Vol.8:デジタルは本当に大切なの?有効なの?【後編】

【お悩み相談No.190329-1】
うちの会社は、商品の生産効率はいいのですが、昨今の人手不足もあり、周辺業務のパフォーマンスがなかなか上げられずに困っています。生産効率だけを上げても、「売れるモノが企画できない」「モノが売れない」「原材料が適正に仕入れられない」では意味はないですし、市場ニーズはどんどん変化するので、製造部門だけが頑張っていてもダメなような気がします。この前Amazonで ‘Why Digital Matters’という本を見つけて少し立ち読みしましたが、非常に面白い内容でした。うちのような中堅も、デジタルを取り入れて効果を出すことって可能なのでしょうか?
本に出てくるSAPさんなら、いいアドバイスがもらえるのではないかと、相談しました。
(食品加工Y社 経営企画部 39歳/男性)

こちらも合わせてお読みください!
デジタルは本当に大切なの?有効なの?【前編】

三田さん、お待たせです。ただいま昼食より戻りました。さあ早速、午前中(デジタルは本当に大切なの?有効なの?【前編】)の続きを始めましょう。

お、時間どおりに戻ったね。感心、感心。

当然です(お昼の場所も近かったし)。で、相談者の方の質問に対して、どこまでの説明をしてもらっていたんでしたっけ?

まさか、1時間の昼食によって午前中の話をすべて忘れちゃった、なんてことはないよね。

午前中の話を午後イチに忘れるワケないじゃないですか。大丈夫です、説明はしっかりと覚えています。確か、中堅の企業も、デジタルを取り入れて効果を出すことができる、というところで終わったかと(前編を参照)。

そうだよ、そうそう。いや~、よかった、覚えていてくれて。

本気で安堵しているふうですね。なんか感じワルー。

あ、ゴメン、ゴメン(でも、ありえそうなのだよ、あなたの場合)。

とにかく、今回の相談者の会社にも、デジタルは有効なんですよね。

そう思う。もっとも、相談者の悩みを見ると、デジタル化の前段階のところでつまづいていて、だからこそ『Why Digital Matters?』にフックしたように感じる。

それって、どういうことですか。

『Why Digital Matters?』には、日本の製造業の問題点を突く重要な言及がある。

『Why Digital Matters?』の詳細についてはこちらをクリック
https://www.facebook.com/whydigitalmatters/

どんな問題を突いているんですか。

これは相談者の不安にも通じることだけど、売れない商品、あるいは、利益が出ない商品をいくら作っても意味はないのに、日本の製造企業は、その点をあまり考えず、生産効率を上げることばかりに熱心になりがち、ということかな。

ええっ、そうなんですか?

そう。だから、日本の製造企業の間では、デジタル化を、AIやIoT、ロボティクスなどのデジタルテクノロジーによって、生産現場の効率を上げることと見なす傾向も強いと、『Why Digital Matters?』は指摘している。

逆に言えば、事業そのもののイノベ(「イノベーション」のこと)はあまり考えていないと。

そうだね。生産現場の効率化もデジタル活用の利点の一つだけど、すべてじゃない。

午前中のお話を総合すると、確かにそうですよね(前編を参照)。

実際、ドイツの政府と製造企業が打ち出した「Industry 4.0」にしても、背景の一つには、日本の生産現場にはどうやっても勝てないので、デジタルを駆使して生産を含めた業務プロセス全体、あるいはバリューチェーン全体の付加価値生産性を高めて、日本の製造企業に打ち勝とうという狙いがあったようだ(『Why Digital Matters?によれば』)。要は、Industry 4.0においても、生産現場の効率化は決して主目的ではないということだね。

なんと、Industry 4.0って日本対策だったんですか!? 油断も隙もないですね、ドイツ企業は。

どの国の企業も同じだよ(笑)。そもそも、ビジネスの世界には油断も隙もない。強者は常に狙われるし、既成の巨大市場は破壊の対象にされる。

うーん、恐ろしい。

そうコワいよ、ビジネスは。ところが、日本の製造企業は、生産現場の人たちがあまりにも優秀すぎたせいで、ちょっとした隙ができてしまったみたいだね。

それって、どういうことですか。

うん、日本製品の品質や生産効率の高さは、生産現場の“人”による弛まぬカイゼン努力によるもので、どの国の企業もその強さにお手上げの状態が長く続いた。

スゴイですね、日本の生産現場の人たちは。

本当にスゴいと思う。ただ、スゴすぎた。そのため、日本の製造企業の間には、人依存でいい、生産現場第一主義でいいという考え方が定着してしまい、ERPによる財務・販売・在庫・生産・物流のデータ統合や業務プロセスの標準化もあまり進まなかった。さらに、何か問題が起きても、生産現場の人が何とかしてくれるという考え方が根づいてしまった。

そのデータ統合の問題って、確か生産現場の方が、何を、いくつ、いつ作るのが適切かが実は見えていない、ということでしたっけ?

そうだね。そうした中で、工場の稼働率目標とか、会社の売上目標とかを見ながら仕事をしていると、売れない商品や収益性の低い商品であっても、とにかくたくさん作ってしまい、不良在庫を抱え込んだり、会社の収益性を悪化させたりするリスクが膨らむ。

はい、分かります。

また、販売側も、販売可能在庫が見えず、納期回答が遅れ、顧客を奪われたりすることも多くなるよね。

そういったことが、三田さんの言う隙であると。

そう言える。かたや、製造における日本のライバル国の企業は、どこもERPによるデータ統合や業務プロセスの標準化を、当然の施策としてかなり前に済ませている。デジタル化された産業を「4.0」とすれば、製造における日本のライバル国の企業は、その一歩手前の「3.0」の段階にかなり以前からあり、対する日本の多くの製造企業は、いまだに「3.0」の一歩手前、あるいは半歩手前の「2.0」、ないしは「2.5」のレベルにあると、『Why Digital Matters?』では指摘しているね。

その「3.0」の段階にあると、何が、どういいんですか?

例えば、業務プロセス全体を俯瞰した課題の発見も早いし、顧客ニーズの変化をデータでとらえるスピードも速い。また、収益性に基づいて計画的に生産が行えて、生産現場の属人性も低く、人の力に頼った業務の回し方もしていない。その土台の上で、各国の製造企業はデジタルによる一層の効率化を図りつつ、次の成長に向けた取り組みに注力している。結果として、会社全体の付加価値生産性で日本の製造企業を上回れるようになったようだ。

そう言えば、『Why Digital Matters?』の序章に書いてありましたね。2000年対2017年の名目GDP伸び率で、日本は先進7カ国中ダントツの最下位。国民一人当たりのGDPも世界25位(2017年現在)だって。

書籍『Why Digital Matters?』の単行本とKindle版についての詳細はこちらをクリック
● 単行本『Why Digital Matters?』
● Kindle版『Why Digital Matters?』

その実質GDPの伸び率については、ドイツも先進7カ国中5位だけど、それでも2017年のGDPを2000年の1.52倍に増やしていて、1.04倍の日本に大きな差をつけている。

はい、それも読みました。

日本とドイツはともに経済の絶対規模が大きくて、GDPの約2割を製造産業が占めている。そんな両国のGDP成長率に、これほどの差が出ているというのは、それぞれの製造業の“稼ぐ力”に差があると見ていいんじゃないかな。そんな中で、日本の生産現場では、高齢化と技能者不足も進行している。現状のままでいると、ドイツをはじめとする製造でのライバル国との差がどんどん開いていく可能性が大と言えそうだね。

……

どうしたの、いつになく深刻そうな顔をして。

聞いていると「日本、危うし」じゃないですか。もう、呑気にランチしている場合じゃないんですよ、三田さん。どうしよう(習い事ひとつやめて貯金に回すべきなかなあ)。

まあ、まあ、それほど悲観的になる必要はないよ(それに、呑気にランチしていたのは、あなたのほうでしょ)。

大丈夫なのでしょうか。

みんながデジタルで勝負を挑む気になれば、日本の製造企業が形勢を一挙にひっくり返せると私は思う(『Why Digital Matters?』もそう言っている)。逆説的だけど、生産現場が強くて、生産のノウハウを持っているほうが、やはり最後は有利だもの。その強さをデジタルによるイノベで増幅すれば勝つのは日本。だからこそ、生産現場の力がまだ世界最高の水準にあって、“メイドインジャパン”の効力がある今のうちに、デジタル戦略を構想して、取り組みを始めるべきだと思う。

どんなふうに始めればいいんですか。

もし、業務ごとのデータの分断があるなら、それをなくして、ライバル企業と同じように、データに基づく正しい判断ができる土台を手に入れることが大切。それに取り組むときに、クラウドERPを選択して、そこに実装されているベストプラクティスに合わせて、業務プロセスを標準化すると、必要最低限の初期投資で“3.0”へのステップアップが早まるとおすすめしたい。それと並行して、『Why Digital Matters?』でも言及されている「デザイン思考」で、顧客の本当の願いを徹底的に理解して、そのうえで革新的なサービスや商品を考えて、プロトタイプをサササっと作り、仮説検証を繰り返していくのが大切ではないかと。

その「デザイン思考」というのが、難しそうなのですよ。

別に難しい話じゃないよ。それに『Why Digital Matters?』では、デザイン思考も分かりやすく解説されているから、落合さんでも、すぐに理解できる。今後に役立つから、やはり読んでおくべきだね。

「落合さんでも」という部分が引っ掛かりますが、わかりました。読みます、直ちに。ということで、私は忙しくなったので、相談者さんへのご返答は、解説委員の三田さん、お願いしますね。

そうくると思ったよ(もう、慣れた)。まあ、話は複雑そうだから、直接お会いしてお話ししましょうと、お誘いするつもりだったからね。

ありがとうございます。あ、でも、そのお誘い文の中に、「まずは、『Why Digital Matters?』を、立ち読みじゃなくて、お買い求めください」とか、「ちなみに、定価1600円(税別)にて絶賛発売中!」とか書いたらダメですよ。相談者の方に失礼ですからね。あと、イノベなんて略語を使うのも厳禁。

そ、そんなの当たり前だろ! だいたい、落合さんは……って、また聞いてないし。あの~、そこで熱心にスマホいじっているひと~、まだ話は終わっていませんよ~。

はいはい、すいません、すいません。でも、『Why Digital Matters?』の件で、ちょっと思い出したことがありまして……あっ、見つけた!

何を見つけたのさ。

なんと弊社では、このSAPなんでも相談室を読んでいただいた方を対象に『Why Digital Matters?』の出版を記念して、抽選で25名様に書籍をプレゼントするキャンペーンを開始しました!期間は2019年5月7日~5月31日までなので、皆様からの応募をどしどしお待ちしております!

『Why Digital Matters?』出版記念プレゼントキャンペーン
※ 当キャンペーンは終了いたしました。

あっ、本当だ!

三田さん、ダメじゃないですか、解説委員なんですから、こういうトレンドをしっかりと押さえておかないと。必ず相談者の方に伝えてくださいね。

別に解説委員じゃないけど、とにかく、まあ、教えてくれて、ありがとう(今回は負けかなあ。あ、いつも負けているか)。

関連のお悩み相談はこちら