間接材の調達・購買を“不正”の温床にしない秘訣を知る
海外の企業が、当たり前の経営施策として遂行している、間接材調達・購買の全社ガバナンス──。日本の企業は、なぜかその施策をなおざりにしがちで、間接材の調達・購買を現業部門の現場任せにしているケースが珍しくありません。結果として、抱え込んでしまっている深刻なリスクが、担当者による「購買不正」です。ここでは、そのような不正を未然に防ぐための方策をお話しします。

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例えば、ある情報通信会社では、元社員が、元同僚の外部者などと共謀のうえ、実際は業務をしていない業者に発注し、架空請求に対する支払いを分け合っていたという事件が発覚しました。この不正によって、企業が被った損失額は8億円近くに及んでいます。
また、ある運送会社では、子会社2社の代表者を兼務していた親会社の元役員が、架空工事や水増し工事を発注し、その工事代金の一部を私的に利用するという事件が明るみになりました。その被害総額は3億5,000万円余に上るとされています。
さらに、同じく運送事業を展開する某社では、子会社の役員として出向した人間が、取引先の企業を巻き込み、不正な水増し請求をさせ、その請求書を自身に直接回付させて承認していた事実が発覚しました。
このほか、ある大学で財務を担当していた元常務理事が、約20年間にわたり、自分が社長を務める会社にキャンパスの清掃業務を孫請けさせていたことが判明しています。
このような事態が明るみになると、企業・組織は甚大なダメージを被りブランドが毀損します。そのダメージは金銭的な損失だけにとどまらず、ルール順守の統制がとれない企業・組織として、社会的な信用・信頼を失うことになるのです。
それでも、「うちの会社には誠実な人間しかいない。うちの会社に限ってはこのような事件は起こりえない」と思われる方が多くいるかもしれません。
ただし、社員のほぼ全員が誠実だとしても、たった一人の裏切りによって、上記のような事件は起きてしまいます。したがって、いかなる企業・組織も、これらの事件を「対岸の火事」と見なすのは避けたほうが無難であり、購買不正を防止する仕組みを整えておく必要があると言えるのです。
米国の犯罪学者であるD.R.クレッシー氏が、実際の犯罪者を調査して導き出した「不正のトライアングル」理論によると、不正行為は「1. 機会」「2. 動機」「3. 正当化」という3つの要素がすべてそろったときに起こるとされています。
このうち「2. 動機」「3. 正当化」の2つは、犯罪者の「主観」に起因したリスクです。例えば、購買不正における動機には、「借金がある」「贅沢がしてみたい」といった理由や願望が、正当化には、「前任者もやっていた」「ちょっと借りるだけ、あとで返す」「これくらいは大丈夫」といった考え方が当てはまります。
実のところ、こうした主観が生まれるのを、企業が完璧に阻止するのは至難です。企業人としての倫理教育をいくら徹底したところで、人の主観を完全にコントロールすることはできないからです。
その一方、「1. 機会」とは、不正が行える機会があることを意味し、購買不正においては、「間接材の購入申請/承認が自由に行える」「(不正に対する)サプライヤーの協力が得られる」「調達・購買の業務が担当者にしか見えない」といった環境が当てはまります。
言い換えれば、調達・購買の業務がブラックボックス化されていて、サプライヤー登録が簡単/無審査で行え、かつ、承認プロセスが機能していないような環境が、購買不正の機会を生んでしまうということです。
前出の動機や正当化のリスクとは異なり、こうした機会の発生リスク、あるいは顕在化リスクは、企業がコントロールすることが可能です。すなわち、企業は機会を生む環境を改変することができ、また、それを行うことが、購買不正を防止する唯一の手だてと言えるのです。
このようにして、間接材の調達・購買調達・購買に関する社内規則・規範を整えたうえで、間接材の全支出を見える化します。そして、調達部門で監視(モニタリング)し、POなしの購買など、規則・規範への違反が認められた際には経営サイドに報告し、かつ、当該担当者に対して是正を勧告するようにします。こうすることで、各部門で間接材の購入・調達に当たる担当者は、すべてがモニタリングされているという意識を持つようになり、それぞれの不正の抑止につながっていきます。
もっとも、企業が調達・購買する間接材は多岐にわたり、その全支出を手作業で可視化して監視していくというのは現実的ではありません。
そこで必要になるのは、調達・購買プロセスのシステム化(機械化)であり、標準化です。つまり、サプライヤー選定から決済に至る調達・購買プロセス全体を管理できるSAP Aribaソリューションや、サプライヤーとのコミュニケーションをサポートするAriba Networkなどを使い、間接材の調達・購買にかかわる業務のすべてを、一つのプラットフォーム上でしか行えないようにするわけです。
こうすることで、間接材に対する全支出の見える化と監視が効率的に行えるようになり、結果として、購買不正のリスクを大きく低減することが可能になります。実際、欧米企業の多くが、間接材の調達・購買の全業務をSAP Aribaのソリューションに集中させていますが、背景には、購買不正を防止する、さらに言えば、従業員がこの仕組みを利用している限りは一切の不正がないことの証明にもなる、といった狙いが大きくあるのです。
製造における原価に組み込まれるような資材(直接材)とは異なり、間接材には無形のものが多く、調達・購買のプロセスが見えにくく、管理も曖昧になりがちです。そのため、購買不正の温床になってしまうリスクが高いと言えます。そのようなリスクを最小化するためにも、単一プラットフォームによる間接材調達・購買の一元管理を検討されてはいかがでしょうか。
一人の裏切りで約8億円の被害も!購買不正は対岸の火事にあらず
日本の企業や組織では、「違法な謝礼」「賄賂」「キックバック」の受け取りや、「利益相反」「カラ発注」など、間接材の調達・購買を巡る不正行為がよく起こります。例えば、ある情報通信会社では、元社員が、元同僚の外部者などと共謀のうえ、実際は業務をしていない業者に発注し、架空請求に対する支払いを分け合っていたという事件が発覚しました。この不正によって、企業が被った損失額は8億円近くに及んでいます。
また、ある運送会社では、子会社2社の代表者を兼務していた親会社の元役員が、架空工事や水増し工事を発注し、その工事代金の一部を私的に利用するという事件が明るみになりました。その被害総額は3億5,000万円余に上るとされています。
さらに、同じく運送事業を展開する某社では、子会社の役員として出向した人間が、取引先の企業を巻き込み、不正な水増し請求をさせ、その請求書を自身に直接回付させて承認していた事実が発覚しました。
このほか、ある大学で財務を担当していた元常務理事が、約20年間にわたり、自分が社長を務める会社にキャンパスの清掃業務を孫請けさせていたことが判明しています。
このような事態が明るみになると、企業・組織は甚大なダメージを被りブランドが毀損します。そのダメージは金銭的な損失だけにとどまらず、ルール順守の統制がとれない企業・組織として、社会的な信用・信頼を失うことになるのです。
それでも、「うちの会社には誠実な人間しかいない。うちの会社に限ってはこのような事件は起こりえない」と思われる方が多くいるかもしれません。
ただし、社員のほぼ全員が誠実だとしても、たった一人の裏切りによって、上記のような事件は起きてしまいます。したがって、いかなる企業・組織も、これらの事件を「対岸の火事」と見なすのは避けたほうが無難であり、購買不正を防止する仕組みを整えておく必要があると言えるのです。
なぜ購買不正は起きるのか?
購買不正の防止策を練るうえでは、不正行為が起こる原因から考えるのが効率的です。米国の犯罪学者であるD.R.クレッシー氏が、実際の犯罪者を調査して導き出した「不正のトライアングル」理論によると、不正行為は「1. 機会」「2. 動機」「3. 正当化」という3つの要素がすべてそろったときに起こるとされています。
このうち「2. 動機」「3. 正当化」の2つは、犯罪者の「主観」に起因したリスクです。例えば、購買不正における動機には、「借金がある」「贅沢がしてみたい」といった理由や願望が、正当化には、「前任者もやっていた」「ちょっと借りるだけ、あとで返す」「これくらいは大丈夫」といった考え方が当てはまります。
実のところ、こうした主観が生まれるのを、企業が完璧に阻止するのは至難です。企業人としての倫理教育をいくら徹底したところで、人の主観を完全にコントロールすることはできないからです。
その一方、「1. 機会」とは、不正が行える機会があることを意味し、購買不正においては、「間接材の購入申請/承認が自由に行える」「(不正に対する)サプライヤーの協力が得られる」「調達・購買の業務が担当者にしか見えない」といった環境が当てはまります。
言い換えれば、調達・購買の業務がブラックボックス化されていて、サプライヤー登録が簡単/無審査で行え、かつ、承認プロセスが機能していないような環境が、購買不正の機会を生んでしまうということです。
前出の動機や正当化のリスクとは異なり、こうした機会の発生リスク、あるいは顕在化リスクは、企業がコントロールすることが可能です。すなわち、企業は機会を生む環境を改変することができ、また、それを行うことが、購買不正を防止する唯一の手だてと言えるのです。
間接材が購入できるシステムを一つに絞る
購買不正の機会を生むリスクを低減するには、まず、「組織」「ルール・規則」を見直すことが大切です。例えば、もし、間接材の調達・購買を一括して管理する、あるいは一手に引き受ける組織がないのであれば、ガバナンスのために調達・購買の専任組織(調達部門)を設置することが大切と言えます。そのうえで、PO(発注書)なしの間接材の調達・購買を全面的に禁止にするといった社内規則・規範を整備して、全社的に周知徹底することが重要です。また、サプライヤー規範も整備し、サプライヤーへの周知と理解確認書の提出を義務づけることも必要な施策です。このようにして、間接材の調達・購買調達・購買に関する社内規則・規範を整えたうえで、間接材の全支出を見える化します。そして、調達部門で監視(モニタリング)し、POなしの購買など、規則・規範への違反が認められた際には経営サイドに報告し、かつ、当該担当者に対して是正を勧告するようにします。こうすることで、各部門で間接材の購入・調達に当たる担当者は、すべてがモニタリングされているという意識を持つようになり、それぞれの不正の抑止につながっていきます。
もっとも、企業が調達・購買する間接材は多岐にわたり、その全支出を手作業で可視化して監視していくというのは現実的ではありません。
そこで必要になるのは、調達・購買プロセスのシステム化(機械化)であり、標準化です。つまり、サプライヤー選定から決済に至る調達・購買プロセス全体を管理できるSAP Aribaソリューションや、サプライヤーとのコミュニケーションをサポートするAriba Networkなどを使い、間接材の調達・購買にかかわる業務のすべてを、一つのプラットフォーム上でしか行えないようにするわけです。
こうすることで、間接材に対する全支出の見える化と監視が効率的に行えるようになり、結果として、購買不正のリスクを大きく低減することが可能になります。実際、欧米企業の多くが、間接材の調達・購買の全業務をSAP Aribaのソリューションに集中させていますが、背景には、購買不正を防止する、さらに言えば、従業員がこの仕組みを利用している限りは一切の不正がないことの証明にもなる、といった狙いが大きくあるのです。
製造における原価に組み込まれるような資材(直接材)とは異なり、間接材には無形のものが多く、調達・購買のプロセスが見えにくく、管理も曖昧になりがちです。そのため、購買不正の温床になってしまうリスクが高いと言えます。そのようなリスクを最小化するためにも、単一プラットフォームによる間接材調達・購買の一元管理を検討されてはいかがでしょうか。