Vol.6:経産省が警告する「2025年の崖」、どう乗り越えるべきでしょう?

【お悩み相談No.190225-1】
先日、私が属する情報システム部の部長が、例の「2025年の崖」(ご存知かとは思いますが)に言及している経産省のレポートを眺めながら、「これって、まさにうちのことだな」と、ため息をついていました。レガシーシステムがデジタル変革の足を引っ張っていて、それを放置していると、とんでもないことになる──。確かにそうだと思いますが、何から始めれば良いかが分かりません。なにか手掛かりになることを教えていただけませんでしょうか?(製造X社 情報システム部 34歳/男性)

三田さん。とても深刻そうなご相談がきましたよ! 6年後に「崖」から落ちそうだと、もう「ため息」しか出ないと。

なるほど、「2025年の崖」か。

そう、「2025年の崖」。知ってます?

大筋はね。そういう落合さんは知らないの?

はい、まったく。まさに初耳。

「まさに初耳」じゃないよ。少しは気にしようね、企業ITを取り巻く世の中の話題。

はいはい、わかりました。が、その反省はのちにということで、今は悩みごとへの回答に集中しましょうね。相談ごとには即日レスが基本ですから。

そ、そうだね(あれ、ここは怒るところ?)

とにかく「2025年の崖」って何のことですか。

簡単に言えば、日本企業が抱え込む旧式の基幹業務システム──つまりは、「レガシーシステム」のせいで2025年以降、日本経済は年間約12兆円もの経済的損失を被り続ける可能性があるということかな。「2025年の崖」は、経済産業省(経産省)が2018年9月に公表したレポート(※1)で言及しているフレーズで、レポートを作成したのは、経産省のワーキンググループ「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会」だね。

<注釈> ※1 参考:経産省「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」
http://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-2.pdf



なんと、年間12兆円ですか。それって、日本の情報サービス産業の売上総額と同規模じゃないですか。2025年以降は情報サービス産業が稼いだ分が、すべて損失になる感じなんですね。そんな損失を生むとは、レガシーシステムはどんな悪行を働くんでしょう。

「悪行」って面白い表現を使うね(笑)。別にレガシーシステムが悪さをするわけではないけど、レガシーシステムというのは、それこそ落合さんが生まれる前から使われ続けていて、構造も古いし、独自的だし、今日ではほとんど使われなくなった言語でプログラムが組まれていたりするからね。維持・管理にとてもお金がかかるわけ。

そんなにお金がかかるシステムをなぜ維持しなければならないんですか?

企業固有の業務ニーズに対応させるために、機能の追加・拡張が、長年にわたり、何度も何度も繰り返された結果、システムが肥大化し、かつ、中身のすべてを理解している技術者もいなくなったからさ。何かをいじると、どこにどんな影響がでるかが分からず、恐ろしくて大胆な改変ができなくなってしまった。それでも業務には必要ということで、これといった刷新が図られないまま、今日に至っているというのが現実だと思う。

そうしたシステムをこれからも維持し続けると、2025年に年間12兆円の損失という事態に陥るわけですね。

そんなふうに経産省のレポートは指摘しているね。ただし、問題の本質は損失額の大きさじゃないと思う。

え、そうなんですか?

問題は、DXなど、時代の潮流や変化に即した事業戦略に企業ITがついていけなくなることだと思う。今回の相談者の方も、それを憂い、解決の施策を探しているわけだよね。

あ、そうだった。なら、どうすればいいんでしょうか。

たとえば、経産省のレポートでは、レガシーシステムを使い続けていることと、業務ごと、あるいは部門・部署ごとにシステムが分断されていることが、日本企業のDXを阻害しているとしている。この状態を改変しないとIT予算の9割以上が“現業の維持・継続”のみに費やされるようになり、DXによる変革に回す資金がほとんどなくなると警鐘を鳴らしている。

あれ、やはりお金の問題なんですか?

いや、それだけじゃない。システムが業務ごと、部門・部署ごとに分断されているということは、業務プロセスも分断されていて、業務横断・組織横断でのプロセスの組み換えや全体を俯瞰した最適化が困難になっていることを意味する。このような状態だと、仮にデジタルテクノロジーによる業務の自動化・効率化を図るとしても、局所的な効果しか望めなくなるよね。

ええ、分かります。

また、デジタルテクノロジーを活用した新しいビジネスモデルを考案し、展開しようとしたときにも、現業に則ったかたちで業務ごと、あるいは部門・部署ごとに分断され、また最適化されているシステムでは、柔軟に対応することができない。しかも、業務システムが分断されていると、組織横断でのデータの利活用ができない。これも、IoTやAI(人工知能)などのデジタルテクノロジーを使い、データ駆動の経営や業務プロセスの最適化を図るうえでの阻害要因でしかない。

うーん、少し難解ですけど、何となくわかります。とにかく、レガシーシステムを思い切って捨てちゃって、業務のシステム/データをすべてつなげばいいと。

そう、そのとおり。もちろん、言うは易しで、それは簡単な作業じゃない。着手するとすれば、自社にとって本当に必要な業務機能とは何かを突き詰めていくことと、現行の基幹業務システムの機能を棚卸してみることだと思う。開発はしたけど、ほとんど使っていない機能が数多く見つかると思うから。

そんな感じで、2025年に間に合うんでしょうか。

あと6年はあるからね。ただ、ことをさらにスピーディに進めたいならば、単一のERPですべての基幹業務システムを集約し、そのシステムに自社の業務プロセスを併せてしまうことをお勧めしたい。

そうそう、それですよ、それ。相談者の方も、うちに相談を持ちかけてきたということは、ERPを導入しようと心の奥底で決めている可能性が大。

お、確かにそうだ。成長したね、落合さん。それに、SAPのERPのような業界標準の業務パッケージやクラウドサービスを使いながら、業務プロセスの標準化やレガシーシステムの近代化を行い、基幹システムの構造を可能なかぎりシンプルにするというのは、世界の成長企業の間では、もう当たり前のように行われてきたことなんだ。そのうえで、DXで差異化の一手を打ち続けている。

なるほど。

もっと言えば、新興国の企業は、レガシーシステムの資産がそもそもないから、いきなり最新のパッケージやクラウドサービスで先端のシステムを築き、デジタルテクノロジーをビジネスに取り込むのも当然と見なしている。こうした企業と互角にわたりあっていくには、日本企業も、どこかで業務システム刷新の大ナタを振るうしかないと思う。

なるほど。やはりDXやデジタル化を急ぐことは大切なんですね。

今さらのようにそれに気づいたあなたに、この一冊。もう読んだ?『Why Digital Matters?』。

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まだです。厚いし、スマホで読めないし、時間もないし。

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ええっ、それは業務命令ですか。あ、とすると読んでいる時間は業務時間ですね。家に帰ってから読んだ場合は、時間外労働と。

え、そうなるの? どうしよう、総務に確認を……。

冗談ですよ、冗談。読んどきます。自己研さんに励みます。ということで、忙しくなったので、相談者の方へのお返事は、三田さん頼みますね。

あ、そ、そうだね。やっとく(これって「崖」か、もうきているのか、私の場合)。

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平成30年の情報サービス産業の総売上高=11兆5183億9400万円(JISA報告)
https://www.jisa.or.jp/Portals/0/resource/statistics/dotai201812.pdf

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