人材が開発できない、才能の在り処がわからない──経営ニーズに即応するための人事の悩みの解決法
本稿は、日本の人事部門が抱える悩みの解決法を考えるシリーズ型のコラムです。前回は人材不足を慢性化させる「良い人材が採用できない」「定着しない」という問題にスポットを当てましたが、今回は、「人材が開発できない」「才能の在り処がわからない」といった問題にフォーカスを絞り、解決策を考察していきます。

このプロジェクトには社内の誰が適任!?
企業を取り巻くビジネスの状況は絶えず変化しています。自社が一定の地歩を築いてきた市場にいきなり異業種の大手が参入し、価格破壊を引き起こしたり、デジタルテクノロジーを巧みに使う新興企業によって、自社が属する業界のビジネスモデルが破壊されたり、その逆に、それほど期待をかけていなかった自社商品が海外で想定をはるかに超える勢いで売れ始め、国外での販売体制の強化を急ぐ必要に迫られたりと、経営に相当のインパクトを与える変化が、いつ、どのタイミングで起きても、不思議はない状況が続いています。加えて今日では、デジタルトランスフォーメーションのうねりが、あらゆる業務・業態に押し寄せつつあり、多くの日本企業が、デジタルテクノロジーによる業務の効率化・自動化、顧客体験の高度化、ビジネスモデルの変革などに乗り出そうとしています。
このような時代は、企業に絶え間のない変化・変革を求め、それに対応すべく、企業も自社のコアを軸にしながら、新しい市場、新しい事業、新しい顧客価値の創出に力を注いでいます。そうした中で、人事部門に強く求められているのが、社内に潜在する才能の正確な把握です。例えば、新規事業に乗り出そうとする経営者は、自社の人事部門にこう聞くはずです。
「この事業を担えるようなリーダー人材は社内にいるのだろうか? いるとすれば、誰と誰でプロジェクトチームを組ませるのが最良なんだ?」──。この問いかけに、根拠を持って即答できることが、今日の人事部門には必要とされていると言えます。
人材データの一元管理
組織の規模が小さく、人材の流動性が少ない企業であれば、人事部門の担当者が、社員全員のスキル、キャリア、実績、過去のパフォーマンスの傾向、強みとなるコンピテンシー(行動特性)すべてを記憶できるかもしれません。仮に、そうであれば、上述したような経営サイドの問いかけにも自信を持って即答し、適切なリーダー人材が社内にいなければ、外部から調達するという進言も迷わずに行えることでしょう。ただし、社員数が数百人、ないしは1,000人の規模を超えてくれば、そうしたことは非常に困難で、まず不可能と言えます。加えて、人事部門自身の人材も、場合によって他部門への異動が発生する可能性があり、属人的な知識・知見に頼るというのも現実的ではありまません。社内のリーダー人材の可視化、発掘、経営層へのリコメンドまでを、一連のプロセスとして落とし込み、誰もが再利用できるような形としておくことが必要なのです。
となれば、人材にかかわる情報をすべて集めて、人事部門で一元的に管理することが必須という結論に自ずと至るはずです。このとき、既存の人事システムでは管理し切れない情報を、表計算ソフトを使って管理しようとするケースも見受けられます。
ただし、表計算ソフトによる管理は、データの更新に手間がかかるうえに、時間軸の中で人材のデータをとらえるのが難しいという欠点があります。つまり、どういった才能を持った人材が、現在、どの部署に、何人いるかはとらえられても、その人材の才能が、どういった経験によって育まれたものなのか、あるいは、実績として、どのような成果を上げてきたのかまでを一挙にとらえることは難しいと言えるのです。
こうしたことから、人材の把握、あるいは人材の可視化を実現するすべとして、世界の成長企業、さらには日本の有力企業の多くが、人材情報を管理・活用するための仕組みである「タレントマネジメントシステム」を導入し、活用しているのです。
人材開発を巡る課題と人事部門のミッション
タレントマネジメントシステムは、人材開発を巡る人事部門の悩みを解消することにもつながります。言うまでもなく、人材開発は、人材を企業の戦力、あるいは真の経営資産(=財)へと育成するための極めて重要なプロセスです。ただしこれまでは、定常的な社員研修は人事部門の仕切りで行うものの、社員を現場の戦力へと転換する育成・能力開発はOJTなどを通して各現場に一任されるケースが多く、また、研修や育成/能力開発に費やした投資のリターンを定量的に計測することもあまり行われてこなかったと言えます。
しかし、ビジネスの変化が常態化している今日では、人材開発の投資対効果を測り、常に見直し改善ことが求められています。
しかも、慢性的な人材不足に悩む日本企業の現場では、現場主導での(あるいは、オンザジョブトレーニング型の)育成・能力開発に問題意識を強めているようです。
例えば、厚生労働省が公表した「平成 29 年度能力開発基本調査」によると、能力開発や人材育成に関して何らかの「問題がある」とする事業所は75.4%にも達し、その問題点の内訳は、「指導する人材が不足している」(54.2%)が最も高く、次いで高かったのは「人材育成を行う時間がない」(49.5%)だったといいます。
このように、現場主導のどちらかといえばアナログな方式の人材開発にはすでに限界が見えています。したがって、これまでの人材開発のあり方を変えない限り、会社の次の成長・発展を担う人材を育成することはおろか、現場力を維持することすら困難になる恐れがあります。
そうした事態を避けるためには、人事部門が人材開発に一層深くかかわり、外部のリソースなどを適所で活用しながら、戦略的、かつ計画的に人材開発を遂行していかなければならないでしょう。そのためにも、社員に対する人材開発のROIを見える化し、研修、あるいは育成・能力開発プログラムの継続的な改善を図っていくことが大切となります。タレントマネジメントシステムは、そうした課題にも対応できるのです。
SAP SuccessFactorsだからできること
人材の開発や把握は、人事部門の課題であると同時に、企業が競争優位を確保するための経営課題とも言えます。だからこそ、タレントマンジメントシステムが数多くの企業に導入され、また、そのソリューションに対する企業の関心が高まり続けていると言えます。そうしたタレントマネジメントシステムの領域で、リーディングソリューションの地位にあるのが、SAPの「SAP SuccessFactors」(以下、SuccessFactors)です。
SuccessFactorsは、企業内に散在していたさまざまな人材情報を一元的に管理し、人材の見える化──つまりは、「才能の在り処」の見える化を実現するだけではなく、過去の評価や実績から人材の能力や可能性を正確に区分けしたり、AI(人工知能)技術によるデータ分析によって、特定のプロジェクトを推進するチームのメンバーとして、誰が適任なのかを推奨したりする機能も備えています。これにより、人事部門は、経営戦略に沿った人材の配置や組織の編成を、データ(ファクト)に基づきながら、迅速に立案することが可能になります。
また、人材情報と経営情報の分析によって人材育成の投資対効果(ROI)を可視化することもでき、それを人材開発プログラムの適正化・改善に役立てることも可能です。
企業の次の成長・発展のために人材を可視化したい、人材開発の効果を見える化したい──。そう考えるならば、SuccessFactorsの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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