Excelお化けをなくしてスマートな業績管理へ
多くの企業の経営企画部門や経理部門では、Excelを用いた財務会計・管理会計が行われています。その実態は、筆記用具と電卓を使いながら、実績値や見込み値などのデータを集計していた時代と同様に、膨大、かつ煩雑な手作業の連続で、とてもスマートとは呼べないプロセスではないでしょうか。この問題を抜本的に解決するすべとして、ぜひともご紹介したいのが、クラウドベースの計画管理・分析プラットフォームの活用です。

“Excelお化け”の会計処理から脱却すべき
期末や年度末が近づいてくると、多くの企業の経営企画部門や経理部門は息つく暇もないような状況に陥ります。税務署や株主など、利害関係者に提出する財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の作成という大仕事に追われるだけではなく、年度事業計画や年度予算計画、中期経営計画、予実管理、およびその差異分析など、いわゆる管理会計や業績管理で求められる実績値や見込み値の収集、さらには、収集したデータに基づく報告書の作成などに忙殺されるからです。ゆえに、作業マニュアルを整備し、経験の浅い新人も総出で対応せざるを得ません。
しかも、これらの作業は単に手間や時間がかかるだけでなく、入力されたデータの信ぴょう性が怪しまれるケースも多々あります。そのたびに各部門の責任者や担当者に問い合わせて、一つひとつ確認しなければなりません。
そんな中で、経営企画部門や経理部門の担当者は、慣れないExcelの操作や曖昧な数字の裏付けを取ることに疲弊し、フラストレーションを溜めているのが実情です。
このような手作業でのデータ収集や、“Excelお化け”とも言えるような報告書の作成にストップをかけない限り、経営企画部門や経理部門の業務負荷は高止まりしたままとなります。また、そもそも管理会計や業績管理においては、最新の実績データや予実の進捗状況などが見える化されていなければ意味がありません。どんなに苦労して報告書を作ったとしても、その中身が情報鮮度や連続性を伴っていなければ、ビジネス現場や経営陣の意思決定に役立てることができず、管理会計や業績管理を行う本来的な意義が希薄化してしまう恐れが強まるのです。
では、Excelに代わるどんな方法によってこの課題を解決できるでしょうか。
お勧めしたい一つは、クラウドベースの計画管理・分析プラットフォームの活用です。以下、このクラウドサービスの活用によって、どのようなことが可能になるかを少し詳しく見ていきます。
予算編成や業績管理で必要とされるあらゆる機能をパッケージ
クラウドベースの計画管理・分析プラットフォームの代表的なソリューションとして、世界中の企業に広く知られ、活用されている「SAP Analytics Cloud」があります。SAP Analytics Cloudは、予算編成や業績管理で必要とされるあらゆる機能をパッケージ化したクラウドサービスです。ビジネスインテリジェンス(BI)の機能や機械学習やAIによる予測分析機能などを組み込んだ、包括的な経営管理プラットフォームとして設計されており、経営層から現場の担当者にいたるまで、あらゆる組織階層のユーザーに有益なインサイトを提供し、ビジネス判断の的確性とスピードの向上につなげていきます。
こうしたSAP Analytics Cloudの機能群(業績管理に必要な機能群)は、以下の3つに分類することができます。
1. 予算・計画管理を行うPlanning機能
2. データの分析・可視化を行うBI機能
2. 予測・相関分析を行うPredictive機能
これらの機能を活用することで、企業は、業績管理、予算編成、予実管理といった業務のほか、差異分析、What-If分析、シミュレーションといった高度な分析や分析結果のバージョン管理が、単一のプラットフォーム上で容易に行えるようになります。また、ダッシュボードの構築やモバイルアプリを介した外出先からのデータ参照などもサポートしており、分析結果を即座に次のアクションに活かすための設計上の工夫も凝らされています。
Planning機能をコアにデータ駆動経営を実現
SAP Analytics Cloudのコアとなっているのは、Planning機能です。先述したように、多くの企業の経営企画部門や経理部門は、会社全体の業績を管理するために、実績値のほか、計画・予算・見込みなどのデータを関連部門から収集しています。その収集と集計の方法は非効率であることが多く、例えば、メールやFAXなどで関連部門から収集したデータを、人海戦術でExcelに手入力し、その後の集計作業や報告書作成にも膨大な時間と工数を費やしているのが一般的です。
このようにデータ収集・集計に多くの時間がかかれば、集計結果と最新の業績との乖離が生じてしまい、経営判断に役立つデータを言えなくなり、今日でいう「データ駆動経営」を実現することは至難になります。
それに対して、SAP Analytics Cloudでは、関連部門の担当者自身が、共通のフォーマットを利用してブラウザから直接データを入力します。これにより、データ収集にかかる手間と工数が大幅に減らせるほか、部門間の予算配賦や割当なども、あらかじめ設定しておいたルールに基づいて自動的に行われるので、入力されたデータはすべてリアルタイムに集計されます。
例えば、グローバルに事業を展開している企業の場合、各拠点は現地の通貨のままでデータを入力し、本社側で必要な通貨に換算して集計・分析することが可能です。また、計画のバージョン管理や申請のための簡易ワークフロー、カレンダーベースのタスク管理、簡易シミュレーションなど、計画立案に必要な機能を網羅的に提供しています。
さらに、Planning機能にBI機能を組み合わせることで、グラフによる予実の見える化やKPI(重要評価指標)によるパフォーマンス評価をサポートし、計画策定業務をより効率的に遂行することが可能となります。
一方、BI機能は、Planning機能を用いて収集した実績・計画・予算・見込みデータはもちろん、基幹システムのデータベースから担当者の個人PCで管理されているExcelシートに至るまで、オンプレミスとクラウドを問わず幅広いデータソースへの素早いアクセスを実現します。わずか数ステップでグラフや表を作成し、見栄えにもこだわったダッシュボード上で多様なデータを見える化することが可能です。また、さまざまなデータをロケーション情報と紐づけて地図上に表現したり、コメントや注釈など、数値以外の定性的な情報を加えたりなど、より多角的に情報を見える化することもできます。
さらにPredictive機能は、Planning機能で集めたり調整した計画データと、過去の実績データを組み合わせて分析し、将来の売上や収益の着地について時系列予測を行ったり、データ構造を分析して購買意欲の高い顧客層を予測したりと、高度な分析を、ビジネスユーザーでも数クリックで利用できるように作られています。
そして特筆すべきは、複数のグラフや表を組み合わせたストーリーを構築し、1クリックで他のユーザーと共有できる点です。共有されたグラフや表に対して、ユーザー間でコメントのやり取りすることも可能で、SAP Analytics Cloudは、正確かつ最新のデータを利用した全社的なスムーズなコラボレーションを促していきます。
企業を取り巻く経済情勢や顧客のニーズ、競合の状況は絶えず変化しており、経営層も、ビジネスの現場も、難しい経営判断・ビジネス判断を迫られる局面が数多くあります。それゆえに今日では、データ(ファクト)を起点にビジネスの現状把握と予測を可能なかぎりスピーディに、あるいは精緻に行い、経営・ビジネス判断の迅速化と的確性を増すという、データ駆動経営の必要性/重要性がしきりに唱えられています。そうした中で、経営判断やビジネス判断の起点となるべきデータ作りに多くの時間と工数をかけているのでは、市場での競争優位の確立・維持はますます困難になるでしょう。そうならないためにも、いち早く、旧態依然とした手作業や“Excelお化け”の呪縛から逃れ、SAP Analytics Cloudのような新しい経営管理プラットフォームの活用へと動き始めるのが良策と言えるのです。
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