数の事業部門、通貨、報告基準にまたがる会計管理にも対応。顧客および仕入先の取引データを活用し、キャッシュポジションをリアルタイムで見える化します。

フロントオフィス業務の効率化と強化

SAP Business ByDesignによって、バックオフィス業務とマーケティング/営業といったフロントオフィス業務のプロセスを統合的に管理し、顧客とのつながりを強化することが可能になります。例えば、マーケティング部門では、“個客”情報を活用した販促キャンペーンの展開をはじめ、リードの生成・査定、営業部門への引き渡しなどが効率化されます。また、営業部門においては、見積書や請求書の発行や受注処理など、営業にかかわる事務的な処理のほぼ全てを自動化し、顧客の窓口担当者とのやり取りから請求に至るまでのプロセス全体を改善できます。

人事管理の効率化

一元化された人材データと、従業員によるセルフサービスプロセスによって、勤務時間、労務、報酬の管理効率を向上します。また、サードパーティの給与計算アプリケーションや代行業者とのインタフェースも備え、給与計算処理も効率化されます。

サプライチェーンの最適化

生産、在庫、倉庫、物流にかかわるデータのリアルタイム統合によって、サプライチェーンの状況が可視化され、原価の透明性が高まり、最新の在庫評価も把握できます。これにより、サプライチェーンの最適化に向けたプランニングと遂行が容易になります。

プロジェクト収支の可視化と管理の効率化

SAP Business ByDesignでは、プロジェクト収支の追跡と管理が可能です。プロジェクトは、立ち上げたのちの収支が見えなくなりがちですが、SAP Business ByDesignを使えば、プロジェクトの管理、実施、モニタリングをリアルタイムで行えるようになります。

購買業務の効率化

戦略的ソーシングやRFQ処理、サプライヤーごとの取引管理といった機能を通じて、協力会社に対するソーシング/契約の効率的な管理が実現されます。また、従業員に対して、セルフサービス型の調達機能を提供することも可能です。

グローバルレベルでの法律/各種基準の遵守

グローバル化に際しては、現地の会計ルールや商法を含めたさまざまな要件を確実に遵守しなければなりません。SAP Business ByDesignでは、世界130 カ国の言語、通貨、規制に対応。複数の国をまたいだ複数の現地法人を同一のシステムで管理し、複数の帳簿に対応することができます。

改めて考えるクラウドERPの選定ポイント

今日、SAP Business ByDesignも含めて、さまざまなクラウドERPがベンダー各社から提供されています。その中の多くが、複数の業務モジュールで構成されており、業務機能を追加していくたびに、追加費用が上乗せされていく方式を採用しています。

必要な機能を、必要に応じて柔軟に追加できるというのはクラウドサービスの一つの特徴であり、上述したようなモジュール構造のクラウドERPは、そうしたクラウドの良さを活かしたサービスと言えるでしょう。

ただし、ここで留意すべき点は、各業務モジュール間でのリアルタイムのデータ統合が可能かどうかです。仮にそれが実現されていなければ、企業のあらゆる業務のデータを統合して、全社リソースの最適化を図るという、そもそものERPの導入目的が達成できません。

さらに、クラウドERPの大きな利点の一つは、海外拠点への展開が図りやすいことです。仮に、海外市場への参入を計画し、その際にクラウドERPのメリットを活かそうと考えているとすれば、やはり海外の税制や通貨、法規制への対応がすみやかに行えるクラウドERPを選んでおくべきでしょう。それがSAP Business ByDesignであり、このサービスでは、あらゆる業務のデータをリアルタイムに統合化するという、ERPとしての基本機能もしっかりと備えています。こうしたことから、SAP Business ByDesignは、日本を含む、世界の中堅・中小企業の間で、着々とユーザーの裾野を広げつつあるのです。

「クラウドERPも、SAP」──。SAP Business ByDesignに代表されるSAPのクラウドERPによって、そうした状況が形成されつつあると言っても、過言ではないのです。

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