経営に資するITシステム実現のカギ──マネジメントプロセスと情報環境構築のポイントを押さえる

経営に貢献できるITシステムをどう築くか──。これは、企業のIT部門の恒久的なテーマの一つです。その課題解決に不可欠な取り組みとしてマネジメント・プロセス・コンサルティング代表取締役社長の巻幡 雄毅氏が掲げるのが、マネジメントプロセスと情報環境の構築です。ここでは、巻幡氏が指南するマネジメントプロセスと情報環境構築の要点をお伝えします。

情報提供/監修:巻幡 雄毅氏
マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社
代表取締役社長

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「問題にうまく対処する」より「問題が起こらないようにする」ことが大切

お客様のマネジメント環境について詳しくヒアリングする機会があります。その過程で、部下や周囲からとても頼りにされるマネジメント層の方に出会うことがあります。その方は、自部門のメンバーの主張を通し、トラブル発生時にも問題から逃げず、部下思いである。これ自体は否定するものではないのですが、マネジメントプロセスという軸で見ると気になる点もあります。

それは、問題へ対処することよりも、そもそも問題を起こさないことが重要ではないかということです。

どのような企業も、組織運営の目標を持ち、その目標を達成することが求められます。そこでは、計画をベースに状況を確認し、問題について組織として対応していく必要があります。

こうした一連の対応を行うための手法が「マネジメントプロセス」です。そして、マネジメントプロセスを支えるために必要なのが情報環境の構築です。ここでは、マネジメントプロセスの定義と情報環境の構築についてポイントを整理したいと思います。

なぜマネジメントが必要なのか?

議論の起点としてまず、マネジメントの前提と責任を考えてみます。マネジメントの目的は目標を達成する責任を果たすことです。目標は株主や顧客に対して約束したものであり、それを達成するために組織が協業し、主体性を持って対応する事が求められます。協業とは、価値分業と役割分担を理解する事であり、また、主体性とは、自ら判断し、最も効果的な行動を取ることです。

このように考えると、マネジメントの責任とは、分業・分担を踏まえて、自ら判断し最も効果的な方法で「約束」した内容を「実践」し、状況や予測について「説明」する責任を果たすことと言うことができます(図1)。

図1:マネジメントの前提と責任(スライドp7)
図1:マネジメントの前提と責任(スライドp7)

次に、これらを具体的に実施するための仕組みとして、マネジメントプロセスを考えてみます。

マネジメントを行うためにはまず、何を確認すればそれが実行できるのか、進捗状況はどうなのかということに対して、確認のルールを定義していく必要があります。また、そのルールに従って、業務実態が格納された情報環境を確認して、チェックして実施・報告したり、問題を共有・検討して、対策を検討・実施したりすることも必要です。

具体的には、各部門責任者が規定されたタイミングで状況を確認し、状況確認の結果を報告すること、組織全体で問題を共有すること、他部門へ影響がある問題は組織横断で対策を検討すること、対策は常時ステータスを共有することなどです。

これを踏まえると、マネジメントプロセスとは、計画をベースに現場のマネージャーが状況を確認、確認結果を報告し、問題については組織として対策を検討、目標達成に向け活動を推進するために具体化された一連の手法というように定義できます。

マネジメントプロセスの構成要素

具体的なマネジメントプロセスに落とし込むことは、企業組織が目標を達成していくために唯一の方法です。そこでマネジメントプロセスが具体的にどのような要素で成り立っているかを考えたいと思います。

マネジメントプロセスの構成要素は大きく3つあります(図2)。

1つ目は「責任定義」です。組織は価値や役割を持つことでそれぞれが何らかの責任を持つという話をしましたが、それを具体的に示したのが責任定義です。

チェックの実施者、タイミング、範囲、方法を定義しています。例えば、「責任を果たすために必要な確認内容」「確認を実施するタイミング(周期)」「組織における役割、役割に該当する責任者」「地理的な広がり、建物等々の空間の対象範囲」「製品、商品、部品、サービスなどの対象範囲」「情報源および確認方法、判断基準」です。

2つめは、最新の現状を客観的な事実として表す「情報環境」です。そして、3つめは定義された責任を実施する「管理習慣」です。

図2:マネジメントプロセスの構成要素(スライドP.11)
図2:マネジメントプロセスの構成要素(スライドP.11)

情報環境がマネジメントに貢献できていないワケ

マネジメントプロセスについてご理解いただいたところで、次に、情報環境について説明します。情報環境については、「なぜ情報環境がマネジメントに貢献できる仕組みにならないか」という疑問があるかと思います。その背景には、情報環境に対するマネジメント層とプロジェクトメンバー層、両者の誤った認識があります。

マネジメント層は情報環境に対して効率化のための投資と考えます。現場の使い勝手は重要ですが、投資金額が大きいので最終判断は自身でしようとします。また、最終アウトプットすなわち会計処理結果やBS/PLなどの月次報告が大切だと考えます。さらに、情報環境は、業務効率化を目的とした作業担当者向けの支援ツールであり、自身で使いこなすものではないと考えます。

こうした考えの結果、情報環境は、作業効率と会計処理を考慮したデータ処理システムとして実装されるケースが増えてしまいがちです。

一方で、プロジェクトメンバー層の認識のズレがマネジメント視点での情報環境に問題を発生させることもあります。

例えば、「在庫・金額などのデータは仕訳へ連携されるが、日付データは関係ないので最新でなくても紙でもよい」「業務の予定は変更されることがあり、確定データではない。よって情報環境に格納する必要はない」などです。

こうした認識の結果として、マネジメント層から見て、「管理項目という視点で“正の情報”が不足し情報環境が判断材料にならない」「業務の準備状況や変更が与える影響が把握できない」「管理視点でプロセスを追うことができず、着地を予想し対策を打つことができない」といった問題が発生するのです(図3)。

図3:情報環境に対するプロジェクトメンバーの誤認が発生させる問題(スライドp7)
図3:情報環境に対するプロジェクトメンバーの誤認が発生させる問題(スライドp7)

基幹システムは「連携」「一元化」「源泉データ取得」のための仕組みと考える

上述したような問題を解決するには、システム構築のための指針を明確にしなければなりません。すなわち、どういった観点やポリシーでシステムを作っていくかをきちんと練り上げないと、結果的に、非常に高額なデータ処理のシステムで終わってしまうのです。

では、どのようにシステムを構築していけばいいのでしょうか。それを知るためにまず、基幹システムがこれまでにどのように発展してきたかをおさらいします。

基幹システムは、会計伝票を処理するシステムとして始まりました。経理部門でシステムが導入され、膨大な伝票の処理効率や業務精度が向上しました。次に、各部門に業務システムが構築されていきます。それらが連携され、発生データの再利用が可能になることで間接業務が効率化します。さらに、業務横断で1つのアプリケーションにデータが格納されることで、整合性のとれたデータ蓄積が可能になります。そして、近年では、取引先とのインターネット接続、モバイル端末からの基幹システムへのアクセスも可能になり、連携のスピードと精度が向上しています。

このように基幹システムは、ソフトウェア、ハードウェアの機能向上に伴い、単に会計伝票を処理するシステムから、「データの連携」「データの一元化」「源泉データ取得」のためのシステムへと変容を遂げているのです(図4)。

図4:基幹システム発展の経緯(スライドp9)
図4:基幹システム発展の経緯(スライドp9)

情報環境の要件を定義するための6つのポイント

これらを踏まえ、マネジメントプロセスのための情報環境構築はどうあるべきかを考えたいと思います。

情報環境は、業務処理とマネジメントの両方のプロセスで求められる要件が反映されるべきです。そこで求められるのは、情報処理プロセスに必要な情報環境要件の定義と、マネジメントプロセスに必要な情報環境要件の定義の2つです。

情報処理プロセスに必要な情報環境要件の定義は、通常のシステム構築の際の要件定義と考えることができます。業務をどうシステムに落とし込むかを決めます。一方、マネジメントプロセスに必要な情報環境要件の定義は、以下の6つのポイントがあります(図5)。

 1. 各組織の役割を再確認し、責任の内容を定義する  2. 責任を果たすためにどのような確認が必要かを具体化する  3. その確認を実施する責任者/責任を持つ範囲を定義する  4. 確認方法(システム、レポートなど)を定義する  5. 確認タイミング(実施サイクル)を定義する  6. 確認の合否基準を定義する
このようにマネジメントプロセスという観点で情報環境に求めるものをきちんと定義することが、結果的にマネジメントに貢献する情報環境の構築につながります。言い換えると、きちんとしたマネジメントプロセスのための情報環境を構築することが組織の目標を達成するためには不可欠ということです。

図5:マネジメントプロセスのための情報環境構築(スライドp11)
図5:マネジメントプロセスのための情報環境構築(スライドp11)


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