デジタル時代の次世代型データウェアハウス―Analyticsシリーズ第3回

激しく変化していくビジネスの局面で正しい意思決定を行うためには、社内外から集めたビッグデータをリアルタイムに分析して可視化することが必要です。その基盤となるのがデータウェアハウスです。デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる中、「データ構造のシンプル化」「オープン化」「先進のインターフェース」「ハイパフォーマンス」を提供する次世代型データウェアハウスの構築が必要とされています。

デジタル時代のデータ活用の競争はすでに始まっている

ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化していく中、従来の勘や経験に頼った判断では道を誤る恐れがあります。現在の状況を客観的なファクト(データ)に基づいてリアルタイムに把握し、ビジネスをドライブしていくという、いわゆる「データドリブン経営」があらゆる企業に求められています。

とはいえ、経営判断に必要なデータが1つのシステムに集まっているとは限りません。企業の業務システムは部門ごと、あるいは業務ごとにサイロ化されている場合が多く、経営判断に必要なデータが各所に分散していることが珍しくありません。

また、社内にあるデータだけで経営上の意志決定が正しく下せるわけでもありません。例えば、社内のデータによって自社の商品の売上が上下していることは把握できても、その原因がどこにあるかがつかめない場合が多いはずです。

加えて、変化が常態化している今日では、社内のデータと過去の経験則に基づいた分析では、売上の上下動がなぜ発生したのか、あるいは、その動きが今後、どのように推移する可能性があるかの予測を立てることがかなり難しくなっています。

そうした原因分析や予測分析をより正確に行うためには、自社がターゲットにする市場や自社の商品、ビジネスモデル、あるいは社内のビジネスパフォーマンスにインパクトを与える可能のある、あらゆる要素についての情報を社外のWebやIoTデバイスから収集し、自社内のデータと合わせて分析する必要があると言えるのです。

さらに、ここで留意すべきことは、データドリブン経営やDXで先行する企業は、すでにこうしたビッグデータの分析/活用に取組んでいるという点です。例えば、SNSやWebなど、顧客とのあらゆるタッチポイントから収集したデータや、社内外の機器、あるいは自社の商品に取り付けたセンターからのデータ、そして実績データを合わせて分析し、ビジネスの一歩先を読んだり、これまで気づけなかった課題や可能性を発見し、プロアクティブな課題解決や新たな価値創出につなげようとしています。その意味で、デジタル時代のデータ活用はすでに始まっている競争と言え、先行各社は着々と後続との差を広げつつあると言えます。

従来のテクノロジーの延長線上での拡張は困難

データドリブン経営やDXで先行する企業との差を詰めない限り、これからの市場で競争優位を確保するのは困難になります。そこで必要とされるのが、新しいデータウェアハウスの構築と言えます。

ご承知のとおり、データウェアハウスは、ビッグデータを効率的に蓄積・活用するためのソフトウェアプラットフォームであり、社内外に分散している多様なデータを統合し、利用目的に応じた形で容易に取り出せるようにするための仕組みです。

日本企業の間にデータウェアハウスが普及し始めたのは1990年代の終わり頃からです。大福帳データベースとも呼ばれる中でその概念が伝えられ、ERPなど基幹システムで扱われているデータを時系列に蓄積し、ユーザー側のBIツールとの連携によって分析を行う基盤として活用されてきました。

ただ、先にも述べたようにビジネスの重要な局面で正しい意思決定を行うためには、社内システムに蓄積されたデータだけではなく、社外からも多様なデータを集める必要があり、その容量は1990年代とは桁違いに大きいと言えます。そのため、従来のテクノロジーの延長線上でデータウェアハウスを拡張していくのは困難であり、これからのデジタル時代に対応していく次世代型データウェアハウスが必要とされているのです。

インメモリDBを中核とした論理データウェアハウス

では、次世代型データウェアハウスとは具体的にどのようなものであり、いかなる要件を満たす必要があるのでしょうか。

まず、次世代データウェアハウスの最も重要な要件として考えられるのは、ビッグデータをスピーディに効率よく処理することができるパフォーマンスであり、インメモリデータベース(以下、インメモリDB)を中核とした論理データウェアハウスがその基本形と言えます。こうした次世代型データウェアハウスのニーズを先取りするかたちで、SAPが2016年9月から提供しているのが「SAP BW/4HANA」です。

その名が示すとおり、SAP BW/4HANAは、インメモリDBである「SAP HANA」上でデータウェアハウスを構築するためのプラットフォームです。データロードおよびクエリーの大幅な性能向上を実現するとともに、データの複製を極力排除したシンプルなビューによる分析を可能としています。

また、SAP HANAが持つデータ統合機能を活用することで、IoT機器などから取得した時系列データのストリーム分析やHadoopをはじめとするオープンな各種データレイクとの統合もサポートしています。

SAP BW/4HANAが打ち出した4つの特長

SAP BW/4HANAはデザインコンセプトとして、「データ構造のシンプル化」「オープン化」「先進のインターフェース」「ハイパフォーマンス」の4つの特長を打ち出しています。

このうち、「データ構造のシンプル化」とは、SAPが旧来提供していたデータウェアハウスプラットフォーム「SAP Business Warehouse」に比べて、データ構造をシンプルにしたことを意味しています。SAP Business Warehouseでは、10種類のモデリングオブジェクトに対応することで高機能を実現していましたが、その種類の多さがかえって難易度を高め、データモデリングが複雑化してしまうという問題を内包していました。

そこでSAP BW/4HANAでは、機能性を維持しながらモデリングオブジェクトを4種類に絞り込みました。これによりシンプルなデータ構造に基づく柔軟なモデリングと管理を実現。データウェアハウスの開発費用を低減させつつ、データモデルの変更要求にも柔軟に対応し、急速に変化していくビジネス環境にも即応できる環境を整えています。

次の「オープン化」とは、データモデリング用の各オブジェクトに対してSAP HANA の 「Calculation View 」を自動的に生成し、SAP BW/4HANAのデータに対するSQLアクセスを可能としたことを意味しています。

従来のSAP Business WarehouseではSAP固有の接続方式(BICS)を前提としていたため、データアクセスに対応できる外部ツールは限られていました。SAP BW/4HANAはこの問題を解消し、汎用的なSQLアクセスをベースとした幅広いフロントエンドツールの利用を可能にしています。

3つめの「先進のインターフェース」としては、HANA Studioに統合された使い勝手の良いモデリングツールやHTML5ベースの管理者向けモニタリングツールなどを提供。直感的なエクスペリエンスを向上し、ユーザーへの定着率を高めると同時に生産性を高め、データ分析の属人化を抑制します。

そして4つ目の「ハイパフォーマンス」は、インメモリDBであるSAP HANAをデータ管理基盤として活用することで実現されたものです。先述したクエリーやデータロードの高速化のほか、分析を行う際のデータの集約、ロールアップ、統計更新といった事前の準備作業を不要にするというメリットも提供します。加えてOLAPエンジンや変換ロジック、計画機能などについても、SAP HANAへのプッシュダウンによるさらなるパフォーマンス向上が図られています。さらにHAP(HANA Analysis Process)を経由し、SAP HANAライブラリ(AFL)、R、カスタムHANAプロシージャと連携することで、予測分析、テキスト分析、データマイニング、機械学習などの高度な分析も可能となります。

このようにSAP BW/4HANAを活用することで、SAPアプリケーションはもとより、サードパーティーのソリューションが管理するデータ、Webから収集した非構造化データや各種オープンデータ、Hadoopに展開されたデータなど、多様なデータからリアルタイムにインサイト(洞察)を引き出し、ビジネスの価値に変えていくことができるのです。

「SAP BW/4HANA―リアルタイム経営を支える次世代データウェアハウス」資料ダウンロード

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